百二十六番槍 試し斬りしよう!
時間が欲しい…。
明日数学のテストです。
部分分数分解の「b」の多さが異常…。
ある日のこと。
「おめーがやったことは分かってんだ!」
「俺はそんなことしてねぇ!」
真田信之は、家臣が農民を逮捕している現場にたまたま居合わせた。
「何してるんだ?」
信之は家臣に尋ねた。
「信之様!こいつは罪を犯した。だから捕まえたんです」
「俺は何もしてないって!」
やったやらないの一点張りで、埒があかない。
信之は、その農民を城に連れて行き、自ら取り調べた。
その結果…。
「なんだ、お前ホントに何もしてないんじゃん」
「いやだから罪なんて犯してませんって!」
農民は無実だったのだ。
「さてはあいつ、手柄を立てるために無実の罪を着せたな…」
信之は怒り、その家臣を呼びつけ木に縛り付けた。
そして、刀を手にして言った。
「この刀…斬れるのかなぁ…?よし!明日試し斬りをしよう!」
この一言で家臣の顔は一気に青ざめた。
さて、翌日。
家臣の前に立ち、刀を振り上げた信之。
もうダメだ。
死ぬる!
家臣が死を覚悟したその時だった。
「お待ちくだされ!」
すんでの所で止めに入った者がいた。
振り返った先に立っていたのは、真田家の菩提寺、長国寺の住職であった。
「いくら罪があるからといって、殺生は良くないですぞ。ここはどうか見逃してやってくだされ!」
信之は少し考え…。
「住職が言うなら仕方ないですね~」
そう言って家臣の縄をほどき、今まで通り雇った。
「では、もういいですかな?」
「うん。ありがとね、住職さん」
信之が住職に礼を言うと、すぐに寺へ帰って行った。
今回、住職が来たのは信之が呼んだからであった。
全ては家臣を反省させるための芝居だった。
信之らしい優しさ溢れる逸話でした。
いや、優しいでしょ…。
他の人なら間違いなく斬ったはずですから。
まぁ、トラウマにはなったでしょうけど。