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三百二十番槍 その時、大阪城の娘は

「豊臣秀頼って板付きのカマボコが好きだったんだって」


すみれ

「あのお正月の紅白のやつ?」


「うん。カマボコだからそうだね」


すみれ

「あんたも紅白じゃん。巫女だし」


「うん。…え?」

徳川家康が江戸で幕府を開いた。


それと同時に大阪城の中で始まったことがある。


千姫へのイジメである。


徳川秀忠の娘である千姫は、7歳で11歳の豊臣秀頼に嫁いでいた。


つまり、徳川の子なのである。


それが気に食わなかったのが秀頼の母である茶々。


秀忠の娘であると同時に、茶々の妹である江の娘でもある千姫だったが、茶々には嫌われた。


「あんたなんで徳川の子なのよ!」


「それは…そんなこと言われましても…」


「いつまでたっても子供作らないし!作る気ないんじゃないの?」


「それは…まだ繁殖能力を持ってないので…」


「もういい!秀頼に近づかないで!秀頼、美人をたくさん呼んだから早く子供を!跡継ぎを!じゃないと家康に負けるわよ!」


とんでもない母親である。


そんないじめられながらの日々を送る中で勃発したのが大坂の陣。


二度目の戦いで豊臣家は完全に敗北。


もはや命さえ危なくなった。


「あたし、助命をお願いしてきます!」


そう言って城を出ようとした千姫だったが…。


「待って。あんただけ逃げる気でしょ」


手を引いて止めるのは茶々だった。


「そ、そんなこと!」


そんなとき、横にいた秀頼が口を挟んだ。


「もはや生き残るすべはそれしかありません。母上、千姫に頼りましょう」


「…。秀頼が言うなら」


こうして、千姫は外に出た。


しかし、そこはすでに火の海だった。


八方塞がりでどうすることもできない。


もはや安全な場所は無い。


助命感嘆すらできないのかな…。


そう思ったときだった。


「千姫ですか!?助けに参りましたぞ!」


現れたのは坂崎直盛。


千姫の命を助けるために炎の大阪城へと突っ込んできたのだ。


顔にはやけどを負っている。


いかに命がけだったかがわかる。


それもそのはず。


実はどうしても孫の千姫を助けたい家康が「助けてくれたら千姫を嫁にやる」と言ってしまったのだ。


これに鼓舞されたのが直盛だった。


「よっしゃ!助け出したぜ!これで千姫ちゃんは俺のものー!」


直盛はこの時喜んでいた。


後におこる悲劇を予想すらせず…。


さて、無事に助け出された千姫。


まずは家康と対面した。


「無事で良かった!良かった!」


家康はとても喜んだのだった。


次に、父である秀忠に対面。


「父上、ただ今戻りました」


娘の生還に、喜ぶ父。


…かと思いきや、そんなものはありはしなかった。


「なぜ生きている千姫!秀頼とともに死ぬべきだったんだ!それが武家に嫁いだものの宿命!」


なんと秀忠はそう叫んだのだ。


「父…上…?」


あまりの言葉に涙する千姫。


しかし、辛いのは秀忠も一緒だった。


娘が命惜しくてここに居るわけではないことは、感じていた。


おそらく頼みごとをしてくるだろうことも分かっていた。


千姫が生きていることは嬉しくて仕方がなかった。


でも、何よりもこの戦で命を落とした兵たちのことを考えると、敵である千姫が生きていることを喜んではいけないのだ。


(わかってくれ、千)


秀忠はそっと心の中で呟いた。


「父上!お願いがあります!秀頼様と茶々様のお命をお助けください!」


千姫は助命感嘆をした。


やはり頼んできたか…。


秀忠は予想通りだと思った。


そのころ、秀頼と茶々は城内の小屋に逃げ込んでいた。


周りは鉄砲隊が取り囲み、射撃命令があれば即座に打ち込める状態であった。


命令を出すのは秀忠の役目。


要は二人の命は秀忠が握っていると言ってよかった。


助命感嘆を聞くか聞かないか。


…秀忠に迷いは無かった。


「撃て!」


「そんな…!」


千姫の願いは聞き届けられることはなかった。


二人は小屋で切腹。


徳川の世は堅いものとなった。



さて、戦も終わったそんな時。


千姫は江戸へ帰る事となった。


その道中での出来事。


連日の大雨で川が増水し、渡ることができなくなってしまった。


伊勢の国、桑名での出来事である。


そこで、桑名城にお邪魔することになった。


「やぁ、姫様。雨が上がるまでごゆっくりおくつろぎください」


案内してくれたのは本多忠刻。


相当なイケメンだった。


「あ、あの…。はい…」


一目惚れだった。


雨が上がって、忠刻が手配してくれた屋形船で川を下ったとき、別れを惜しく思ったほどに。


「忠刻さまぁ…。キャッ!」


恋煩いの中、千姫は江戸に到着。


すると、江戸で思いがけない人物が現れた。


直盛である。


嫁にするという約束のもと、千姫を助け出した人物。


しかし、千姫的には好みでなかった。


「おじいさま、私、忠刻様と結婚したいです!」


「可愛い孫の言うことだ。いいだろう」


なんと、家康は千姫と忠刻の結婚を許してしまったのである。


これに怒った直盛。


「結婚なんてさせねー!こうなったら俺が千姫を力で奪ってやる!」


意気込む直盛だったが、計画を実行に移す前にバレて切腹することになった。


こうして、晴れて千姫は忠刻と結婚するのであった。

いつも通り短いかとおもいきや、ちょっと長い回となりました。


たまにはお許しください。


千姫に注目して書いてみました。


もとは秀忠が千姫が生きていることに怒ったってだけを書きたかったんですが、状況を説明していくうちにどんどん他の逸話が入ってきて結局直盛の話まで行きました。


千姫は面白いですよ。


7歳の子供に跡継ぎ作れというのはなかなか無理なお話です。

というか茶々の性格が悪い…。


因みに、千姫には「吉田御殿伝説」とかいう逸話もありますが、あっちは信憑性が無い全くのでっち上げかつ、どうにも書きにくいので省略です。


千姫はあんなに狂気の人じゃありません。


詳しく知りたい方は調べてみてください。


「千姫 吉田御殿」でググれば出てくるかと思います。


因みに、吉田御殿は千姫が生活していた部屋だと言われています。

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