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第11話

今日は後もう一話投稿します。

 秋山は部屋に戻ったあと、しばらくの間、ベッドに寝転がって天井を見つめていた。

眠ろうと考えていたが、疲れていないときは簡単には眠れない。今日は何もやることがなさそうだ。何もすることがないというのは苦痛なことだと実感する。

ここには、テレビやラジオなどがない。飲食店でもそういったものを見かけなかった。きっと、ここにいる人間は、そういうものに興味はないのだろう。テレビやラジオは受身の媒体だから、技術者向けではないと仙波が言っていたことを思い出す。だが、持て余した時間の経過を早める効果はある。それだけでも置いておく価値はあるのではないかと思う。

 端末の電源を投入する。

今朝の仙波の話では、全ての外部アクセス経路が絶たれているということだった。当然ながらインターネットもその中に含まれる。

一日一度は接続する習慣が出来てしまうと接続できない状態に耐えられなくなる。煙草を止めようと思ったときの気持ちに似ている。繋がらないと思いながらもURLを入力する。

―――しかし、あっけないくらい簡単にそのページは表示された。


ブルー∧待っています。


そしてまた今回も真っ白なページに一言だけ記述されている。


ユウ∧こんばんは。


 回線が復旧したのだろうか。

こうして接続ができているわけだから、恐らくそういうことだろう。それならそれで連絡くらいくれれば良いのにと思う。

秋山はしばらくの間、画面を見つめていた。

レスポンスが遅い気がする。いつもならば、すでに会話が始まっているころだ。

(まだ、時間が早いからな。)

当然、常に彼女はパソコンの前で待っているわけではないだろう。ちょっとくらい席を外すこともあるだろう。きっとタイミングが悪かったのだ。

『また来ます』とキーボードを叩いて送信しようとした時、画面に一行追加された。


ブルー∧こんばんは。


お決まりの挨拶。会話がスタートする合図だ。


ユウ∧今日は遅かったね。

ブルー∧時には、そう言うこともあるかも知れません。

ユウ∧まあ、それはそうだ。

ブルー∧貴方はいつもの時間よりも早いですね。

ユウ∧うん、仕事の方でトラブルがあってね。

ブルー∧トラブルの発生と仕事が早く完了するというのは、相反する事象ではありませんか?。

ユウ∧いや、予定していた仕事が出来なくなった。

ブルー∧そういうことですか。理解いたしました。

ユウ∧ところで、ちょっと質問。


秋山は、そこで一度区切って送信すると急ぎ足で冷蔵庫まで行き、缶ビールを手にして戻ってきた。酒類まで用意されているなんて、本当に恵まれた環境だ。


ユウ∧もし、インターネットが無くなってしまったらどうする?


入力し終わると缶ビールを開て、まず一口飲んだ。ほろ苦い味が口の中に広がる。

今日、インターネットに接続できない状況になって、その必要性を痛感した。嗜好品ではあるが、生活のリズムに組み込まれ不可欠となっていることに気が付いた。ブルーがどのように感じるかは分からないが、話題としては悪くは無いだろう。


ブルー∧面白い質問ですね。

ユウ∧そう?

ブルー∧ええ。

ユウ∧で、どうする?

ブルー∧インターネットが消滅する事態になったら、人間はおろか生命の歴史が終息を迎えるでしょう。その時にできることは何もありません。

ユウ∧それはいくらなんでも………


 いくらなんでも、それは無いだろう。何がどう繋がれば生命が滅ぶと言うのだ。


ブルー∧あり得ない、と考えますか?

ユウ∧あり得ない。インターネットが完成してからの時間なんて地球の歴史からすれば、ほんの一瞬の出来事だ。そんな一瞬の間に構築されたシステムが無くなったからといって生命には何の影響も無いと思う。

ブルー∧時間に一定の長さなんて存在しません。過去の出来事を思い出してください。貴方が何歳の時の記憶であろうとも、思考は一瞬でたどり着くことが出来ますね。

ユウ∧まあ、それはそうだけど。

ブルー∧時間の概念なんてそんなものではないでしょうか。こういったチャットも同じですね。時間の経過速度というのは、単なる認識の問題に過ぎません。


ブルーの話は、秋山の考える能力の常に上を跳躍する。

確かにチャットの中では場所や時間設定を無視することも可能だ。


ユウ∧じゃあ、まあ、時間の長さは置いておいて、それでも生命の歴史が終わるっていうのは大げさじゃないのかな?。


 インターネットが無くなったくらいじゃ生命どころか人間の存続に影響を与えることすらないだろう。


ブルー∧インターネットの消滅はありえないことなのです。ありえないことが起きてしまった時には全てが破綻してしまうでしょう。

ユウ∧そんな事言っても、いつかは無くなると思うよ。また新しい仕組みができて、いずれ消えていくと思うんだよね。まあ、それがいつかは分からないけど。

ブルー∧全ての事象はある一定の方向に動いています。必要な物事が消えてしまうことはありません。

ユウ∧それとインターネットの関連がよく分からない。

ブルー∧全てが必要な事柄だと認識できれば、自ずと理解できるようになるでしょう。


会話がかみ合っていない。そう思える。


ユウ∧やっぱり、よく分からない。

ブルー∧いずれ分かるときがくると思います。


 秋山は、予想外の方向に流れた会話が記述されたディスプレイを見つめたまま、考え込んだ。


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