三百五十二番槍 なぜバレた!
乙葉
「なーんか、作者さんが前書きで書くことが無いってぼやいてるよー」
鬨哉
「で、なんで乙葉まで机にグデーッと伸びてるわけ?」
乙葉
「書くことが無いってこんな感じなのかなーと」
鬨哉
「それは…書くことが無いと言うかヤル気が無いと取られないか?」
乙葉
「いやー、書くことないからこうグダグダ書いて埋めてるんだよ」
鬨哉
「そもそも前書きって基本的に日記みたいのしか書かないからな…」
乙葉
「そーそー。何書いてもいいんだよー」
鬨哉
「そういうわけじゃないと思うけど…」
乙葉
「じゃあそろそろ本編行くよ!」
鬨哉
「突然だな!まぁいいけどさ」
宇喜多直家は、勢力を伸ばしている織田信長の家臣になると決めた。
「織田の家臣に、俺はなる!」
決めたらさっそくそれを伝えなければならない。
しかし、信長は遠い場所にいる…。
お、ちょうど信長の手の者が近くにいるではないか。
中国攻略中の豊臣秀吉。
これに家臣になる旨を伝えよう。
そう決めた。
「さーて、交渉役は誰が良いだろうか」
家臣になるのだから、コミュ障を送ってはいけない。
才能のあるやつで、人の心を掴める重臣は…。
「あれ?いないぞ…?」
直家は焦った。
「このさい家臣じゃなくてもいいか!ばれなきゃいいよね!」
そう思い、一人の男を呼んだ。
小西行長である。
行長は、大坂は堺の代表商人である「会合衆」の一人、小西隆佐の息子。
この時は、宇喜多家の軍資金を支給してくれる町人の家に養子に入っていた。
つまり、家臣ではないのである。
しかし、行長以外に交渉の才能のある人材はいない。
「ええ、行長!宇喜多家の家臣と身分を偽って秀吉殿に取り入ってくるのだ!」
こうして、行長は秀吉のもとを訪れることになった。
「私は宇喜多家家臣の小西行長です。秀吉様、我が主君宇喜多直家は、織田信長様の家臣になりたいとの仰せでございます」
堂々とした態度。
秀吉相手に一歩も退かなかった。
「よし分かった。信長様にその意、伝えておこう」
こうして無事に対談は終わった。
…かのように見えた。
「ところで、このような重要な交渉にどうして家臣ではなく町人がでてきたんだ?」
ビクッと肩が跳ねた。
…ばれていた。
これはもう…斬首も覚悟。
全てを話すしかない…。
「も、申し訳ございませんでした!実は…」
ここに来た成り行きを話した行長。
「ああ、そういうことね」
秀吉は行長を切ることなく、笑ったのだった。
「でも、どうして私が町人だとお気づきになられたのですか?」
行長には思い当たる節は無かった。
「ああ、それはだな。昔、お前にお茶を入れてもらったことがあったのよ。身分が違ってお前は気付かなかっただろうけどな」
昔のことを覚えていたというのだ。
「なんだ、そうでしたか!」
こうして、交渉は終始滞ることなく進んだのだった。
小西行長の逸話でした。
交渉力はあるって、さすがは商人の息子!って感じですね。
秀吉に嘘を吐くのも命がけです。
助かってよかったね!
しかし、昔に会ってたことを覚えているとは…。
秀吉の人心掌握術ってこういうところにも秘密があるのかもしれません。