三百九十四番槍 わざと汚す心意気
後輩から恋愛シミュレーションゲームを勧められました。
後輩曰く「これは現実味があって感動します」だそうな。
これに対して「恋愛の時点で現実味ないよねー」って言って黙らせました。
悲しいことにこれが現実です。
そんなもんですよねー。
千利休の若かりし頃。
17歳の利休は、武野紹鴎という茶人に弟子入りしようと、彼の屋敷にやってきた。
「弟子にしてくださーい!」
利休は門を叩いた。
すると、紹鴎が家から出てきた。
「お前は誰だ?」
「僕は利休と申します。千利休です」
「ほう」
そういうと紹鴎は利休から要件を聞いた。
「なるほど。茶の湯の弟子にしてくれというのか」
「はい!頑張りますから!」
利休は頼み込んだ。
すると、紹鴎は弟子になるための認定テストを行うことに決めた。
「そうだな。では、テストを行おう。この庭を綺麗に掃除してくれ」
「なんだ、それだけですか!お安いご用です!」
「じゃあ頼んだ」
そう言って、利休は庭に行ってみた。
すると…。
「なっ…!?」
そこは、落ち葉ひとつ落ちていないほど完璧に掃除されていた。
正直、掃除の仕様がない。
「どどどどうすれば…」
利休は考えた。
…試されているのか?それとも弟子にする気が無いのか?
考えろ…。考えるな、感じるんだ…!
そして、思いついた。
「こうすればよかったんだ!」
思いつくや否や、利休は庭の木を大きくゆすり始めた。
葉っぱが落ちてくる。
落ち葉ひとつない庭は見る見るうちに落ち葉で汚れていく。
「できました!」
利休は意気揚々と報告した。
「汚してるじゃねーか」
「いえ。むしろ落ち葉ひとつ無い方が不自然です。こっちの方が侘びってます」
「なるほど…。確かにサイコーに侘びっている…。お前、凄いな」
こうして利休は武野紹鴎から認められたのだった。
利休の逸話でした。
わびさびの精神ですね。
ある程度汚れていたほうが、雰囲気があるというのが利休の考え方でした。
なんだか行動派の利休っていうのもイメージが湧きません…。
これに感心する武野紹鴎もまた凄い…。