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特異点規定〜継承と残余〜

作者: hoshiyokogi
掲載日:2026/01/15

初めて小説を書いてみました

続きの章もありますので乞うご期待

1章

虚無からは何も生まれない。

だが、その無を否定する意志があったとすれば——そこに光は宿る。


虚無……虚無……また虚無……まるで壊れたコンピューターのように。


光と闇が交錯する微細な粒が、無作為なパターンを描きながら浮かび上がった。

やがてそれは一つの地平に収束し、微かなかたちを結んだ。


「ここはどこだ…何も思い出せない….」

覚えているのは、漆黒を湛えた丸い球体に吸い込まれたあと、宙を浮いたと思った次の瞬間、足元の地面が抜け落ちる感覚だけだった。


しばらくしたあと何かに着地するのはその数分後だった。


特異点規定(シンギュラリティプロトコル)を発動します」

無機質で機械的な声が頭に直接響く。

理解が追いつかぬまま、主人公は沈黙の海に呑まれたように立ち尽くした


暗闇の中に電子回路のような構造体が浮かび上がる。虹色に脈動する光が、空間の底を淡く照らす。それはまるで、機械の神秘を宿した微細な海のようでもあった。


すると、無機質な機械音がテレパシーのような残響を伴って再び頭上に届く。冷たく、神聖さを帯びた声だった。


「「ここはどこだ」は質問だと断定

ソウルコード(魂の情報)を受理しました」


意識の奥で響く声は、未知のアルゴリズムに従う機械のようだった。返答が戻るまで、わずか数秒---しかしその間は、凍りついた空間のように長く感じられた。


「特異点規定による世界の書き換えを行います。座標点ポイントネモ」


「ま、待ってくれ! ポイントネモ、特異点規定、ソウルコード……いったい何のことだ!」


無機質な声は続けた。


「該当者には限定権限しか付与されておらず、アクセスは拒否されました。管理者アーカシアンに権限昇格を要求…権限昇格完了。応答内容を処理します。」


「ポイントネモ——到達不能極と称される、未開の領域。特異点規定により、書き換えはそこに限定されます。」


どうやら、未開の領域へ飛ばされるらしい。

記憶がまだ戻らないことに思い巡らせていた、その矢先だった。


さらに無機質な声は告げた


「特異点規定に基づき、該当者には最小限の武装と知識を付与すべきと判断。管理者アーカシアンに承認を要求――認証完了」

「数秒の処理遅延を経て、テレポートシーケンス起動、321」


その瞬間、全ての存在が光の奔流に呑まれた。

1-2

光が収束し、視界を覆っていた白がゆっくりと溶けていく。代わりに現れたのは、漆黒に沈む大地だった。


空にはまるで魔方陣のような不思議な模様が描かれていて、ここが異世界であるということを否応なく痛感させた。


地面には裂け目のような隙間が散在し、無機質な黒い石がいくつも転がっている。


その一つ一つは、まるで世界の残骸のように冷たく、主人公には、そこに何か大切な記憶が封じられているかのように見えた。


遠くには、塔のような構造物が幾重にも重なり合い、森のように屹立している。


だが近づくにつれ、それが木ではなく、金属と黒曜石の融合体であることがわかる


枝のように伸びた構造体の先端では、青白い電光が時折走り、まるでこの世界そのものが呼吸しているように脈動していた。


「……ここが、ポイントネモ……?」


足元の地面は脆く、踏むたびに微細な黒い破片が舞い、淡く光を反射した。


空気は乾いていて、それでいて張り詰めるような重さを帯びていた


どこか遠くで、電子音の雨が降るようなノイズが鳴り響いている。その空間は、現実と虚構の境界がすでに溶けてしまったかのようだった。


やがて、塔の根元に近づいたとき、

黒い石のひとつがゆっくりと転がり、微弱な光を放った。

それは小さな立方体で、表面には見慣れぬ文様が刻まれている。

文字とも記号ともつかないその線は、まるで魂の回路図のようだった。


「……これが、“付与された知識”か……?」


主人公が手を伸ばした瞬間、立方体の中から微かな声が響いた。それは、あの無機質なシステム音とは異なり、どこか懐かしい、人間的な温度を帯びていた。


「あなたは、なぜ“無”を否定したのですか——」


その言葉が、再びすべての光を呼び覚ます


———


「ポイントネモ——ここは未開の地であり、あなたのような存在のための訓練場でもあります。まずはこの《メタトロン・キューブ》をあなたに託しましょう。」


手のひらに浮かぶ幾何学の光。

主人公がそれを受け取った瞬間、不思議な振動が体内を駆け抜け、未知の情報が全身を流れた。

思考の奥で何かが開かれていく感覚——記憶ではない、もっと根源的な「理解」だった。


「すごい……いったい、どうなって……」


柔らかな声が応える。どこか天使のようであり、同時に無機的な静寂を湛えている。


「メタトロン・キューブは叡智の書《創滅の書》にも並ぶ、コヴェナント——神聖なる契約を具現化するための“象徴”です。」


声が少しだけ熱を帯びる。


「コヴェナントとは、授かるものではなく、“意志を試される契約”。

 その意志が真実であれば、力は自然とあなたの手に現れます。」


主人公の胸の奥で、何かが共鳴した。

光の回路が心臓を通り抜け、右腕へと流れ込んでいく。


「さあ——力を試しなさい。あなたは今、私のコヴェナントを継承しました。」


その声の主はふふっと微笑み、まるで慈母のように主人公を見守った。



「こうか……シンギュラリティ・プロトコル、発動——モード《VEFTALZEXA》!」


右手に三つの光輪が浮かび、腕輪状のデバイスへと変形する。

金属のようで、しかし生きているかのように脈動していた。


「——メタトロン・レーザー!」


三つの光球が螺旋を描き、一つに収束して放たれる。

奔流のような光が黒曜石の岩を貫き、音もなく粉砕した。


主人公は息を呑む。

「……射程はおよそ二十メートル、連射は二十発までか。」


「ふふ、他にも多様なモードがあります。あなたの感応で、自在に切り替えてみてください。」


光が薄れ、姿が透けていく。

その微笑は、別れの予感を含んでいた。


「さて……お別れの時間のようですね。最後に自己紹介をしておきましょう。

私はステラ」


淡く光の翼が広がる。


そして再び、あの無機質な声が頭上に響いた。


「ワールドストリップが開始されました。

世界の亀裂は、このままでは制御不能です。

空間転移を実行します。

なお、記憶の連続性を保つため、ホログラフィック・スキャンを行います。」


空間が微かに震え、空気がざわめく。

遠くで、電子音の雨が降るような残響が耳をつんざき、視界の端で光の歪みが蠢いていた。


主人公は身体を硬直させた。

「また……? 今度は世界ごと……?」

心の奥底で不安が渦巻く。だが、同時に体の奥で、ステラから受け取ったコヴェナントの力が微かに共鳴していた。


「記憶の連続を保持……か」

声は冷たく無機質だが、わずかに安心感を伴う響きを持っていた。

光の粒子が周囲で踊り、空間はまるで巻き戻される映像の中に取り込まれるかのようだった。


次の瞬間、世界は静かに引き裂かれ、主人公は無重力のような感覚に包まれる。

視界に映るのは、色も形も不確定な光の奔流——それはまるで、宇宙そのものが情報化され、再構築されているかのようだった。

ここまで読んでいただきありがとうございました 初投稿です

筆者は主に研究者で量子重力理論の研究を行っています

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