第13話
少し区切りで短めで。
「はい。仙波です」
仙波は咥えていた煙草をアルミの灰皿の上でもみ消すと携帯電話を耳にあてた。
「松苗です。お疲れ様です」
松苗にしても秋山にしても、もともと約束があったか緊急の用事があるか以外に電話をかけてくることはない。今こうやって電話が繋がっているということは何か急用が発生したか、あるいは自分と同じメールがきているのかも知れないと仙波は予測した。
「浅海原音香さんからメールがありました」
松苗が言った。
「そう、内容は?」
松苗は仙波がもう少し驚くことを予想していたので、なんとなく拍子抜けした感じがした。でも、もしかしたら、同じようなメールを受け取っていて、すでに知っているのかも知れないと考え直す。
「明日、みんなで会いに来てほしい、だそうです」
「え?」
仙波は予測していた内容と違うことに驚いて声を出した。
「詳しくは、メールで転送しておきますので確認してください」
「ああ。分かった」
「どうして呼ばれたのでしょう」
「さあ、用事があるからじゃないかな」
仙波がとぼけた口調で言う。
「仙波さんにはきていないんですか」
少しの間。
「いや、おそらく君に来たのとは違う内容のものが一通」
「転送しようか?」
仙波が言う。
「やめておいてください。意味深なメールを見るとプレッシャー感じちゃうので。………必要なら見ますけど……」
「まあ、特に見る必要は無いね」
「じゃあ、いりません。このメールが来ただけでも、おなかいっぱいです」
「分かった。君から転送されてくるメールに目を通したら、秋山君には僕から伝えておくよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
電話を切ってまもなくすると、仙波のメールボックスに松苗から転送のメールが届いた。
仙波はそのメールに軽く目を通すと、新しい煙草に火を点けた。彼に送られてきたメールとほぼ同じ時間帯に送信されたものだ。どういう意図であれ、浅海原音香とじっくり話ができるのは悪くない。いろいろ聞いてみたいこともある。
仙波は、もう一度、二つのメールに目を通すと秋山の携帯電話をコールした。