勇者の詳細
ギルドマスターから世界と魔王、勇者のことを聞いたレイ。その内容は当然、すべてではない。これから、本当の勇者の情報が明かされる。
「まずは初代からだな。」
ギルドマスターは話し始めた。
「初代勇者、ユリア・ノクス。【夜葬の巫女】と呼ばれ冥属性を司る。
初代魔王、叛王アザゼルを討伐したと文献には記されている。」
「ユリア…夜葬の巫女…か…。昨日レイティアが言ってた人だよね?」
レイが彼女に確認するかのように言う。
「そうだね。初代勇者ユリアは、私の憧れ。」
レイティアが頷く。
レイティアの返答が終わると、ギルドマスターが再び話を続ける。
「話を戻すぞ。二代目勇者、ミリエル・セラ。【白光の審判者】と呼ばれ天属性を司る。二代目魔王、悪王ロゴスを討伐したと記録されている。」
「白光の審判者…か…。」
「二代目勇者はミリエルって人なんだ…。」
二人は初めて聞くその名に驚きの色を見せる。
それからも、ギルドマスターの話は続いた。要約するとこうだ。
三代目勇者アステル・ルクス。【黎明の導師】と呼ばれ光属性を司り、
三代目魔王、殺王ネメシスを討伐。
四代目勇者リーネ・ネプティア。【海波の涙流】と呼ばれ水属性を司り、
四代目魔王、惨王ハーヴェストを討伐。
五代目勇者エルネ・リーファ。【翠命の歌姫】と呼ばれ木属性を司り、
五代目魔王、闇王ヴェル=ミルを討伐。
六代目勇者レオ・シルヴァ。【疾風の渡り鳥】と呼ばれ風属性を司り、
六代目魔王、獄王エル=ヴァンを討伐。
七代目勇者セイン・グラシア。【白凍の守護者】と呼ばれ氷属性を司り、
七代目魔王、酷王ヴァイスを討伐。
八代目勇者ガルド・ローム。【大地の盾】と呼ばれ土属性を司り、
八代目魔王、怖王バル=クスを討伐。
九代目勇者バルト・ストルム。【轟天の雷刃】と呼ばれ雷属性を司り、
九代目魔王、邪王ギル=エルを討伐。
十代目勇者ドラン・バルム。【不壊の鍛冶王】と呼ばれ鋼属性を司り、
十代目魔王、偽王クロウを討伐。
十一代目勇者アルゼ・オルスター。【灼熱の炎燼】と呼ばれ火属性を司り、
十一代目魔王、禍王ゼストを討伐。
十二代目勇者カイ・ドラグナ。【竜血の王子】と呼ばれ竜属性を司り、
十二代目魔王、厄王レギオンを討伐。
「これが、勇者が記録された文献にある内容だ。まあ、まだまだ偉業もあるが、
それも話すと長くなっちまうからな。」
ギルドマスターは話を終えると同時、レイを鋭い眼光で見て口を開いた。
「勇者の情報を話してやったんだ。
今度はお前が俺に話す番だぜ。冒険者…いや、勇者候補、レイ・フェルロスト。」
レイは息をのむ。自分でもなぜあんなに簡単に倒せたのか、分からないからだ。
少しの沈黙の後、レイは口を開いた。
「正直、俺もなんで勝てたのか、分からないんです。魔族が攻撃してきたとき、
急に世界が止まった感じがして、その間に剣を魔族の胸に突き刺さるように動かしたら
時間が進んで、魔族の胸を貫いたんです。」
ギルドマスターは一瞬凍り付いた。その後、口を開く。
「レイティア、ミレーヌ(受付嬢)、席を外してくれ。」
二人は驚きつつも並々ならぬその雰囲気に押され、部屋を後にする。
ギルドマスターは二人に席を外させたことについて不思議がっているレイに話始めた。
「これは…国家機密レベルの内容だから、他言無用だ。」
低い声はさらに低くなり、相当なプレッシャーを感じる。
「時が止まるってのは…歴代の勇者、全員が体験している現象だ。勇者候補ではなく、勇者がだ。
それは唯一記録が残っている異質な技能・時の加護。
自身の命が危険に晒されたとき、時空を強制的に歪め、世界を停止させる。
停止した世界では当事者しか動けないという禁断の技能。」
レイはその言葉に驚きつつも、どこか納得したかのような反応を示した。
「この、時の加護は、世界の時間、空間、生命活動をすべてリセットする。
その停止世界では使用者のみ動けるが、当然、代償もある。」
「代償……?」
レイは心に覚悟を固めギルドマスターに聞いた。
「時の加護の代償。それは…世界に嫌われるということだ。
お前は知っているか?魔王が世界に放った呪いを。」
ギルドマスターはレイに問う。
レイは最初は分からなかったが、旅の途中に語り部から聞いた話を思い出した。
(正義が災いに変わる。世界を救おうとした者ほど世界に仇なす。)
「………………勇者が…魔王になる…呪いですか…?」
レイは声にならない言葉を口から絞り出す。
「似ているが違う。勇者は何があっても魔王になることはない。
さっきも話したが、勇者は光属性から、魔王は闇属性から生まれる。
光と闇は互いに相容れぬ存在。世界が干渉しようと、その因果は覆らない。」
「では…呪いとは……」
「世界干渉技能・虚る正義という技能だ。」
「虚る正義……?」
レイは初めて聞くその技能についての答えを求めた。
「虚る正義…。この技能は、
時の加護を与えられた人間がその力を保持して勇者になると、
世界が拒絶し、正義は反転する。という概念を具現化した物だ。」
「そんな…ものが…」
「十三終焉…。この名を聞いたことはあるか?」
ギルドマスターがレイに聞く。
「十三終焉…?何ですかそれは…。」
「十三終焉ってのは、現魔王の配下、
魔王を含めた魔王直下の十二体の災厄のことだ。
それぞれが対応した属性の力を自在に操る。
各々が対応する属性によって一人一人が世界を終わらせる力を持っていることから、
十三種類の世界の終焉、十三終焉と呼ばれている。」
「虚る正義と十三終焉に何の関係が…」
レイは疑問をギルドマスターに問いかける。
「わからねえか…?十二体の災厄…、虚る正義の効果…、勇者の数…。」
ギルドマスターは声を低く、鋭い眼光を放った。
「……ま…さか………。」
レイはその情報の結びつく先の答えに絶句した。
「十三終焉の…十二の災厄は…元勇者ってことですか……?」
「確証はねえ。だが、俺の技能、知恵の彗眼はこの世に現存する
情報を覗き、推察することができる。それで見て、推理した結果、
かなりの確率でその考えであってると俺は感じた。」
「十三終焉には闇以外の属性が揃ってる、
勇者も闇以外の属性を司る十二人ときている。
これが…答えだろう。」
グランドマスターは話し終えた。その顔は何とも言えない表情をしていた。
「元勇者が…魔王の配下として、世界を滅ぼす存在に…なったのか…虚る正義の力で…」
レイはその言葉を発すると同時、到底受け入れることのできない現実を理解した。
(もし、時の加護が勇者にのみ与えられるものだとするなら…俺は勇者。
そして勇者は魔王を討伐し、世界を平和にすると、逆に世界を滅ぼす存在に…なる。)
「俺が…もし、魔王を倒したら…俺は十三終焉、
その最後の一席に座ることになる…のか。」
レイは不吉な予感を全身に感じながら、自信の置かれていることの重大さを理解した。
次回、覚悟の重さ




