九十七番槍 エリーゼ事件
ケータイ版のお話ですが、小説のタイトル文字の色を紅白にしてみました。
特に意味はありませんが、なんとなくおめでたいっぽくないでしょうか?
ないですね。
今回は戦国時代を出まして、明治時代。
森鴎外の逸話です。
「林太郎さん!お久しぶりです、ごきげんよう!」
「はっ!?あわわわわ…えっ!?ちょっ…?何で!?」
突然現れた少女に、物凄く慌てるこの青年。
森林太郎。後に森鴎外として有名になる、25歳の新人小説家である。
そして、林太郎の目の前にいる可愛らしいドイツ人の少女は、エリーゼ・ヴィーゲルト。
16歳の女学生。
林太郎が慌てるのも無理は無い。
このエリーゼ、林太郎がドイツに留学したときに付き合っていた彼女である。
その彼女が、今日本に来ている。
何故…?エリーゼとは現地で別れたはずなのに…。なんで…?
「もぉ~。林太郎さん、帰っちゃうんだもん~。私、林太郎さんが帰ったあとすぐにドイツを飛び出してきちゃった!エヘッ!」
「…時間かかったでしょ?」
「うんっ!船で2カ月くらいよ!でも、林太郎さんのことを思えばそのくらい!」
自分のことを真剣に好いてくれているからこそ、ドイツから日本に来てくれた。
普通なら喜ばしいこと。
しかし、林太郎には喜べない理由があった。
「林太郎さん!結婚しましょ!」
「それなんだけどさぁ…」
「ほぇ?」
喜べない理由。
それは、エリーゼが言うこの結婚にある。
「親父が…海軍の中佐の娘と俺の結婚勝手に決めちゃって…」
「えぇ~っ!そ、そんなぁ~…」
「…だから、帰ってくれ」
「…うぅ~…。グスン…」
わずか一カ月。
エリーゼは日本に滞在したのち、陸軍からの援助金を受けて帰国した。
エリーゼとは、その後も文通でやり取りした林太郎であった。
このエリーゼ。
森鴎外の小説「舞姫」でエリスという女性が出てくるのですが、そのモチーフとなった方です。
「舞姫」では、妊娠して発狂して終わったエリスですが(気になる方は読んでみてください!)、史実では妊娠はしていなかったようですね。
…16歳ですし。
さて、海軍中佐の娘、登志子と結婚した鴎外でしたが、その奥さんとは長くは続かず1年で破局したみたいっすね。
で、二回目の結婚。
相手は志け。
この2人の妻との間に5人子供がいます。
長男・於菟。
次男・不律。
三男・類。
長女・茉莉。
次女・杏奴。
どことなく外国っぽいでしょ?
未練たらたらな鴎外です。
まぁ、文通してたんですから、生涯忘れることが出来ない女性だったんですね。
一年で破局するならエリスと結婚すればよかったのに…。