いち
あああ〜……めんどくさいです。
めんどいです。
めんっ!ど〜〜〜!!!
「ヤっちまっても?」
「ヤられたいわけならヤってやるわ」
まあ、期待しなかったです。むぅ。
ソファに干されていた私、ラーシェルに持たれ部屋から出ることになりました。私、重くないです。だって魔法をかけてるんです。もちろん魔法なんか無くても重くないです。
ガチマジ!
魔道昇降機から、私たちはフロアに着きました。開いたドアからあいた!私の頭ぶつけんじゃないよバカラーシェル〜!わざとでしょ、知ってぅかっんね!?
「遺体ですぅ」
「死ぬな」
「いたいけで〜すっ☆」
「死ね」
「痛いです痛いです!ぶつけないでくれますぅ!?」
「自分で動いたら?」
うご……?いったい何を言っているのでしょう。そんな言葉辞書に載ってないんですが。なにそれ?おいしくなさそ〜
ため息するんじゃないですぅ、それどう見ても私のですぅ!
外への扉も開いて、眩しー!声に出してたらめっちゃ
裏声だったよ今。即ラーシェルの腹に頭を突っ込んで暗闇を求めます。ほっぺ殴んないでくれませんかラーシェル!?コレ暴力です、犯罪なんですぅ!
嫌だっつんのに〜仕方なく片目だけ細目して目の前を目撃しましょう。あ、ショックってる〜初見さんかな?帰れ帰れ〜♪
「前から1人ずつおねがいしま〜す」
1人ずつってっても、1人しかいないですけどね〜ラーシェルのド真面目〜
いっちゃん前――ウケる〜――の人が入ってきました。どれもが気になるらしくウロウロしてて、ほんとおとなしくない人ですね〜私を見習えよ。ねえ。
てか私美人すぎませ〜ん?だってね〜、顔も美麗ですし〜?おとなしいですし〜?顔も美麗ですし〜?魔法上手ですし〜?顔も美麗ですし〜!?わあ、絶世すぎませ〜ん!?だから投げなっうぐっ!
「どうした事情でいらっしゃいました〜?」
私をソファにファっと投げて、ラーシェルは依頼人優先モードに入りました。別人みたいに変わるんですよね〜ラーシェルって。私には決して見せない表情、マジウケる。
依頼人は頑張ってラーシェルに返そうとして、しかし私が気になるらしくウロウロしています。あ、最初からか〜なんだ〜
でも私が気になるのはあってるでしょ、だってこの容貌ですよ?そりゃ気になっちゃいますよ。罪すぎ〜
「アイツはいいから、気にしないでくださいね〜」
ほら〜気にしてるって。証言あり、あり〜♪
それはそれで、ラーシェル!魔法無かったら私死んでますけど!?さすがにひどすぎません!?うぅ、衝撃は消去したけど、衝撃……もそうだけど、めまいが……
酔いには良い眠りをっ!おやすみなさ〜い
スヤ……
「ちゃんと聞け」
ね〜ムリなんですけど〜眠りだけに
目が開けられ、ラーシェルが顔をずっと突きつけてきました。え〜?瞳の中の私可愛いすぎ……
聞くにはまずよく効く薬がないとです、世界が逆さまになっているんです。激マズなんです。
「ミラージュ」
ちょっと揺らがないで〜!?私ゲロインになっちゃいます、ラーシェルの服に散々散々散らかしちゃいますぅ!
「ぎ、ギブ……」
「ちゃんと聞け、わかったよね」
「……はぁい……」
悪魔にも「悪魔だ……」言われますよ!呆れますよ!ひどいひどい!うう!
あぅ……キツい……
ソファの端っこになんとかうつ伏せて依頼人のお話を聞けるかバカ〜!こんな体調で?うそでしょ!?ムリ言われてもこんなムリは言われたくないですぅ!バカバ〜カ!う、死ぬ……マジで死ぬ……
「回復するまで一ヶ月だけ待ってください」
「残りの命が一ヶ月だって?」
今は一ヶ月どころか今夜の月も見れなさそうですけど。たすけて〜……まだ死ぬには早すぎますよ、私まだまだ……えー、何歳でしたっけ私。忘れちゃったてへぺろ♪とにかく若いんです!
「……そ、その、わたし、忘れ物してぇ!すいませんでした〜〜〜!」
依頼人退治クエストコンプリートやたやた〜ちなみにクエストくれるNPCは私でした。報酬は自由にお休み取れる券(無制限)でどうです?ええじゃないか〜。
ラーシェル、ため息溜めてますね。吹いたら後ろにぶっ飛んじゃいますよ?あ、ちょっと見たくなっちゃった。
そしてバカ強いラーシェルは、前へと歩けたし!?私の頬を――頬だけを両手でぐっと握り掴んでは私を持ち上げたのです!悪魔悪魔悪魔!
「痛いです!放してください!」
「決算に合わせられなくなったらアンタのせいだから、ミラージュ、アンタの責任だから」
「はい?決算ですか?もうあんな時期になりました?それとまだ足りてないんですか?」
「……なんて?」
「あう……痛かったですぅ」
ちっちゃいお手手で頬をそっとさすりながら綺麗な涙の輝くキラキラ光るお目目でラーシェルをジロジロと見上げるこの可愛らしくてか弱くてそれでもその美しさを全世界に見せつけるような超絶美少女は誰でしょう、そう、私です!ほら、どうですどうです、コレを見たらそんなひどいことはもう二度と謳えないでしょうね、ねえラーシェル!ねえ!!!
「考えが全部見えとるわ!」
なんと、ラーシェルはこれほどいとしい娘を捨てやがって!?ラーシェルには感情ってのが無いんですねさては!?小指でのデコピンもいたいたです、あうっ!私のおでこ、ボコボコになり『おぼこ』と名付けられました。頬をさすってたお手手もおぼこへと長期出張しないとです。もう私の死因が脳出血だった場合には傷害致死を訴えられますね!でもそれ、私は死んでいるってことじゃないですか、このゲームバランスが悪すぎるよ〜!早くパッチして!それに私はデコピンまでされたし!ズルいズルいズルい〜!えいっ!……と、セブン!シックス!魂の一発は、しかし紙一千重の差でまさかの空振り!?回避しやがったよ〜!慌てないで、まるで時間が戻ったように元の位置に、何も無かったフリをして、何も無かった顔をして。さあ、やりましょう。テイク・ツー、キュー!
「痛かったのはほんとですぅ。もっと私を大切にしてください」
「大切にされたいなら大切にしたくなってくれよ……」
「私居るだけで大切な存在なんですよ?何言ってますぅ?」
また頬を握り掴まれ空泳ぎすることとなりました。……それでも私は大切ですぅ、べぇ〜!です!舌出ないけどともかく!
だってさ〜!こんな素敵な人が2人目もいると思いますぅ!?顔も美麗ですし顔も美麗ですし顔も美――
「もう決算の時期ですか?その、なんか、繰り上がってたのです?」
「何言ってんのコイツ……今週末だろ、カレンダー見ないわけ?」
やっと床に足がくっついて、痛みを精一杯感じつつ伝わらなかったお質問をしました。するとラーシェルがあんなありえないことを言い出して。あら、やだ、ラーシェルさん冗談がお上手なんですね〜おほほ、今週末とか、そんなワケないじゃないですあっれマジで今週末なんですけど〜!?あらま〜私が眠っていた間に誰かが世界の『時』を乱したようです、はい、そのシナリオしか見出さないので!終わり!!!
終わったよ。ほんと。
「もうすぐじゃないですか!まだ満たしてないんですか!?どれほど残ってます!?私、今月は稀にもすごい頑張りましたよ?それでもこんなことに……」
「は?アレで?は???」
「え?あ、はい。自信ありますよ?」
うそ、ラーシェル、隣で見てきてますよね?私すっげー頑張りましたよ?ね?ラーシェル、もしかしたらお目目がダメダメになっちゃいました?――駄目駄目だけに〜?――どうします?ヒールとか要りますぅ?
「頼むから稀にでも頑張ってよ……まだ2件は要る」
「2件?え〜?全然平気じゃないですか〜なんだ〜」
「ミラージュ」
「はあ、なんですか」
「明日は半休日だけど、知ってる?あさってからは定期会合だけど、知ってる?」
あららラーシェルさん冗談がお上手……はああやだやだそれはウソ、ウソだウソウソウソ〜!早くウソだって言って!は〜や〜く〜!
たしかに、春の決算の直前は定期会合の期間でした。忘れてたてへぺろ♪テイク・ツーのヤツ
えー……どーする?
さっき逃げ出した人、どうにか帰らせないでしょう……?そうだ、『時』!『時』を乱して……!
「わかったらシンケンにやれ」
「……はい」
その後、私はソファに伏せくっ付いて過去一真面目に依頼に献身し、サクサクやり続けました、が、いったいどういうことでしょう。
誰も来ませんでした!なんの成果も!!!……ってヤツ〜!あれ〜!?
「それは真面目にやり続けたと言わないよ?」
「いちいち厳しいですぅ」
依頼が無い。あら、困りましたわ〜?
「困った程じゃない、ね?」
……そうですね。もしノルマをこなせなかったら、この身で受けることになってしまいます、とうてい言葉にできない、キャッキャでウフフな……!
「違う、違うでしょ……」
まあね?私もそうじゃないってことは知ってます、ちゃんと知ってますよホントに。ほんとだお?でもガチでマズいのも事実です。私、死ぬかも。ラーシェル?ラーシェルはバケモノだから大丈夫、絶対。
でも考えてみりゃこのまま生きていけるとしてもいつかはラーシェルに殺されそうではあるんですよね〜さっきも死ぬところでしたし?
「残り2件はミラージュ、アンタがどうにかやれ」
「はぁい?どうしてですぅ?」
「態度」
「え〜?」
「それとアンタのせいでさっきも1人逃げただろうが!」
「ちょっとちょっと!意義あり!それはラーシェルのせいじゃないですか〜!」
こわ〜私のせいにされるところでした。投げられたのは私のほうなのに、絶対ラーシェルが悪いのに!ヤバ〜良心な〜
「なんで私がそうするしかなかったか、わかんない?」
「なんで私がそれをするしかないかは生涯わからないですぅ!」
「そう。なら、ボコボコにされてからやる?今からやる?」
ひどいひとい!犯罪ですよ!犯罪!
しかし力こそパワー……じゃなくて、力こそ正義なのです。強者なラーシェルの間違いを弱者である私が背負うことになりました。これが人生です。ええ、これが人生なんです!よく出来たもんです、ホンマに。
でも、やれと言われましても、どうしたらいいんでしょうね。依頼自体が無い、無なんですよ?ラーシェルが言った通り明日は半休日ですから、ほんと、どうしたらいいんでしょうね。
どうしたらいいんでしょうねええ!!!
「うっさ」
「そんな……じゃあ私、どうすれば……?」
「何演じてんの……客引きでもやってみたら?」
「私、ラーシェルが思うより不健康ですぅ!」
「死んだら?」
ひどいひどいひどい!ひ〜ど〜い〜!
マジどうしたらいいんでしょうね。今日はもう終わりました、明日誰か来てくれると思います?来なさそ〜だって半休日ですよ?来ませんね〜
「自分で探すつもりは無い?」
「無いですよ?だってめんどいじゃないですか」
「めんどいのはアンタを持ち歩く私だが?」
「ウザいです、じゃあラーシェルが1人でやればいいだけじゃないですか!」
「アンタが、やるんだよ」
「嫌です。めんどいです」
痛い痛い痛い!!!う、頭蓋骨もおぼこの轍を……
ラーシェルのバカ!もう知らないです!話しかけないでください!ふん!あうぅ、頭を派手に動かしたせいでめまいが……再発しちゃった……
両手で脳天を抱えつつ玲瓏と輝く目玉にはまだ満開し切ってない幼い感情の花が糸のように華やかに紡ぎ一見危なく見えるも断じて断たれない極めて強く固い繋がりで娘を本初の美、本質だけがある純白の世界に連れて行こうとしてます。そう、彼女の名前とそっくり、まるで蜃気楼みたいにぼやけて、ああ、どれだけ美しいのでしょう!人のくせに人の心を持たないラーシェルすら今度こそは敗北を認め私に落とされます。きっと。今日9回目のため息の後、ラーシェルが私の頭をなでなでしてくれます。はい勝ち〜私の勝ち〜生物である限り避けられない、これをさだめと言うのです。ラーシェルぐらいじゃ絶対ムリなんですよ、どーだ〜
この機会にラーシェルの「ごべんなしゃい〜」までは聞いておきたいんですけど。ダメですか。やはりダメ人間です。
「ミラージュ、ちょっとは成長しない?」
「私の成長はとっくに終わりましたよ?」
「そっちじゃない」
いたっ!あ、そこまで痛くなかったです。ただの反射でした。でも犯罪です。
ラーシェルに持ち上げられお部屋に運搬されました。もう夜でしたね。二度の無いぐらい頑張っちゃいました私。そのせいで眠たいかもです。ラーシェルに気づかれたのかな?
「ラーシェル、今日もありがとうでした」
「うん。ミラージュ、明日午後から近くの町に行って依頼探してみない?」
「嫌です。めんどいです」
犯罪〜〜〜!断らせてくれないならなぜ訊きました!?「探してみない?」じゃないじゃないですか!
はあ、依頼、どうにかならないかな……ならないか……
うう、ベッドから出たくないです。私、将来はベッドのヘッドボードになりたいんですよ。やだやだやりたくな〜い〜
ゲホゲホ、ラーシェル、あとは任せた……ポックリっ




