表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので、王宮を出て制度を作り直します ~王国の財政を握っていたのは私でした~  作者: 月守いとは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/95

第45話 中央から一歩引く者

 公開型枠組みが定着して、ひと月が過ぎた。


 港は、変わらず動いている。

 だが、空気は以前と違った。


 決定は記録され、

 修正は履歴として残る。

 失敗も、比較も、公開される。


 派手さはない。

 だが、止まらない。


「参加団体がさらに増えています」


 ヴァルドが報告書を差し出す。


「隣国の小都市連合も、正式参加を表明しました」


「ええ」


 エリシアは、淡く頷く。


 もう、誰かが奪いに来る気配はない。

 奪う対象が存在しないからだ。


 王宮からも、連絡が届いていた。


『枠組み運用に関する定例協議への常任参加を要請する』


 丁寧な文面。


 同盟からも、似たような提案。

 商会連合からは、顧問契約の打診。


「中央に立てますね」


 ヴァルドが、率直に言う。


「象徴としても、実務としても」


 エリシアは、しばらく沈黙した。


 窓の外では、朝の光が港を照らしている。


「立ちません」


 短い答え。


「……よろしいのですか」


「はい」


 彼女は、振り返る。


「中央に立った瞬間、

 枠組みは私のものになります」


「ですが、影響力は――」


「十分あります」


 穏やかな声だった。


「公開されている限り、

 誰の判断も比較されます」


 エリシアが前に出なくても、

 設計は機能する。


「私は、提案者です」


 それだけでいい。


「管理者ではありません」


 数日後。


 正式な回答が、それぞれに送られた。


 王国へ。

 同盟へ。

 商会連合へ。


『定例協議への参加は、

 他団体と同条件とします』


 特別枠なし。

 優先発言権なし。

 拒否権なし。


 公開枠組みの一参加者として。


 王宮。


 レオンハルトは、その返答を読み、静かに息を吐いた。


「……あの方らしい」


 戻ってはこない。

 だが、敵でもない。


 同盟。


 アルノーは、苦笑する。


「中央に立てば楽だろうに」


 だが、それを選ばない。


 商会連合。


 マリアンは、書簡を閉じる。


「所有させないだけでなく、

 自分も所有しない」


 徹底している。


 ハルフェンの夜。


 エリシアは、最後の帳簿を閉じる。


 第1章から続いた記録。

 婚約破棄。

 王宮離脱。

 制度設計。

 争奪戦。

 公開。


 すべて、履歴として残っている。


『結論:

 制度は、所有されないときに最も強い』


 ペンを置く。


 外では、港の灯りが揺れている。


 制度は、もう彼女一人のものではない。


 だからこそ、

 壊されにくい。


「……これで、十分ですね」


 ヴァルドが、静かに言う。


「ええ」


 エリシアは、頷いた。


「私は、中央に立たない」


 だが、いなくなるわけでもない。


 光の下で、

 同じ位置に立ち続ける。


 奪われない制度は、

 誰かを王にしない。


 そして、

 誰かを排除もしない。


 港は、止まらない。


 制度も、止まらない。


 エリシア・フォン・ルーヴェルは、

 中央から一歩引いた場所で、

 その流れを見つめていた。


 ――第3章・了

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ