百二十九番槍 さよなら…
「絆」を書いてみようと思ったんですが、感動要素0になりました。
いやはや申し訳ないです…。
前から書きたかった逸話なんですよ、これ。
徳川家康は会津の上杉景勝を討伐すべく、出兵することとなった。
しかし、この出兵。
真の目的は上杉討伐ではなく、石田三成の挙兵を誘発するためのものだった。
しかし、ただ誘発しただけでは時間が足りない。
そこで、家康は古くからの家臣である鳥居元忠に、伏見城の守備を任せ、時間を稼ぐこととなった。
元忠は司令を受けた瞬間に理解していた。
これは、死して当然の仕事だと…。
「元忠…。お前にしか任せられないんだ!どうか、頼みたい…!」
家康は、元忠に懇願した。
「近くに味方は無し。三成の攻撃は防ぎようが無いです。なら、伏見城を守るのは私一人で十分です。…会津に!会津に少しでも兵を回してください!」
元忠の目に、迷いは無かった。
「元忠…。お互い、幼いころはやんちゃをしたもんだな」
「はは。そうでしたね。私は、ずっと殿のお側についてました。…結構大変でしたよ」
「……懐かしいなぁ。元忠…」
いつしか家康の目には涙が輝いていた。
元忠も家康も、これがお互い最後の夜になることをわかっていた。
それ故の涙だった。
「…ふっ。私なんかが死ぬことを気にするなんて、殿は年を取って弱気になったんじゃないですか?」
「……年を取ると、涙もろくなるんだよ…」
夜更けまで語り合った二人は最後に杯を交わした。
そして、家康の上杉討伐。
狙い通り、三成が挙兵した。
伏見城はあっという間に取り囲まれた。
敵がなだれ込んできても、士気が下がることはなかった。
「良いか!名誉などのためでなく、一分一秒でも長く敵を足止めするのだ!殿の領地に危険を及ぼすなよ!例え雑兵にやられても恥じではないぞ!」
元忠は、そう叫びながら戦った。
しかし、多勢に無勢では打つ手が無い。
激戦の末力尽きた元忠は、ついに自刃したのだった。
元忠や家臣が切腹した時の血、養源院に行けば見れますよ?
天井にね…うん。
他にも正伝院なんかにもありますよ。
幼いころの話をして無く家康。
あやつも人の子なんだねぇ…。