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2013年企画 戦極・新年会!

晴美

「新年!」


乙葉

「明けまして!」


由佳

「おめでとう!」


すみれ

「ございま!」


「す!」


鬨哉

「………」


乙葉

「どしたヤマト?微妙な顔して…」


鬨哉

「いやおかしいだろ!楓先輩が一文字だからって俺が文句言わないと思ったか?」


「私、一文字でも満足よ?お正月の神社は忙しいのよ」


鬨哉

「とにかく!もう一回やりましょう!ね!?」


乙葉

「しかたないなぁ~…。じゃあ先輩、もう一度!」


晴美

「わかった。今年も!」


乙葉

「よろしく!」


由佳

「お願い!」


すみれ

「いたし!」


「ます!」


鬨哉

「………。楓先輩、『ま』だけでもいいんじゃ…。いえ、なんでもありません…」



とにかくおめでたいお正月でした。


挿絵(By みてみん)

illustration:自然消滅

人間(じんかん五十年。下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。一度生を得て、滅せぬ者のあるべきか」


「酒は呑め呑め、呑むならば。日本一ひのもといちのこの槍を。呑み取るほどに呑むならば、これぞ真の黒田武士」


織田信長が敦盛を歌い、黒田長政が黒田節を歌った。


戦国歌合戦もこれにて終了。


除夜の鐘の終わりが年明けを告げた。




ここは天国か、あるいは地獄か。


今となってははるか昔。


天下統一を目指し戦った戦国武将。


そして、それがやたら集まる居酒屋があった。


年明けを迎えた今、ここにはいつにも増して多くの戦国武将が集った。


暗黙ながらも、今宵は無礼講。


主君も家臣も、敵対関係も無視!


時系列も無視!



それがこの居酒屋で毎年繰り広げられる飲み会であった。



「では新年を祝いまして。乾杯!」


飲み会の開始を告げたのは徳川家康。


家康の言葉と同時にカチンとグラスのぶつかる音が響いた。



「家康!何か食べ物注文しようぜ!天ぷらあるぞ!」


家康にそう言ったのは独眼竜伊達政宗。


「おお!そいつはいいね!タイの天ぷらはあるか?」


「あるぞ!しかもカヤ油使用だってさ!」


「マジか!カヤ油使うと香ばしく仕上がるんだよ~」


「ま、食べ過ぎて死ぬなよな!」


政宗は笑いながら家康に言った。


「さて、俺は…」


政宗がメニューを眺めた。


しかし、顔をしかめる。


「どうした?そんな顔をしかめて。しかみ像でも描いたろか?」


家康が自虐を込めて言った。


「お前じゃないんだから惨めな姿は残したくねーよ。寧ろ右目まで入れてカッコ良く描いてほしいわ!そんなことより、メニューにずんだ餅と高野豆腐がねぇ…」


「お前が開発した食材が必ず居酒屋にあると思ったら大間違いだぞ!」


政宗は突っ込まれてしまった。



「ささ、信長も呑んで呑んで!」


織田信長に酒を勧めるのは上杉謙信。


しかし、信長は渋っていた。


「俺、酒呑めねーんだよ…」


「じゃあ是非もないですねぇ。あ、そうか。器が頭蓋骨でないと呑みたくないとか?」


「さらっと人の名言取ったな…。そうじゃなくて酒弱いの!」


謙信は意外そうな顔を向けた。


そして笑みを浮かべた。


「じゃあ私が全て呑もう!」


そう言って信長に差し出した酒を飲み干した。


「お前…脳卒中とかで死ぬぞ?気分悪くてトイレに行ったら倒れた…とかになったらシャレにならんぞ?」


「大丈夫!馬の上でも呑んでた私をなめるなよ!」


「今、大胆な飲酒運転宣言したな…」


もはや呆れる信長だった。


「やあ伝説の勘助くん!」


山本勘助の隣に座ったのは竹中半兵衛。


「伝説って…。ちゃんと実在したってーの!」


少し鬱陶しそうに勘助が答えた。


「あはは。悪い悪い。そのヤマカンは確かだもんね」


「確かに軍略はヤマカンだけどさ…」


「まぁ、軍師は頭脳だからね!カンでも根拠があれば構わないさ」


半兵衛が得意げに言った。


「それなら大丈夫だ!雲の形とかが根拠になるし」


「…それはもはや占いでは?」


不安を感じた半兵衛だった。


「でもさ、16人で城奪うってスゴいよな~」


勘助は酒を口に運びながら言った。


「そりゃあねぇ。女の子に間違われた挙げ句、尿引っ掛けられたら仕返ししたくなるでしょ!」


そういいながら、半兵衛は鯛の天ぷらを頬張った。


家康が残念そうな顔をしていた。




「秀吉!お前んとこの大阪城デカくていいな!」


そう話しかけながら豊臣秀吉に近付いたのは武田信玄。


「おー!掘りも石垣もスゴいんだぜ!自慢の城だ!」


秀吉が胸を張る。


「でもな。人は城、人は石垣、人は掘りだ。結局人がいなきゃダメなんだぜ?掘りが埋められても人がいれば何とかなるかもだしな」


信玄は秀吉の目を見た。


「ああ、掘りも石垣も天守も。全てに人柱を入れろって事だろ?掘りには人を埋めるの?」


「違ーう!人が大切って話しをしてるときになんで犠牲を払うことしなきゃいけないんだよ!」


「違うのか…。そういえば、お主の城も他の城には無い特徴があるらしいな」

秀吉が信玄に聞いた。


「何だ?山のことか?」


「山?」


城だと言ってるのに突然山の話をされても困る。


そんな表情で信玄を見る秀吉。


「トイレだ」


「え…。お主の城ではトイレのためにわざわざ山まで行くのか…?腹痛のときは拷問に等しいな…。わしなら嫌だわ~」


扇子で口元を隠し、軽蔑の目で信玄を見るサル。


「俺だってそれは嫌だよ!山ってのはトイレのこと!トイレのことを山って呼んでんの!」


「え…?大自然=トイレ説…?お主最低だな!そのうち自らの死を水に流して終いには諏訪湖に沈めろとか言いそう…。引くわ~」


信玄から少し遠のく秀吉。


「違うわ!ちゃんと六畳もあるトイレ備えてるわ!しかも水洗トイレ!」


「なんだ、ちゃんとあるんじゃん。で、何で山なの?」


秀吉はなんか心底ホッとした。


「常に臭き(草木)が絶えないから」


「掃除しろよ!」


再び信玄と距離を取る秀吉だった。



「一杯の酒は簡単に呑めるが、三杯の酒はなかなか呑めない」


「それはあんたが単に酒に弱いだけでは?」


酒が注がれたグラスを眺めながら呟いた毛利元就に、直江兼次が声をかけた。



「いや、酒は飲み始めが重要よ?一年の計は春にあり、一月の計は(ついたちにあり、一日の計は鶏鳴にあり、だ。酒の計は飲み始めにありだよな」


「それ、元就が言い出した、『一年の計は元旦にあり』の元ネタだよね。酒はどっちかっていうと、いかに飲み過ぎないかじゃね?」


さらっと言い返す兼次。


「そうか?なら呑むか」


「呑みすぎて記憶無くすなよ。もう面と向かって話しちゃったから、記憶無くしても『後ろ姿しか見たことないから誰だか分かりません』は無しだからな」


「お前じゃないから大丈夫だよ…」


そう言いながら2杯めの酒に手を伸ばした元就だった。



片倉景綱は運ばれて来た蒲鉾をつまんでいた。


「おー、景綱!呑もうぜ」


そんな景綱の隣に座ったのは真田幸村であった。


「しっかし、今俺六文しか持ってないけど大丈夫かね?」


「…既にアウトだろ。何で二回早起きしたらそれだけでまかなえるくらいしか金持ってないんだよ…」


驚きを隠すことなく景綱は幸村に聞いた。


「いや~、真田と言ったら六文銭じゃん?真田家ではそれ以上持ち歩かないのが伝統なのよ!」


「はっ?お前がやたら六文銭アピールしてたのって死ぬ覚悟を見せつけるためじゃくて…」


「俺を殺しても金は手に入らねーから見逃してくれアピールだぞ?」


「そんな馬鹿な…」


ちょっとガッカリした景綱だった。


「でも景綱は金あるだろ?あのちんちくりんからのヘッドハンティングを断ったんだ。そりゃさぞかし裕福だろう」


幸村の言う「ちんちくりん」とは秀吉のことである。


「いや、単純に引っ越すのメンドーだったし。城から出たくないし…」


「引きこもりかよ!理由それだけ?」


「あとはちんちくりんのリンリンになりたく無かったし」


景綱の言うちんちくりんのリンリンとは、秀吉の家臣のこと。


リンリンはサル(秀吉)が首に付ける鈴のこと。


「なる程ねぇ。まぁいいや。今日は奢ってね」


「あ~、仕方ねーな…」


景綱は渋々奢ってやることにした。


「めっちゃいい人じゃん!あんまり良い人アピールすると禁止しても殉死者が出ちゃうよ?」


「お前だって、あんまり死ぬ覚悟が出来てるアピールすると、死んだとき髪の毛抜かれちまうぞ?」


「だからあれは金が無いアピールだっての!」


そう言いながら2人は笑い飛ばした。




「あ~、やっぱ酒だね~。干し柿と違ってタンの毒にならないし」


そう言いながら酒を呑む石田三成を見つめる者がいた。


黒田長政だった。


「今、右手でグラスを持ったな?」


「おっ、おう…」


突然そう聞かれて一瞬焦った三成。


「その時左手は何をしていた?」


「腰に当ててたが…?」


「風呂上がりの牛乳か!」


…長政、すでに酔ってる。


三成は関わりたくないと思った。


「今の質問、長政じゃくてあんたの親父の…」


「いいのいいの!細かいこと気にすると襲撃されるぞ?」


「いや、俺さ…。細かい気遣いで出世したんだけど…。三杯のお茶とか…。お前も気遣いが無いと家臣と喧嘩するぞ?終いには離反されるぞ?」


「うるさいな…」


それ以降長政はばつが悪そうに食事をつまんでいた。




「えっと…?単品で頼むよりセットの方が20円安いのか…?」


机の端でひたすら計算をするのは前田利家。


伝票が恋人状態である。


「こんなとこでも金の計算とは…。さすが倹約家!」


賞賛を送るのは松永久秀。


「いやぁ、節約したいじゃん?」


「わかる!俺も金使いたくないし…。おっ!この使用済みの割り箸。持って帰って城の材料にしよう」


「え…」


利家は満面の笑みで使用済みの割り箸を見つめる久秀にかける言葉が見つからなかった。


「さすがにそれはやりすぎでは…?」


「金はいくらあっても困らないからいいんだ」


「そう?でも有事のとき節約のし過ぎで家臣がいなかったらどうするよ?」


「金に槍でも持たせて戦わせればいいよ」


この返事に何となくイラッときた利家だった。



「このグラスも貰っちゃおうかな」


久秀は店のグラスを鞄にしまおうとした。


「待て!それは盗みだぞ?見つかったら怒られるぞ!」


「そん時はこの店を焼き討って、燃え盛る店の中でこのグラスと一緒に爆死しよう」


「そのグラスはお前にとって何なんだよ!?」


「平蜘蛛…かな?」


…店員さん。

こいつにグラス盗まれたって理由で警察の目の前で斬っちゃってよ。

きっと謹慎処分で済むから…。


利家は心の中でそう呟いていた。



「ではでは、これにて新年会をおひらきにしたいと思います。みなさん一本締めで終わりましょう。では」


ひとしきり飲み食いしたあと、日の出を迎えた頃、信長が席から立ち上がりそう言った。


信長の掛け声にあわせて一同は手を広げた。


そして…。


「よぉーーお!」


パンッ!


一回見事に響いた乾いた拍手の音。


「今年も宜しくお願いします!」


そんな言葉が飛び交う中、新年会はおひらきとなった。

新年は無礼講で!という意味を込めて。


わいわいがやがや行きましょう!


史実、いくつわかったでしょうか…?



とにかく!

今年もよろしくお願いします!

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