歴史絵巻第十二幕Let's Go史跡巡り~京都修学旅行・二日目編~
やっとこさ二日目です。
因みにピークは3日目です。
今回も一応戦国ネタは入ってますよ。
東大寺、平城宮跡、それから薬師寺。
分かる人には分かる、戦国の気配。
東大寺…。
朝6時。
最近流行りの曲がホテルの一室に響いた。
どんなに辛くても諦めないで欲しい、といった歌詞なのだが、まさに今その歌詞が刺さる。
眠い。
起きるのが辛い…。
起きるのを諦めたい…。
「起きろー!」
目覚ましをかけた主…すみれの声が頭に刺さる。
「私は起きてるわよ?」
楓が布団からヒョコっと顔を出した。
「う~…。まだ朝じゃないよ…」
晴美はまだまだ寝足りないといった様子。
完全に頭までスッポリ布団を被ってしまった。
窓の外も見ず、朝であることを否定して。
「朝だよ!起きてよ晴美!東大寺よ!」
すみれの「東大寺」という単語に反応した晴美は、すぐに起きて制服に着替え始めた。
「晴美…着替えんの早い…」
「東大寺だからな!」
楓は感心したように晴美を見ていた。
朝ご飯を食べ点呼を取り、いよいよ班行動。
まず目指すは東大寺!
興福寺の境内を横切りながら、東大寺を目指した。
「この興福寺ってのは、果心居士が修行した寺なんよ。昔は一つの勢力として栄えたんだ」
晴美の説明に疑問符を浮かべる二人。
「誰よ果心居士…」
「そもそも日本人?」
すみれと楓がきいた。
「日本人だよ。坊さん。松永久秀を怖がらせた唯一の人物だな」
「よっぽど怖い顔してたのね…」
「いや、楓。雷親父だったのかもよ?」
「どっちが正解よ晴美?」
楓がきいた。
晴美は首を横に振る。
「果心居士は幻術が使えたんだ。で、死んだ久秀の奥さんを見せたんだ」
「なら楓にもできるじゃない!」
すみれが楓を見る。
「いや…まぁできるけどさ…そんなにハッキリ見えるわけではないわよ」
話しながら歩いていると、東大寺に到着した。
土産物屋を横目に見ながら東大寺の境内を目指す。
所々にあるのが鹿せんべい売り場。
せっかくなので3人も買ってみた。
「これの材料って新聞紙でしょ?よくそんなの食べるわよね…」
「え?新聞紙?」
すみれの言葉に晴美の手が止まる。
手は止まったが鹿はためらい無く食いついた。
「すみれ…どこで聞いたか知らないけど、それガセネタよ。鹿せんべいの材料は米ぬかが主だから、人も食べれるわ。美味しくないけどね」
「ホントだ…美味しくない…」
既にすみれは口にしていた。
「なんか、出来損ないのモナカ…?」
「聞かれても分かんないって…」
晴美は呆れ気味に言い返した。
東大寺大仏殿。
奈良の大仏の前。
「わぁ~。相変わらずデカいわね~」
大仏を見上げたすみれが呟いた。
「クラスの里田君に似てない!?」
地味に失礼なことを言う楓。
「この大仏、作ったら都が壊滅したんだ」
晴美は史実を語る。
それを残りの二人が聞く。
「大仏を作るとき、金、銀、銅の他にも、水銀を使ったんだ。そしたら、水銀の蒸気が季節風に乗って都に届いたんだよ」
「異常気象や疫病の沈静化を願って建てた大仏が、逆効果だったのね…」
「すみれ…意外と知ってるのね」
「習ったからねー」
えへへと笑うすみれ。
後ろ手にパンフレットを持っていたことを誰も知らない。
さて、大仏の正面から少し歩いたところに、人1人がやっと通れるくらいの穴が空いている柱を見つけた。
楓曰わく、くぐれば良いことがあるよーって穴。
「じゃああの穴通ってみっか!」
そう言って穴に近づいていくすみれ。
「待ってすみれ!」
晴美が止めた。
不思議そうな顔をするすみれ。
「私たち、今制服…」
「うん…?え?」
はぁ…と溜め息を吐く楓。
「スカートでしょ…」
「あ」
東大寺と言えば大仏で有名だが、戦国ファンからすれば古戦場のひとつだったりする。
晴美がそのことを知らないわけが無く…。
説明し出したら止まらない。
「ここは戦国時代に戦場になったんだよ。三好三人衆と松永久秀の戦いな。その時に、松永の三悪行の一つ、東大寺大仏殿焼き討ちをしたんだ」
東大寺の柱をペチペチ叩きながら言った。
「他の二つの悪行は?」
楓が聞いた。
「将軍殺しと主君暗殺」
「うわっ!悪!」
すみれが声を上げた。
「一応、松永を庇うと…。将軍暗殺には消極的だった説があるぞ。東大寺大仏殿焼き討ちも、焼き討ったんじゃなくて戦闘中の事故だった説も…」
「でも悪い奴だ!」
「いやまぁそうなんだけどさ…」
一通り大仏の周りを歩き、東大寺を出た。
次の目的地は平城宮跡。
平安遷都1300年とかで盛り上がった本拠地となる場所。
電車に乗ってしばし移動。
電車内から見えた平城宮跡は、非常にだだっ広かった。
電車から降りて会場に行くと、さらに広く感じる。
何も無い広場が永遠と続いているのだ。
一応、再建された門がある。
そこから一直線に、メインの建物まで道が延びているのだが、途中には電車が通っちゃっている。
せんと君がいる訳でも、マント君がいる訳でもない。
あるのは顔出し看板くらいか。
「何にもないね…」
すみれが苦笑混じりに呟いた。
「取りあえず、あの建物まで行ってみよう」
楓が指差した建物がメインである。
広場の中に堂々構える、綺麗な朱色がはえる建物。
綺麗過ぎて最近建てたものと思われる。
3人はその中へ入って行った。
中は色々な展示物があった。
出土した瓦や、天皇のいた部屋を再現したものなど。
ここで初めて知った。
この建物、天皇がいた建物なんだ!
そこだけ見て撤退した。
「次はどこ?」
「薬師寺。東塔が工事するんだって」
楓の問いに晴美が答えた。
「工事ねー…。大変ねー」
人事のようにすみれが言った。
「お腹空いちゃった」
「あ、私もー」
「わたしもー」
楓に二人も同意したところで、到着した薬師寺への最寄り駅。
降りてすぐにあった店に入る。
ちょっと小さめな飲食店。
旅先での全国チェーン店の利用はなるべく避けたい。
店の奥の方にある席に座り、メニューを見る。
「柿の葉寿司…?」
すみれが見慣れないメニューにクエスチョンマークを浮かべた。
「柿の葉寿司っていうのはね、鮭を柿の葉で包んだ寿司よ。奈良の名物なの」
楓が説明した。
楓が奈良の名物について調べてたことを思い出した晴美だった。
満場一致で柿の葉寿司を食べ終えた後、いよいよ薬師寺へ。
入ってすぐに東塔が出迎えてくれた。
西塔と比べると明らかに年期が違う。
西塔が再建なのに対し、こちらは昔からあるもの。
それも国宝。
「この薬師寺は天武天皇が建てたんだ。因みに、東塔の工事は2018年までの予定なんだって」
晴美が説明した。
因みに、晴美の持てる知識はここまで。
「じゃあすみれは工事が終わった後の東塔は見れないね!」
「あはは~、何言ってんだよ!」
楓をすみれが叩いた。
「だって、すみれもう直ぐ寿命だし~」
「まだ高校生だぜ!?…マジか!?」
「ウソよ」
「焦った~。霊的な何かが楓には見えてるのかと…。冗談に聞こえないよー…」
「あはは!」
「わ、笑うな!」
そんな感じで薬師寺も見終え、3人は本日のホテルがある京都へと向かった。
京都駅。
日本一長いホームがあるこの駅のすぐ近く。
「新都ホテル」が今日の宿。
しかし、まだ時間が余ってるので、駅の中を散策。
すると…。
「おっ!あれは551蓬莱!」
珍しく楓がはしゃぐ。
「何じゃ?ホーライ?ゴーゴーイチ?」
「何の店だ?」
すみれに続き晴美も聞いた。
「関東だと見ないけど、関西圏だと有名な豚まんの店よ。氏子さんが前にお土産でくれて美味しかった!」
そんなわけで買ってみた。
具も美味いが生地の方にも甘みがあり美味しかった。
腕時計を見るともうチェックイン受け付け時刻となっていた。
ホテルに入り、全体での夕食。
そのあとはやはり個室での風呂。
「さて、明日が山だ!」
ベッドに横になりながらしおりを眺めていた晴美が唐突に言った。
「明日はどこに?」
楓が聞いた。
予定を把握してるのが晴美一人なので、二人はいちいち晴美に聞くのだ。
「明日は方広寺、豊国神社、耳塚、六条河原、鈴虫寺、大阪城」
とんでもない歴史押し。
晴美としては二条城や三十三間堂やら天王山やら、京都戦国巡りをやりたかったくらいなのだ。
しかし時間の関係で泣く泣くカットした。
「明日は晴美の本業発揮なのね!」
「まぁね!楓、明日は降霊術を披露してもらうよ!」
「わかったわ」
そういって、今日は少し早く寝たのだった。
新都ホテル…懐かしいですね~。
551蓬莱の豚まんはとにかく美味いです。
本店は大阪らしいですけど…。
京都にもありました。
因みに、私が修学旅行で行った年は平安遷都1300年の年でした。
詳しくは小説「修学旅行~京都・奈良~」を見てください。
それを基に書いてみました。