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十二の太刀 真・本能寺の変~光秀のクーデター~

鬨拓

「何故あれを書き直した~!?」


晴美

「いつだかの、作者の初作品か…」


由佳

「リメイクっていうより完全に別の作品になりましたね」


乙葉

「もう原型留めてませんからね…」

「さあ、連歌会を開くぞ!皆の者!愛宕山あたごやまに集え!」


1582年5月29日。


織田信長の家臣である明智光秀は、京の愛宕山で連歌会を催した。


主催者たる光秀が、連歌会の幕開けを告げる一句を読む。


深く息を吸い、強い決意のもと詠まれた一句は…。


「ときは今 あめが下知る 五月かな」


見事な主君の一句に続けと、家臣たちも連歌を繋いだのだった。



さて、連歌会も大好評の末に無事終了。


光秀は愛宕山山頂にある愛宕神社でおみくじを引いた。


一回目、凶。

二回目、凶。

三回目、凶。


まさかの3連続凶。


予想外の結果に、一抹の不安を隠せない光秀であった。


「…本能寺の堀の深さはどのくらいだろうか?」


ボソッと内心を露わにした主君に対し、家臣は?マークを頭に浮かべるのだった。



連歌会から遅れること3日。

月も変わって6月1日。


光秀は主君である信長から命を受けたために、亀山城から出陣した。


命令の内容は「毛利を攻めている木下藤吉郎の援護に向かえ」であった。


予定通り、光秀は出陣した。

しかし、途中の休憩で光秀はついに秘めた胸の内を明かした。


ごく僅かな、絶対的信頼を置いている家臣を召集。


秘密裏に行われた軍議で、家臣たちは思わず言葉を失うこととなった。


それほどまでに光秀の計画は信じられないものだったのだ。


「これから、進軍先を変える」


そんな言葉で始まった、光秀の告白。


固唾を飲んで次の言葉を待つ家臣たち。


「目的地は藤吉郎の待つ高松城ではない。信長の待つ本能寺だ!」


衝撃的な内容だった。


家臣たちも、光秀の本気を感じ取ったのか皆反対はしなかった。


いや、正確に言うと反対しても意味がないことを察したのだ。


「光秀様…。本気、なのですね…」


家臣がそっと呟いた。


それに対し光秀は、これ以上ないくらいに力をはらませた眼を家臣に向けた。


「本気だ」


それだけ呟いて、黙った。


もはや誰にも光秀様を止められやしない。


その事実を、全て悟った。



進軍途中の休憩で和やかムードだった軍の先頭に立った光秀は、深く、大きく息を吸った。


左胸の鼓動を抑えるがごとく吸った空気を、声に変えて放出させた。


「敵は本能寺にあり!我らはこれより本能寺に向かう!」


光秀の率いる軍は、本来の進路を逸れ本能寺へと続く野望の道へと歩み出した。



夜中ともあり、京の町中は静かなものだった。


当然それは本能寺も例外に漏れず。


寝静まった本能寺、主殿前。


南側は斎藤利光が、北側は明智秀満が、それぞれ主殿を取り囲む。


ただならぬ気配に飛び起きた信長。


「な、なんだ!?家臣共の喧嘩か?」


驚き起きた信長は側近の森蘭丸に状況を聞く。


「…信長様。…本能寺が、明智光秀に包囲されました」


「何だと…?あの金柑頭が…?うつけがー!」


信長は鎧を身に纏う時間も無く、寝ていた時の姿で光秀の軍勢の前に打って出た。


実は、この時に初めて自分の相手が信長だと知った明智軍兵士は少なくない。


しかし、今更引き返せる訳も無く。


「かかれ!」


光秀の一言で戦闘が始まった。


槍で向かってくる敵兵に対し、信長は弓で対抗。


しかし、不運は重なるものである。


信長の弓は3発矢を放った所で壊れた。


「ちっ…!次っ!」


信長は弓を捨て、槍に持ち替えた。


見事な槍捌きで光秀軍を翻弄した。


しかし、多勢に無勢。


数が違いすぎたのだ。


明智軍の安田作兵衛に槍で突かれてしまい、いよいよ槍すら使用不可能な体となった。


「…お蘭!本能寺に火を放て!この首、奴らに取らせるなよ!」


「…御意!」


それが、蘭丸が聞いた最後の言葉となった。


蘭丸は信長の首を守るため必至の抵抗を見せるも、寺に火が回るのを見届けて討ち死にした。



「人間五十年。下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。一度生をうけ、滅っせぬものの、あるべきか…。是非も無し」


燃え盛る寺。


その中でたった一人で呟いた最期の言葉。


ここに信長の49年の人生は夢幻の如く滅した。


「これで…良かったんだ。これで、天下人!」


真っ赤に燃え上がる寺を目の前に、光秀は喜びだけではない複雑な感情を抱いていた。


一時間足らずで灰となった主君を倒したことで、光秀は事実上の天下人となった。



「さて、総仕上げだ!」


再び眼に力を込めた光秀は、その足で二条城へと向かった。


そしてすぐさま城を包囲。


今度は鉄砲の名手らしく、火縄銃による集中攻撃にさらした。


城の中に居たのは信長の嫡男であった織田信忠。

雨あられのように降り注ぐ鉛の弾幕を前に、信忠は必死に太刀打ちした。


押し寄せる敵に自ら刀を抜き果敢に挑み討ち取った。


しかし、やはり多勢に無勢ではどうしようもなく。


「もはやこれまでだ。よいか!我が亡骸は敵に渡すな!隠し通せ!」


信忠はそう言い残して信長の跡を追った。


光秀は隠された信忠の首を見つけることはできなかった。



嫡男も討ち取り、これから光秀の世が始まる。


そう思った矢先だった。


藤吉郎が思いもよらぬ進軍速度で中国から帰って来たのだ。


兵も整わぬうちに天王山の麓で藤吉郎との戦が始まった。


木下軍の銃撃が、天王山から容赦なく放たれる。


光秀は敗北し、11日間のみ見た夢から覚めた。


敗れた光秀は、小栗栖を敗走していた。


すると…。


「明智光秀!貴様を討ち取って恩賞をいただくぜ!」


突然現れた武装農民。


手には竹槍。


疲れ切っていた光秀は、この程度の落ち武者狩りにも互角にすら立ち合うことができず、ついに…。


「光秀、討ち取ったり!」


胴体を貫かれた光秀は、死に場所を選び歩いた。


そして…。


「心しらぬ 人は何とも 言わば言え 身をも惜しまじ 名をも惜しまじ」


私の心を知らない人間は何とでも言ってくれ。私は名もこの体も特に惜しくはない。


1582年6月14日。


57歳で生涯を終えたのだった。


それは、本能寺で信長が尽きた11日後のことだった。



いつぞやの作品をリメイクしてみました。


というか加筆修正…?


いや、フル改造ですね。



書いてて思うわけですよ。


「あ、私昔と何も変わってない…」




そしてとてもどうでもいいですが、連載開始からもう半年過ぎてたんですね。


知らなかった…。

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