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2周年記念! 戦国大運動会!

ついにやってきました!

日の本2周年!


私がなろうでアカウントを作ってから1年と9日。


始まったのがこの小説です。


当初は全く予想外の長期連載となっております。


まだまだ続けていく所存です。


今回の記念作品は上・下に分かれております。

文字数が多いからです。

執筆が間に合わないから書けたところまでで挙げちゃえとかじゃありません。


舞台は小学校。

運動会です。


史実多数ですよ。


後書きでどこが史実かを解説します。


今回は艦これにハマってニートと化したげどーさんに代わり、私自分で絵を描いてみました。


これが美術2の実力です。

この程度です。

だから毎度任せてるんですけどね(笑)


挿絵(By みてみん)


「宣誓!我々、選手一同は!」


「スポーツマンシップにのっとり!」


「正々堂々と戦うことを!」


「「「誓います!」」」


「天正9年!6月21日!」


三好長逸みよしながやす!」


三好政康みよしまさやす!」


岩成友通いわなりともみち!」


全然正々堂々なイメージの無い三好三人衆による選手宣誓から始まったこの運動会。


文句を言う生徒もいた。


「ねえ。なんでこの日なの?俺へのあてつけ?6月って違和感あるけど?嫌がらせ?」


それは織田信長くん。


某「大事件」と同じ日にちなのが気に食わないらしい。


「まぁまぁ。偶然だよ、偶然」


それを宥めるのは明智光秀くん。


信長くんの良き理解者(笑)である。


宣誓の次は校長の話。


話が長いことで有名な足利義昭校長である。


「えー。本日はお日柄もよく、絶好の運動会日和となりました。生徒諸君は正々堂々と戦い、決して特定の生徒を狙って包囲網を組んだりはしないように」


「なんか囲われそうな気がする…」


信長くんがそう呟いた。



さて、開会式がひとしきり終わったところで競技へと移る。


まずは玉入れ。


軽快な音楽とともに入場する生徒たち。


「では、行ってまいります」


光秀くんがそう言って入場した。


軽快な音楽が止まると同時に、入場した生徒たちは動きを止めた。


籠を中心として円状に広がって座る生徒。


「それでは、競技を始めます」


放送部員のアナウンスが流れた。


そして…。


「始め!」


その掛け声と同時に大砲が鳴った。


もちろん弾は入っていない。


競技開始の号令と同時に全生徒が立ち上がった。


そして、手にした火縄銃に充填を始めた。


そして、パン、パンと弾が飛び交い始めた。


狙いは籠。


いかに火縄銃の弾を籠に入れるか、というのがこの競技である。


籠までの距離が近いせいで、なかなか上手く入らない。


「よし、任せろ!」


光秀くんが叫んだ。


光秀くんはこの鉄砲の扱いに長けていた。


負けるわけにはいかない。


光秀くんはやたら上を狙って撃った。


発射された弾は高く上がり、しばらくして落ちてきた。


そしてそれは、籠の中にポトリと入った。


光秀くんは自慢する様子もなく次の球を込めた。


光秀くんは一人で3発入れることができた。


他のクラスメイトは入れられなかった。


みんな思うことがあった。


「うちのクラスは光秀くんがいるから玉入れは負けねぇ」と。


しかし…。


ふたを開けてみるとそんなことは無かった。


なんと、光秀くんのクラスは3発で2位タイ。


なんと他のクラスにも3発入れたところがあったのだ。


さらに、1位はなんと6発。


すさまじい数である。


2位のクラスは、杉谷善住坊くんがいるクラス。


彼もまた鉄砲の名手だった。


1位のクラスは雑賀孫一くんのクラス。


孫一くんは玉入れのために「雑賀衆」という精鋭部隊だけのチームを組んでいた。


まさに、玉入れに命をかけたクラスだったのだ。


これは負けても仕方ない。


しかし、信長くんは怒った。


「なんで杉谷善住坊が同じスコアなんだよ!あいつ、首だけ出して埋めてやる!」


「やめてー!校庭に穴をあけないでー」


光秀くんは慌てて止めるのだった。




次の競技は50メートルかけっこ(馬で)。


アナウンスによる走者紹介がなされた。


「1レーン!武田信玄!愛馬は鬼鹿毛おにかげ!」


「今日は父から借りてきた!」


だ、そうです。


「2レーン!前田慶次!愛馬は松風!」


「じっちゃんから奪った!」


だ、そうです。


「3レーン!上杉謙信!愛馬は放生月毛ほうしょうつきげ!」


「川中島の信玄と一緒に銅像になったのはこの馬ぞ!」


だ、そうです。


「4レーン!森長可!愛馬は百段!」


「石段100段を駆け上るんだぜ!」


だ、そうです。


なんでみんな馬の自慢しかしないのかはさておき。


50メートルくらい自分で走れというのもさておき。


4人はスタート位置についた。


「位置についてー…よーい………ドン」


大砲の音が響く。


それと同時に走り出す馬。


「うあぁぁぁぁぁぁあああ!一番槍だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


こんなにも殺伐とした運動会があっただろうか。


信玄くんと謙信くんにいたってはお互いを蹴っ飛ばしている。


間の慶次くんは可哀想だ。


馬による50メートル走。


決着までは早い。


長可くんの一人勝ちであった。


ただ一人、謙信玄の被害に合わなかったからである。


もはや名馬関係ない。


レース後、たんまり怒られた謙信玄の二人であった。



「続いての競技に移りたいと思います。次は障害物競争です」


アナウンスが流れる。


障害物は4つあり、直前まで関係者以外には公開されない。


情報収集のために誰しもが忍者を雇うのだが、それでも聞き出せた前例がない。


これも1レースにつき4人で走る。


最後まで走れなければ失格である。


やはりアナウンスによる走者紹介が行われた。


「1コース!高山右近!」


「ジュストと呼んでくれ」


自分の呼び方にクレームをつけた。


「2コース!加藤清正!」


「誰よりも早く秀吉くんのもとへ!」


いや、ゴールを目指せよ。


「3コース!仙石秀久!」


「今、誰だお前って言わなかったか?」


クラスでぼっちだと宣言したに等しいぞ今の発言。

確かに知名度低いけどさ。


「4コース!福島正則!」


「酒に酔ってない俺は無敵!」


酒癖悪いことを自負しているそうです。


この4人で走ることとなった。


因みに、今回は足で走ります。


位置について、スタートを待つ。


そして…。


大砲の音と同時に、4人は走り出した。


まず、第一コーナー。


ここに一個目の障害物がある。


障害物その一。


「聖母マリア像カーペット」


マリア像の絵が大きく描かれたカーペットである。

右下にはなぜか小さく「小林製薬の糸ようじ」と書かれている。

印刷ミスだろうか?


駆け抜ける3人と、ストップする1人。


止まったのは右近くん。


「神よ…僕は…あなたの上を歩くくらいなら…。勝負を捨てます!」


右近くん、リアイヤ。

踏み絵みたいになった。


カーブを抜けると次はストレート。


ここにもトラップがある。


第二関門。


「戸次川」


なぜか校庭に川があった。


大がかりな運動会である。


しかも名前は戸次川とされていた。


橋は無いので中を通るしかない。


「こんなの余裕じゃねーかよ!」


「この程度の深さなら余裕!」


正則くんと清正くんは普通に駆け抜けた。

水深は1メートルほど。


二人はほぼ同時である。


しかし…。


「へ…戸次…川…」


足が震える秀久くん。


「向こうには、島津くんが待ってるかもしれない…。いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


がたがたと震え始め、腰が抜けてしまったようだ。

過去に何かあったのだろうか?

是非とも聞かないであげてほしい。


秀久くん、リタイヤ。


「負けねーぞ清正!」


「俺も負ける気はねーぞ!正則!」


二人はライバル。


お互いに譲ることなく第三障害物へ。


第三関門。


「妻」


「げっ…」


顔色が変わった正則くん。


妻がいるような人間が運動会やってる不思議はさておき、正則くんは言葉が出ないほどおびえている。


正則くんの妻は薙刀を持っている。


清正くんの妻は愛妻弁当を持っている。


リア充爆発しろ。


「正則!またへらへらと遊び回って!今日は許さないわよ!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ…」


正則くんは逆方向に逃げて行った。


逆走により失格。


清正くん一人となったが、障害物は続く。


このレース、場合によっては誰もゴールまでたどり着けないかもしれないが、そんなことは知らない。


さて、清正くんが最後の障害物にたどり着いたようだ。


最終障害物。


「虎」


ようは倒せということ。


清正くんは虎を見るなり刀を抜いた。


「『地球の歩き方』を読んだ俺は、今ならアフリカにも行ける…!アフリカにはライオンだっているんだぜ!これがアフリカンスタイル!」


何か言っていた。

要は、「虎なんか怖くない」と言いたいらしい。

根拠は本を読んだから。


因みに、清正くんは中国にしか行ったことは無い。

なぜアフリカとか言い出したかは不明。


長い睨み合い。


とても競争とは思えない。


そして…。


「おりゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」


「がうぅぅぅぅぅぅ!!(虎の鳴き声)」


勝負は一瞬でついた。


虎は、描写すると「残酷な描写あり」「R-15」のタグを付けなければならない姿になった。


「ふっ…。これがアフリカンスタイルだ」


軽く息を漏らすと、清正くんは刀を納めゴールへと歩いて行った。


競争相手がいないため歩いても問題は無い。


因みに、この障害物競争は清正くん一人しかゴールできず、来年もやるかは検討中となった。


虎つかまえるのが難しいらしい。


一部から「たくさんいるならアフリカのライオンにすれば…」という声も上がったという。


どうでもいいが、清正くんが行ったのはアフリカではなく中国。


直江兼次くん達と一緒に行ったらしい。


猛獣=アフリカというのは間違いであることを清正くんはまだ知らない。


ここで午前の部終了。


お昼休憩を挟んで午後の部となる。



午後はこの競技からスタートした。


デカパン競争。


二人一組となって巨大なパンツ(トランクス型)に入って走る競技。

レク的な要素が強く、見た目が滑稽なので盛り上がる。


これに出場するのは石田三成くんと大谷吉継くん。


彼等と戦うのは伊達政宗くんと佐竹義宣くんペア。


さらにもう一ペア。


武田信玄くんと上杉謙信くんペア。


この3ペアが走る。


それぞれのコースに付く。


そして…。


「位置に付いて…よーい…」


ドゴォン!


大砲の音と同時に走り出す。


3ペアとも勢い良く飛び出した。


「三成くん!同じペットボトルを回し飲みした仲だ!勝つぞこの戦い!」


「ああ!しかし、デカパン競争への出場をお前にうち明けた時、お前は反対したっけな」

「無謀だと思ったんだ。だが、お前の決意が本物だと分かった今、地獄までお供してやるよ!」


「おう!行くぞ!盟友!」


「おっしゃ!」


走りながら絆を深める二人。


もはや一心同体。


最速で駆けていく。



それを追うのは信玄くんと謙信くんのペア。


先程から度々立ち止まってケンカしている。


また立ち止まった。


因みに、これが4回目。


「お前デカパン引っ張り過ぎなんだよ!走りにくいだろ!」


「引っ張っていない。デカパンの布が欲しいなどという欲は無い」


「あ~?そうじゃねぇよ!お前の方がゆとりがねーかって言ってんだよ!」


「同じだ」


「いや違うね!お前の方がゆとりがあるね!こっちピチピチなのにそっちブカブカだね!」


「そんなことはない」


「頭来た!力で奪う!」


「良かろう!取れるもんならな!」


ついに殴り合いのケンカが始まってしまった。


過去3回の睨み合いとは訳が違う激しいケンカだった。


「はぁ…はぁ…。引き分けか…やるな」


「俺の…勝ちだろ…。流石に啄木鳥戦法が破られた時は焦ったがな」


「ふっ…あれくらい…」


「言ってくれるな…。さすが我がライバル…」


「ははは…。そろそろ行くか!ゴールを目指すぜ」


「おう!」


二人は立ち上がり、ゴールを目指した。


途中もう一度睨み合いがあったが、ケンカにはいたらなかったようだ。


そして見事にゴールするのであった。



最後尾を走る義宣くんと政宗くんペア。


スタートは政宗くんが飛びだしたが、それきり進んでない。


「何でてめーなんだよ、ザコ!」


「俺が聞きたいわ!」


この2人、犬猿の仲である。


「この前、『7人で行けば勝てる』とか言って俺に走りで挑んできて、誰も勝てずに泣いて謝ってきたのは誰だっけ?」


「違う!あれは先生が、お前が人数多い中でいつも通り走れるか心配してたから、つい本気を出さなかっただけだ」


「言い訳か」


「んだと!人取橋での出来事を大声で叫んでもいいんだぞ?」


「ああ、なんか大勢で押し掛けてきて、俺をやったと思ったら、逃げられましたったやつな。お前らバカで助かったわ。お前らじゃなきゃ逃げられなかったかもな」


「てめぇ~!」


そんな罵りあいが続いた。


終いには…。


「てめぇとゴールするくらいなら、ここで勝負を捨ててやる」


「逃げるのか。良かろう」


義宣くんはデカパンから抜け出してしまった。


この瞬間試合放棄で負けである。


こうしてデカパン競争は三成くんと吉継くんのペアの勝ちで終了した。


次の競技は因幡の白ウサギ。


馬跳びの馬の格好をした人が連なって並び、その上を一人が走る競技である。


詳細が分からない人はYouTubeを見よう!

恐らくは上を走る人はウサギ、下の足場となる人はウサギに騙されたワニであろう。


ワニたちもウサギが渡り終わったら直ぐにウサギを追い掛けて走り、次の足場を作らなきゃいけないので楽ではない。


ここでは誰が上を走るかが問題になる。


このレースは4コースで行われる。


「ここでウサギを紹介します」


そんなアナウンスが流れた。


「1コース。松永久秀ウサギ!」


「2コース。堀秀政ウサギ!」


「3コース。井伊直政ウサギ!」


「4コース。武田勝頼ウサギ!」


アナウンスによる紹介が終わり、競技準備に入る。


ウサギはワニの上に乗って待機。


これで後は大砲を待つ。


「位置に付いて…よーい…」


ダゴォン!


大砲が鳴った。


同時に走り出す3人。


…3人。


スタート位置で止まっていたのは直政くんだった。


なんとワニがみんな逃げ出していた。


「おい!逃げるな!あんパンあげるから!」


「あんパン半分でいいから本多忠勝くんのワニになりたかった…」


「直政くん、ミスするとすぐ叩くからイヤだー!」


そんな声を挙げてワニ達は逃げるのだった。


ワニがいなくなった以上先には進めない。


直政くんはリタイアである。



一方、勝頼くん。


「やめた方がいいよ!」


「うるさい!俺は行くぞ!」


友達の山県昌景くんと言い争いしながらのスタートとなった。


「勝頼くんだと怪我するからウサギ役はやめた方がいいよ!」


「お前もしかして、俺のウサギが怖いんだな?やれやれ、いくつになっても命は惜しいな」


「まだ設定上小学生だよ!」


嫌みを言われて、昌景くんは説得を諦めワニとなった。


「おい…あいつで大丈夫なのかよ…」


「ダメだ。犬に説教するようなもんだった。俺たち負けたよ…」


みんなヤケに張り切り過ぎて失敗する勝頼くんの性格はよく知っていた。


だから心配だったのだ。


「ほらみろ!順調に進めるじゃねぇか!昌景め!見たか!」


勝頼くんが調子に乗り始めた時だった。


「うわっ!」


背中に足を掛けたとき、体育着が滑り…。


そのまま転んでワニから落下。


顎を背中に打ち付けた。


「あぐぅ…いってー…」


勝頼くんも痛いだろうが、顎で打たれた方も痛い。


結局、勝頼くんは戦意喪失。

クラス一同、ずっと無言。


士気が下がったクラスを見て、ほれ見たことかと呟く昌景くんだった。



さて、順調に進んでいるのは久秀くんと秀政くんの二人。


秀政くんは一致団結して進み、折り返し地点も越えてラストスパートに入ろうかというところだった。


「秀政くんの為ならワニにもサメにもなろう!」


「私も!」


「俺もなるぜ!」


クラスのみんなが進んでワニになっていた。


誰からも恨まれることなく、みんなを助けてくれる秀政くん。


ある時はクラスへのクレームを処理して、明るいムードに変えた。


またある時は荷物の押し付けあいでケンカしていた友達の仲介者として間に入り、自ら荷物を持ってあげたりもした。


自ら足場となることで、少しでも恩返しがしたい。


そんな気持ちで一致団結したのだ。


ゴールは近い。


そんな秀政くんに追い付こうとするクラスがあった。


久秀くんのクラスだ。


「ふっふっふ。ワニにならないとリア充が爆発するぞ!」


「ひ~~!」


「ま、なってもするかも知れんが」


脅しながら進んでいた。


「大丈夫だ。裏切りはしないよ」


「裏切りって何?この競技でどう裏切るの?」


「まずは味方だと思ってるお前らの背中で平蜘蛛を叩き割ってから爆発する」


「裏切りじゃねーよそれ!完全に容疑者だよ!」


突っ込まれながらも走る久秀くん。


「あ、ただし疲れてたり鬱だったり怒ってたり飯を食べすぎた人は休んでていいよ!あの日の女の子は腎臓病になっちゃうから参加しないでね!あと、肌が荒れてる女の子と、声が低い女の子は疲れるだけだから参加しないでほしい」


優しさなんだか差別なんだか分からない久秀くんの呼びかけに応えるように、仲間たちはワニとなった。


二人のデッドヒート。


さて、勝ったのは…。


「秀政ウサギ逃げ切りました!」


アナウンスでわかった。


秀政くんが勝利したのだ。


「あ~、やはり裏切るべきだった」


「だからあんたの裏切り事件だからね!」


こうして因幡の白ウサギは終わった。



次の競技は「棒引き」だ。


これは、校庭の真ん中に並べられたいくつもの竹の棒を持って、自陣に帰る競技。


持って帰った数が多い方が勝ち。


自陣は50メートルほど竹から離れた場所にある。


持って帰るまでに敵から奪い返すのはOKであるが、自陣の竹置き場に置いたものはもう触れない。


いかにそこまで持っていくかが勝負である。


向かって右側に陣取ったのは徳川家康くん。


向かって左側に陣取ったのは毛利輝元くん。


校舎の中から眺めているのは小早川秀秋くん。


皆自陣で息巻いている。


秀秋くんは校舎から見守る。


輝元くんがピンチになったら駆け付けるつもりなのだろうか。


昇降口には片桐且元くんがスタンバイしている。


こんな不思議な布陣で始まった棒引き。


さて、どんな勝負になるのだろうか。


試合が始まった。


これは長い時間がかかる暑い戦いになると思われた。


「いけー!」


お互いのクラスがぶつかり合う。


竹はみるみる取られていく。


戦況は五分五分。


クラスの代表である二人にも情報が入る。


それは大きく戦況を左右する情報だった。


「小早川秀秋くんが裏切りました!それに伴い且元くんも裏切りました!運び込まれている途中の竹が次々と家康のもとへ!」


「何!?秀秋はともかく且元までもが!?くそ!やつを昇降口に置いたのは間違いだったか…」


輝元くんの近くにいた大谷吉継くんが驚いていた。


そして…。


「身を挺して竹の流出を食い止めます。三成とともに」


「行くか!吉継!」


「おう!」


吉継くんと三成くんが陣を出た。


「俺らも出た方がいいか?」


「動くことまかりならぬ!」


「おお、そうか…」


吉川元春くんに相談した輝元くんだったが、そう言われて陣を出るのをやめた。


一方、竹置き場は修羅場だった。


「くそ!竹を持ったばっかりに周りを囲まれた…」


島津義弘くんが大ピンチを迎えていた。


家康くんのクラスの人たちに囲まれたのだ。


「くそ…。こうなったら…捨てがまりだ!行くぞ!」


「おー!」


周りにいたわずかなクラスメイトを鼓舞。


なんと自陣目指して強行突破を試みた。


敵が来たら一人が食い止める。


大量の敵を一人で足止め…。


つまりは犠牲になるということだ。


それでも自陣に竹が届くなら…!


必死だった。


そうして死に物狂いでたどり着いた義弘くん。


その手には、竹があった。


しかし、彼を待っていたのは悲報だった。


「吉継くんが…やられた!」


「何!?」


驚きを隠せない義弘くん。


「なぜ!?」


「且元が裏切り、吉継くんは頑張って竹を死守したんだが…」


「守りきれなかったか…」


「うん…」


吉継くんは竹を取られたらしい。


しかも裏切った且元くんと秀秋くんに。


これが決定打となり、輝元くんクラスは負けた。


そうそう、三成くんは一本も取ることなく帰ってきたらしい。



次の競技は棒倒し。


自分の棒を支える人、相手の棒を倒す人に分かれて行動する。


棒は木の丸太。


数人で常に支えなければならない。


支える人が多いと敵を攻撃できない。


逆に支える人が少ないと敵にやられたときあっさりと倒れる。


攻守の切り替えと人数配置がカギとなる。


これを戦うのは織田信長くんと浅井長政くん。


まずはお互いしっかりと棒を支える。


数人が自陣の前に出て攻撃準備をする。


そして…。


大砲の音と同時に試合が始まった。


お互いに半分くらいの人数を攻撃に回した。


棒を倒しにかかる人たち。


守り手を踏み台として上に登っている。


それでもまだ数人で、払えるくらいの人数である。


「全軍、一度戻れ!」


信長くんがそう叫ぶと同時に、信長くんのクラスのみんなが戻ってきた。


これを警戒してか、長政くんも全軍を守備に回した。


「これが!浅井クラス戦法!誰か二人が木を支えよ!それ以外は攻撃に回れ!」


なんと、総攻撃を先に仕掛けたのは長政くんだった。


「来るか!なら、こちらも策がある!13段の構えを取れ!」


13段の構えとは、非常に硬い守りを築く防御のやり方である。


木を中心に13層となるように人を丸く配置し、全員で支えるというもの。


堅い守りなだけに突破はほぼ不可能。


相手の疲弊を狙い、その隙をついて全軍攻撃に持ち込む作戦である。


信長くんの得意技である。


そして、長政くんのクラスのエースである磯野員昌くんが13段の構えへと突っ込んでいった。


「どうせ無駄よ!」


信長くんはそう叫ぶが、員昌くんは諦めない。


無理やり中に割って入ったのである。


「1段目突破ー!」


構えの内側から上がる叫び声。


それはまるでカウントダウンのようで…。


「2段目突破ー!」


最初は余裕だと思っていた信長くんも…。


「8段目突破ー!」


これを聞いて不安になってきた。


なおも員昌くんの快進撃は続く。


「進撃の員昌の力を見たかー!11段目突破ー!あと2段!」


そう叫んだ時だった。


「今だ!構えているやつは横から挟み撃ちにするんだ!いけー!」


信長くんが叫んだ。


「何!?」


員昌くんは焦った。


この中で挟み撃ち…だと?


足を引っ掛けられた転んだ員昌くん。


あとはやられたい放題。


脇をくすぐられ、靴を脱がされ…。


長政くんのクラスからしたら、希望が消えたに等しい。


士気はもうだだ下がり。


信長くんはこれを待っていた。


「今だ!10人を残して攻撃に回れ!」


「おー!」


勝ち鬨が上がり、一気に形成が逆転した。


守りなど捨てていた長政くんのクラスの棒は、もはや文字通り棒立ちだった。


これを倒すのに辛いことは何もなかった。


こうして、信長くんの逆転勝利でこの競技は終わった。



続いて二人三脚。


運動会の定番競技。


出場するのは3ペア。


陶晴賢くん・大内義隆くんペア。


石田三成くん・島左近くんペア。


織田信長くん・森蘭丸くんペア。


足にバンドを巻き、スタート位置に着く。


ダゴォン!


大砲の音が鳴るとともに駆け出した。


「行くよ!晴賢ちゃん!」


「…うん」


二人は1・2・1・2と掛け声を出しながら走り出した。


妙に馴れ馴れしく方に腕を回しているように見える義隆くん。


それが嫌そうな晴賢くん。


その様子に義隆くんは気付いていないようだ。


それ以外は順調に走っていた。



「かかれー!」


「うっさいわ!」


スタート同時に叫んだのは左近くん。


横にいた三成くんは耳キーン状態。


「おいロリコン静かに走れよ」


三成くんがたまらず文句を言った。


「ロ、ロリコン?なんで?」


「お前、司馬遼太郎の小説の中で設定がロリコンだぞ」


「え~…。えー…?」


「面白いな」


「いや、全然…。俺も他人のことなら笑えるんだけどなんて言ったって自分のことだからさ…」


「ああ、そうだな」


走りながらこんなにがっかりする奴も見たことない。


「全く、三成くんが給食半分くれると言わなかったら出なかったよ」


「だろうね」


…。


この後二人は黙々と走るのだった。



「行くぞお蘭!」


「おー!」


「あ、でも転んで怪我したら危ないから抱っこしてあげよう」


「え?」


信長くんはまさかのお姫様だっこをした。


足が繋がっているので信長くんはかなり無理のある格好となっている。


片足でピョンピョンはねる形となった。


これでゴールを目指すそうです。


蘭丸を抱えてピョンピョン跳ねながらゴールを目指す信長くん。


周りからは歓声である。


ただし、他の二ペアからは遅れを取る形となった。



晴賢くんと義隆くんペアに異変が起きたのは、ゴール直前だった。


晴賢くんが突然足を止めたのだ。


弾みで義隆くんはすっころんだ。


「何?どうしたの?お腹痛いの?さすってあげようか?」


晴賢くんを心配する義隆くん。


しかし、返ってきた言葉は感謝のものではなかった。


「お前、ウザイよ?」


「え…?」


「お前、ベタベタくっつきやがって!キモいんだよ!」


「え…あ…」


そして最後に…。


「今日でおさらばだ!」


そう言って足のバンドを切った。


競技規定上、バンドが外れたらその時点で失格。


晴賢くん、まさかの裏切り。


義隆くんは暫くその場で体育座りをして落ち込んでいた。


その場とはトラックの上である。


迫る三成くん、左近くんペアに気付いたのは、左近くんの声があったからだ。


「三成くん。トラックに誰かいて邪魔だよ」


「避ければいいだろ」


「いや、ここは…。かかれー!」


「何っ!?」


三成くんでさえビックリしていた。



「かかれー!」


そんな叫び声に背中を振るわせ振り返ると、左近くんが鬼の形相で突っ込んでくるのが見えた。


「ギャー!」


慌ててトラックから出る義隆くん。


義隆くんは恐怖のあまり左近くんの服装を覚えていなかったという。


(当たり前だが、体育着ではあるが)


そのまま三成くんと左近くんペアが一着。


そのかなり後ろに信長くんがいた。


「はぁ…はぁ…。疲れた…」


「歩こうか?俺」


「いや、大丈夫…」


「きっと頑張ったあとの飯は美味いよ!」


「…もう弁当食べた」


三成くんたちから遅れること2分。


ようやくゴールを迎えるのだった。


二人一脚は競技上無理があるということで、次回から禁止になる模様。


「さぁ応援合戦!こっからが本番!」


誰かが叫んだように、次は応援合戦。


そして、応援合戦の後は今までより得点の高い競技なのだ。


まだまだ勝負はわからない。


現在のトップは信長くんのクラス。


さて、今後の展開が楽しみである。

史実紹介

長いのでちょろっとずつ書きます。


足利義昭

「特定の生徒を狙って包囲網を組んだりはしないように」

信長包囲網のことです。


玉入れ

明智光秀・杉谷善住坊は鉄砲の名手で有名。

雑賀孫一は雑賀衆の頭領。鉄砲隊を率いていた。

「杉谷善住坊を首だけ出して埋める」は信長の命を狙った罰として行われた史実です。


50メートル走。

各々武将が持っていた名馬です。全て対応してます。

ただ、信玄だけは父の馬。信玄が欲しがったけど貰えなかった名馬らしいです。

謙信と信玄の蹴飛ばしあいは言わずと知れた川中島の戦い。


障害物競争。

高山右近はキリスト教信者で有名なので、絵踏みをイメージしました。

戸次川は、仙石秀久が島津軍勝手に挑みかかりコテンパにやられた戦い。

妻が怖いと言えば福島正則。正則が唯一背中を見せて逃げた相手だとか。

加藤清正と言えば虎退治。虎をも倒す清正です。アフリカが出てきたのは、偶然執筆中にテレビ見てたらアフリカが出てきたため。特に意味なし!


デカパン競争

石田三成と大谷吉継と言えばあの逸話!実際はペットボトルではなくお茶を回し飲みしました。絆は深いです。

謙信と信玄はやはり川中島。4度目が一番激しい戦いなので。5回立ち止まったのは川中島も5回戦ったから。

佐竹と伊達は本当に犬猿の仲でした。お互いにお互いを嫌ってましたし…。

人取橋の戦いでは連合軍で伊達を攻めたが討てず、窪田城の戦いでは佐竹は伊達の兵力の7倍いるのに和睦しました。


因幡の白ウサギ

井伊直政は家臣に恐れられていました。「給料5000石で直政に仕えてくれ」と家康に頼まれた家臣は、「2500石でいいから忠勝に仕えたい」と言ったそうです。ミスした家臣をすぐに成敗した直政でしたから、当然と言えば当然です…。

武田勝頼は、老臣の制止も聞かず長篠の戦いに臨み、ボロ負けしました。

「いくつになっても命は惜しいものだな」は勝頼が、撤退を促す昌景に放った言葉。

堀秀政は、家臣から恨まれることのない武将だったといいます。

人望が厚かったのでしょう。よってこんな感じにしてみました。

ケンカ止めたりクレーム処理したりは史実です。

松永久秀と言えば爆死!平蜘蛛は茶器の名前です。爆死直前に叩き割ったらしいです(なぜか現存してますが)。

「ただし疲れてたり鬱だったり怒ってたり飯を食べすぎた人は休んでていいよ!あの日の女の子は腎臓病になっちゃうから参加しないでね!あと、肌が荒れてる女の子と、声が低い女の子は疲れるだけだから参加しないでほしい」の元ネタは黄素妙論。

まぁ…子孫繁栄の仕方(ただし性的な意味で)のノウハウが書かれた本です。



棒引き

これは完全に関ヶ原の戦いをイメージ。

島津の捨てがまり・小早川の裏切り・吉川元春の制止・片桐且元の裏切り…。全部史実です。


棒倒し

これは姉川の戦いをイメージしました。

織田軍13段の構えを11段まで破った磯野員昌。

姉川の戦いだと金ヶ崎の退き口へ繋がるのが史実ですが、今回は信長を勝たせました。



二人三脚

これ最初は男色ペアで揃えようかとおもったのですが断念しました。

蘭丸をお蘭と呼び、大切にかわいがる信長。蘭丸の「飯が美味い」発言は、弟だかに向かってそんなこと言った逸話があったかと思います。

可愛がってた晴賢に裏切られた大内義隆。

三成にはもったいないと言われた島左近。ロリコン設定は司馬さんの「関ヶ原」という小説でそういう設定になってたからです。史実かは不明でした。

「かかれー」と服装を覚えていなかったのは、左近の関ヶ原の戦いでの逸話です。


以上、適当な解説でした。

質問いただければ詳しく説明いたします。


次は後半を掲載します。

3日の間には必ず!


しかし皆様、こんな小説を2年間も支えていただき、ありがとうございます!


これからも頑張りますので、重ね重ねよろしくお願いいたします!

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