第3章-8
キフル
「辛い?ふふふ」
「まだよ、まだ殺してあげないわ」
キフルは嬉々として話す
キフル
「せっかくこんなにかわいい子を捕まえたんですもの」
「最高の痛みの中で、絶望しながら死んでちょうだい!」
テンションを隠し切れないキフル
アスナ
「・・・」
目を伏せる
アスナ
「ふふっ」
キフル
「!?」
「何がおかしいのかしら?」
アスナ
「最高の痛みって、何のことかしら?」
ーーー
シキを失った日を回想するアスナ。
シキの背中に斧が振り下ろされる瞬間が鮮明に脳裏に映る。
ーーー
アスナ
「ふざけるのもたいがいにしてくれる?」
「本当の痛みなんて・・・」
アスナ
「味わったことないでしょう?」
ズンッっという重い空気が空間を覆う
静かな、しかし確かな殺意がこもった目にキフルがたじろぐ
ブルッとキフルの肌が揺れる
キフル
(この子・・・!)
ーーー
キフル
「・・・」
「ふふっ」
「まあいいわ」
「どうせあなたはー」
アスナを蹴とばす
アスナ
「ぐっっ!!」
キフル
「こうやっていじめられることしかできないんだもの!」
その刹那、アスナは炎弾をまた2発放つ
しかし、また大きく外れる
キフル
「あなたも懲りないわねえ」
さらに2発、今度は鞭で背中と足を打つ
アスナ
「っ!!」
「うっ!!」
ドサッと倒れ込むアスナ
キフル
「ふふふ」
「どう?もうやめてほしい?
「殺してあげましょうか?」
アスナ
「・・・」
「・・・っぱつ」
キフル
「?」
アスナ
「あと、一発・・・!」
キフルが邪悪な笑みを浮かべる
キフル
「あはははは!」
「本当に最高ね、あなたは!」
「まだ痛みを味わいたいなんて、ほしがりさんね」
キフルが大きく足を振り上げる
次の瞬間、アスナは大きな炎を打ち出す
キフルからは大きく逸れる
キフル
「だから無駄だって・・・」
ドコォン!!
炎がヒットし、壁が壊れる
キフル
「な、なに!?」
キフルが狼狽する
キフル
「まさか・・・!!」
(さっきから炎を打っていたのは・・・)
(壁を破壊し風を散らすため・・・!?)
アスナ
「ダメじゃない、そんな大きい声出したら」
キフル
「!?」
アスナ
(空気が流れる…濃度が下がってる…!)
(今の声で・・・)
(だいたいの方向と距離さえ分かれば…!)
(今の感覚でも、”面”なら当てられる!)
炎の中距離、中範囲の攻撃をヒットさせる。
ボウッと音を立て、キフルが燃え上がる。
キフル
「ああっーー!」
アスナ
「そこね…!」
アスナは正確な当たる位置を確認して、より範囲を狭めて最後の火球をぶつける
【火術・豪炎弾!!】
ドオォォン!!
キフル
「ガハッ」倒れる
アスナ
(あんだけ自分の戦略を饒舌に話すなんて、自分の仕込みが外されたことがない証拠)
(少しの”想定外”で隙ができると思ったわ)
アスナ
(そして肌の感覚が敏感になっていた分、風が部屋の出口に向かっていく流れは感じられていた)
(視界が定まらなくてもその風の流れの逆向きに炎を打てば、出口反対側の壁の同じ位置に必ず当たる)
(あとは壁を壊すまであんたに悟られず時間稼ぎってことよ)
アスナ
「悪いけど」
「黙ってやられてあげるほどかわいい女じゃないの。私」
アスナ
「ごめんなさいね」
言葉とは裏腹に、動かないキフルを睨む
ーーー
アスナの麻酔の影響が残る体が一瞬、大きくぐらついた。
「くっ」
深呼吸し、何とか立ち上がるアスナ。
アスナ
「エリス・・・!」
「待ってて・・・!」
感覚がまだ戻っていないことを感じながらも、エリスのもとに駆け出すアスナ
一方
ジボンが去ろうとするが何かに気づく
ジボン
「!?」
エリスが立ち上がる
ジボン
「おい、お前どうやって・・・」
エリスは自分の胸の傷口に医療魔法をかけ出血を止めている
エリス
「ハァ・・・ハァ・・・」
ジボン
「ふん、医療魔法は大した腕だが・・・」
「無駄だな!」
ジボンはエリスを蹴飛ばす
エリス
「うっ!!」
壁に叩きつけられる
ジボン
「他愛のない・・・」
「!?」
それでも立ち上がるエリス
エリス
「待ちなさい・・・」
「あなたは・・・行かせないわ・・・」
いつもの可憐な瞳に覚悟を秘め、震える声でエリスは言った
ーーー
ジボン
「てめぇ・・・」
ジボンは苛立ってエリスの首を掴む
エリス
「うっ・・・」
ジボン
「しつけえんだよ」
エリス
(私は・・・弱い・・・)
(けれど・・・)
エリスの目に力がこもる
エリス
「私がいつもお二人に守られていたら…」
「お二人に笑われてしまいますわ!!」
「あなたは、絶対にここで止めてみせます!」
エリスはアスナとの約束を回想
ーーー
アスナ
「・・・」
「分かった」
エリス
「!」
「アスナ・・・」
アスナ
「でも」
真剣な目でエリスを見つめる
アスナ
「何かあったらすぐ逃げること。分かった?」
エリス
「・・・」
「分かりましたわ」
ーーー
エリス
(ごめんなさい、アスナ・・・)
(私、やっぱり逃げるなんてできない・・・)
ジボン
「ふん」
「さっさとお前を殺せばいいだけのこと」
首をつかんでいる手に力を込める
エリス
「ううっ・・・」
(苦しい・・・お父様…お母様...)
ジボン
「ハハ!安心しろ!」
「お前の仲間も!」
「正面で戦ってる自警団のやつらも!」
「この砦にのこのこと来やがった村のやつらも!」
「みんな殺してやるよ!」
エリス
「・・・!」
「・・・っ」
小さく風が吹いた
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