十の太刀 常識破りの真史実 上
二十三番槍に挿し絵を追加しました。
今回の絵は初登場!自然消滅様からいただきました!
ありがとうございます。
もう一人、協力していただいておりますが、ウイルス性胃腸炎にかかったとか何とかで…。
ただ、その方の妹さんも挿し絵を描いてくれたみたいで。
「男の娘描いた!」だそうな。
えっ…?
ダイジョウブカナ~…。
そして、明日から大学生です。
不安過ぎます…。
とある高校の社会科資料室。
今日も2人の生徒が歴史研究部の活動中。
二年生の焙烙晴美と、一年生の村上乙葉である。
今日は、2人が調べ上げた成果を発表していた。
「では乙葉。発表の前に一つ聞く」
黒板の前に立つ晴美が、教卓のすぐ前、中央の席に座る乙葉に聞いた。
「比叡山延暦寺、戦国、信長。このキーワードで思いつく言葉は?」
得意気な顔で、ズビシィッ!っと乙葉を指差した晴美。
多分、特に意味は無い行動。
「えと…。焼き討ち…ですか?」
「そうだよな!」
確かに、織田信長による比叡山延暦寺焼き討ちは有名である。
「それを聞いて安心した。では、私の研究成果を発表するぞ」
そう言うと、教卓に手をついて喋り始めた。
因みに、発表と言っても、ただ取り入れた知識を披露するだけ。
本格的なものではない。
「まず、比叡山延暦寺についてだな。ただの寺ではなかったんだぞ」
そう言って説明に入った。
「延暦寺は、天台宗の総本山なんだ。ただの寺じゃないってのは、軍事力を持ってたから。国一つに匹敵する軍事力をだ。それにプラスして宗教の本拠地、言わば聖地だった。だから強かったんだ。朝廷ですら口出し出来ないくらいにね」
「そうなんですか!」
晴美の説明に、感心したような声をあげる乙葉。
「んで、焼き討ちなんだけど、この寺は反信長勢力の集まりだったからね。それを排除すべく信長は攻めたのだ」
「寺を焼くなんて凄いですよね!」
「うん。周りからは反対されたみたいよ。『前代未聞だ!』って。まぁ、当の信長は『あれは寺じゃない。城だ!あれが滅びるのは自業自得だ!』とか言ったらしいけど…」
苦笑いしながら説明を続ける晴美。
「実は、焼き討つ前年に信長は延暦寺に手紙書いてるんだよ。内容は『降伏しろ。さもなくば燃やす』だな」
「怖っ!」
乙葉は思わず突っ込んだ。
晴美の説明は続く。
「さて焼き討ち当時。比叡山全てが灰になるくらい、徹底的に焼き払ったらしい。燃え残りが無いようにね。女子供関係なく撫で斬りしたみたいよ。これで、神仏すら恐れない男!っていう信長のイメージが定着したってわけさ」
笑顔で恐ろしいことを言う晴美。
晴美の発表終了。
かと思ったら…。
「これが通説ね!」
気を抜いた乙葉だったが、晴美の言葉にまた背筋が伸びる。
「通説…ってことは?」
「うん。実は新説があってね」
少し間を開けて。
晴美はまた話しだした。
「比叡山の調査が行われたことがあってね。そのときの結果だと信長時代の焼き討ち跡が出なかったんだ」
「えっ…?」
キョトンとする乙葉。
「比叡山延暦寺は、信長より前にも焼き討ちされてるんだ。1434年と、1499年。因みに、信長が焼き討ったのは1571年ね。だから、前代未聞でもなんでもなかったんだ」
「で…。跡が出なかったっていうのは…?」
先を急かす乙葉。
「その二回の焼き討ち跡は発掘されたんだけど、信長時代のは発掘されなかったんだ。つまり…」
「比叡山延暦寺焼き討ちはウソだった…?」
晴美の言葉を遮るように乙葉が言った。
「ん~…。ちょっとは建物が焼けたりはしたかも知れないけど、山全部とかはウソだな。少なくとも、焼き討ちって言葉から連想されるような業火ではなかったみたいだな。そもそも、二回も焼き討ちされた寺だったら、本当に焼き討ちすべき重要な建物は残ってないのが普通だしな」
「あ、そうですよね…。信長の代名詞が消えた感じがします…」
残念そうな乙葉。
そんな姿を見て晴美が言った。
「書物が全て正しいとは限らないからな。特にあの時代は敵は不利に書くし、自分の殿はヒーローとして書きたがるからな!」
そう言いながら、教壇を降りた。
「次は乙葉の番な!交代!」
「はいっ!」
乙葉は晴美と入れ替わるように教壇へ上り、黒板の前に立った。
晴美は乙葉が座っていた席についたのだった。
中途半端な終わり方しましたが、それは明日続き書こうかと思ったからです。
…どういうことでしょうね?
焼き討ちの跡が出てないって…。
まさかの焼き討ちはウソでしたってことなんでしょうか。
だとすると、本当に信長の代名詞が一つ消えちゃいますよ…。
因みに、明日の乙葉の発表内容は「関ヶ原の戦い」を予定してます。