歴史絵巻第三幕 Let's Go 城巡り~山田城・松山城~
眠い…。
頑張って書きました。
この娘たちの旅、いつまでやりましょう…。
とりあえず、私が城巡りを続ける限りは書きます!
「やって来ました!森林公園~っ!あれ?森林公園…?」
テンション高く叫んだものの、何故こんなところに来たのかわかっていない村上乙葉。
「ふふふ…今に分かるさ!さぁ中に入るぞ!乙葉!大人二枚で800円だ!」
乙葉にチケットを買う命令を出したのは焙烙晴美。
この二人、同じ高校に通い、歴史研究部の先輩と後輩。
晴美が2年で乙葉が1年である。
今日も部費を使って城巡り。
しかし、やってきたのは何故か埼玉県滑川町にある国営森林公園。
乙葉が戸惑ったのも無理は無い。
乙葉が買ってきたチケットを渡して森林公園の中へ入った。
入ってすぐにある噴水の脇を抜けて歩いていく。
ちょっと進み、山の中へと続く階段の前で晴美が立ち止まった。
それに合わせて乙葉も立ち止まる。
「あっ!」
乙葉が、階段の横に立てられた小さな看板を見て声をあげた。
「山田城…?」
看板には確かにそう書いてあった。
「そう!山田城跡!森林公園の中にも城があったのだ!」
胸を張る晴美。
早速、階段を上り始めた二人。
「この土がちょっと高くなってるやつが土嚢ですかね?で、こっちの溝が堀でしょうか!?」
興奮気味の乙葉。
「恐らくは。で、この広い平らな場所に何かあったのだろう!しかしこの城…」
偉く曖昧な晴美の言い方。
彼女自身、この城について詳しくは知らなかった。
「先輩!あそこに看板がっ!」
晴美の話を遮るように叫んだ乙葉が指差す先には、確かに看板があった。
その看板には、山田城についての解説が書いてあった。
「戦国時代の出城…。小高大和守父子及び贄田摂津守が居城にした…。小田原攻めの時に前田利家に落とされた…。なるほど。いやしかし…」
看板を読んだ晴美は首を傾げた。
「どうしましたか?先輩?」
晴美の様子を見て乙葉がきいた。
「いや、この城…。妙に傾斜が急な所にあるなと…。それに、城内に郭を作ろうとした跡がある…。もしかして、未完成で落とされたんじゃ…?」
「先輩!そんなことまで分かるんですか!凄いです!」
「妙に傾斜がキツいのも、削る作業の途中だったからだろうな。鎌倉街道を抑える重要な城も、未完成で終わったんだな~」
それを聞いて驚いた表情をする乙葉。
「鎌倉街道ですか?」
「うん。ほら!」
晴美が指差した場所には、確かに道があった。
「この道が…?」
「鎌倉街道らしい。マップによるとな」
晴美は、乙葉に入園時に貰った園内マップを見せた。
二人は森林公園を出た。
「未完成の城なんて面白かったですね~!看板と堀と土塁しかなかったけど…。次回はどこに行きましょうか?」
乙葉が晴美に聞いた。
「次回?ふふふ、乙葉よ!今日はもう1ヶ所行くぞ!」
「マジですかー!?」
嬉しそうな顔をする乙葉。
二人はバスで森林公園駅まで行き、そこから電車で隣駅の東松山へ。
そしてバスで吉見百穴前までやってきた。
「吉見…百穴…?先輩!私、戦国以外はあんまり興味が…」
「何を言うか乙葉!この吉見百穴も実は戦国に関係あるのだ!まぁ、まずは観光がてら見てみようではないか!」
はい、と返事をして百穴へ。
「因みに、観光マップ等には『吉見百穴』とでてるが、地元民は『吉見百穴』と言うらしい。私は、ケツでもアナでもどっちでもいいと思うけど…」
さらっと言った晴美。
「…先輩。下品なことは言わないでくださいよ…」
少し顔を赤くした乙葉だった。
「で、ここは何ですか?戦国とどう関係が…?」
乙葉が聞いた。
戦国以外は守備範囲外の乙葉には、ただ崖に穴が無数に開いているだけのようにしか見えない。
「これは古墳時代の後期に作られた墓だ!ちょっと後にいろいろ合って完璧な姿とは言い難いけど…」
「古墳時代!?いろいろ…?」
無数の穴があいている崖には、いくつか洞窟があった。
その洞窟を指差して晴美が言った。
「これ、日本軍が戦争中に開けた穴なんだって…。ろくなことしないよね…。日本軍…」
ちょっとテンションが下がった晴美。
「そうですね…」
「まぁ、ここをぶっ壊したのは日本軍だけではないんだがな!」
いつものテンションに戻った。
起伏の激しい性格である。
「実は…あの武田軍が…!このすぐ横!松山城を攻めるために使ったのだ!」
一つの山を指差して晴美が叫んだ。
「松山城って…!関東を抑えるためにあの北条・上杉・武田で奪い合ったっていうあの城ですかっ!?」
「そうだっ!」
ここにきてやっと吉見百穴まで来た理由がわかった乙葉。
そうともなれば…。
「なるほど…。山、背後は川…。これは城を建てるのに抜群の場所ですねっ!」
すぐに地形を観察し始めた。
「武田軍がこの松山城を攻め落とすとき、吉見百穴から地下トンネルを掘る手段を使ったんだが、行きついた先が水源で逆に武田軍に被害がでたんだ。でも、それのおかげで城内は水が無くなり、武田軍は勝利したって逸話がある!」
「第二の意味の水攻めですね!」
「そうだ。よし!では、松山城に行こうじゃないか!」
「はいっ!」
吉見百穴から城の周囲を歩いて行った。
しかし、入口が見つからない。
入口と言っても、見た目は何も残っていない只の山。
入りやすそうな場所を見つけているだけなのだが…。
「ここしかないですね…」
乙葉が示したその場所は…。
岩室観音。
地蔵が祀ってある建物があるが、奥に通じている。
通じているとはいえ、水が流れる足場の悪い急斜面を登ることになるのだが…。
乙葉がはふと、岩室観音の説明看板を見た。
「なになに?天正時代に石田三成が夏山城を落した時に一緒に本堂が燃えた…。ってえ!?三成!!」
看板を読んだ乙葉がはためらうことなく急斜面を登って行った。
それに続く晴美。
「この感じ…。もしや松山城へ続く当時の切り通し…」
いろいろ考える余裕はあるようだ。
急斜面を登り終えた二人。
少し奥には石碑が建っていた。
「松山城跡」と彫られた立派な石碑だった。
「ここで…北条や上杉や武田が…!そう思うと感動です!」
目がうるうるしてる乙葉がそこにはいた。
「…あっちも行ってみよう!ここは本丸みたいだし、他の郭とかも!」
晴美が促した。
「はいっ!」
「うあ~…。雑草が多くて…ってギャー!毛虫!毛虫!」
毛虫で騒ぐ乙葉。
苦手らしい。
ところどころ案内看板が立ててはあるが、それも雑草に埋もれそう。
看板以外は一面雑草である。
「兵どもが夢のあととは、よく言ったものですねぇ」
そんなことに妙に感心する乙葉をしり目に晴美は背負ってきたリュックをあさっていた。
そして取りだしたもの…。
「う、うあー!先輩!何持ってきてるんですかぁ!」
乙葉は思わず悲鳴に近い声をあげてしまった。
それもその筈。
晴美の手に握られていたもの…それは。
「これか?これは鎖鎌だ!雑草を着るのに便利かと思って!」
「物騒です!危ないです!しまってくださいぃ!」
「物騒ではない!あの大化の改新で蘇我入鹿が討たれた武器も鎖鎌だったのだ!」
「今自分でとんでもない武器持ってますアピールしましたよ!」
結局、晴美は鎖鎌をしまった。
その後二人は春日郭、門の跡、堀、土塁などを見て松山城を出た。
「…先輩。あんな大変な思いして急斜面登らなくてもここにご丁寧に入口ありましたね…」
普通に「松山城入口」という大きな看板が立っている階段を見つけてしまった二人だった。
「まぁ、切り通しも見れたし!良しとしようじゃないか!」
「そうですね!って…。切り通し?」
「初めに登ったあれ、切り通しだぞ!?」
「ウソーー!?全然意識しないで登っちゃったじゃないですかぁ…」
肩を落とす乙葉であった。
山田城に関しては情報が少なすぎて…。
森林公園の中です。
紅葉見るついでにどうでしょう?
松山城は石碑があります。
岩室観音から登るのはオススメしません。
切り通しが見たいなら別ですが、危険ですので。
普通の道、山からおりた後で知りました…。
今回からしばらくは、跡しか残ってない城がやたら出てきます。
私が行った城、大阪と小田原以外は遺構巡りですので…。