勇者と魔王と世界の理
勇者の話を聞き、勇者について興味がわいたレイは、ギルドマスターへとある賭けをしかける
翌朝。
湖畔の霧が晴れるころ、二人は再びギルドへ向かう。
昨日よりも静かな空気。
まるで、街全体が息を潜めているようだった。
ギルドの奥。
重い扉の前で、レイは足を止める。
「……行こう」
「うん」
レイティアが頷く。
扉が開く。
扉の先、アンティークな家具が並ぶ部屋にギルドマスターが、待っていた。
――「それじゃあ、聞かせてもらおうか。魔族との遭遇の話を。」
ギルド最奥。
石造りの会議室は、外界の音を完全に遮断していた。
長机を挟み、レイとレイティア、そしてギルドマスターが向かい合う。
「……さて」
ギルドマスターが口を開く。
「昨夜の件、説明してもらおう。
湖で何が起きた?」
レイは一瞬、言葉を選び――そして、はっきりと告げた。
「その前に、条件があります」
レイティアが驚いたようにレイを見る。
「レ、レイ……?」
ギルドマスターは眉一つ動かさず、続きを促した。
「ほう。条件とは?」
「魔族討伐の詳細は、すべて話します。
ですがその代わり――」
レイは真っ直ぐ、男の目を見据えた。
「勇者のことと、魔王のことを教えてください。
…俺は勇者候補です。勇者、魔王の情報はあるに越したことはないんです。」
沈黙。
重く、長い沈黙。
やがて――ギルドマスターは、低く笑った。
「……ただの新人じゃねえと思ってはいたが、まさか勇者候補とはな…」
彼は椅子に深く腰掛け、腕を組む。
「いいだろう。
その覚悟があるなら、対価として釣り合う」
レイティアは息を呑んだ。
(この人……最初から試してた……?)
「まず、勇者、魔王を語る前に、世界の理屈を理解しなきゃならねえ。」
ギルドマスターは話し始める。
「世界には十三個の属性がある。そんで、その属性の対応する感情や共鳴する元素から種族が生まれた。
火属性からは鬼族、水属性からは長命族、木属性からは精霊族、氷属性からは獣族という風にな。」
「当然、人族も魔族も例外じゃねえ。光属性からは人族が、闇属性から魔族が生まれた。
それぞれ十三の属性には得意不得意…、まあ相性ってのがある。」
「火は氷に強く、氷は竜に強く、竜は鋼に強くって感じだ。それと同じように光にも闇にも相性がある。
光は闇を打ち消す、だが闇もまた光を飲み込む。つまり互いを侵食しうる属性なのさ。」
「勇者は人間からしか生まれねえ。それは光属性という魔族に対抗しうる力を持つ種族だからだ。
同時に魔王も闇からしか生まれねえ。これが前提だ。これを頭に入れて勇者の話を聞きな。」
「勇者は全員、異質な技能と最上級の武器、防具を持っていた。」
「あんた、武器や防具にも技能と同じような等級がついてるの知ってるか?」
「武器の等級は下から無銘、業物、大業物、準最上大業物、最上大業物、世界級大業物、
神級大業物という。最上大業物は世界に17本、世界級は10本、神級は5本のみ現存してる。
防具の等級は下から無銘防具、高質防具、超高質防具、準再高質防具、最高高質防具、世界級高質防具、神級高質防具。最高高質防具は世界に22領、世界級は10領、神級は全7領のみ現存している。」
「知ってると思うが技能も等級が分けられている。下から普遍技能、汎用技能、優秀技能、超技能、希少技能、特別技能、特異技能、奇跡技能、究極技能、厄災技能、世界技能、神話技能、始原技能という風にな。」
「通常、人が扱えるのは超技能までだ。
それ以上は才能と狂気の境界、努力では手に入らない世界の理に触れる技能。
……だが歴代勇者たちは、厄災と呼ばれる技能を身に宿すほどの化け物だ。」
レイは無言で頷く。
「歴史に名を刻む武具は、ほぼすべて最上大業物とさえ言われる。
勇者が使う武器や防具も最上という等級のシロモノだったらしいぞ。」
「ここまでの情報が、ギルドの知る勇者の情報だ。そしてこっからは、
俺が技能で独自に調べた勇者と魔王の情報だ。」
ギルドマスターの声が、少しだけ低くなる。
「勇者とは、世界が“選ぶ存在”だ」
「十三属性、あるいはそれ以上の因子を持ち、
世界の歪みに抗える者」
「魔王とは、その歪みが具現化した存在。
意思を持つ場合もあれば、災害に近い場合もある」
ギルドマスターは、レイをじっと見た。
「勇者は、必ず魔王と対になる。
それが、この世界の“均衡”だ」
レイティアは小さく息を吸う。
「……じゃあ、魔王が現れなければ?」
「勇者は現れない。
逆もまた然りだ」
その言葉は、静かだが重かった。
レイはその言葉に深い沈黙をもって答えた。
「こっからはお前の好きな勇者の話だ。」
「勇者を記述した古文書、といっても100年前にも付け足されているようだが、
勇者の名前、二つ名、属性、対峙した魔王をお前に教えてやる。」
そう言うとギルドマスターは話し始めた。
次回、勇者の詳細




