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077 宣戦布告

 ――グランドキングホテル 廊下


「お客様、そちらは困りますっ!」


 ホテルの従業員が、貸し切りフロアの廊下を行く赤毛の武芸系教師の足を止めようとする。が、彼女は普通のメイド女性。ガタイの良い武芸系教師を止めることができる程に力も強くない。


「……」


 そんな警告も無視して赤毛の武芸系教師、ナオ・クランクは脚を止めることなく廊下を進む。

 VIPが滞在する超高級ホテルだ。もちろんそれで済むはずも無く――


「おい、お前! 止まれ。これより先は立ち入り禁止だ!」


 ナオ以上のガタイを持つボディーガードが現れた。


 先ほどのメイド女性は、もしかしてこのホテルの宿泊客が道を間違えただけなのかもしれない、という思いが残っていたが、現れたこの男はナオがホテルの客ではないことに気づいているようだ。

 VIPの警護としては合格点であろう。


「すまないが通してもらうよ。ろっちんはこの先にいるんだろ?

 ああいいよ答えなくて。後で君たちが叱られるのを望んでいるわけじゃない」


「舐めやがって! 痛い目見ても文句を言うなよ!」


 黒服にサングラスの巨男がナオへと掴みかかる。


 が――


「な、なんだ、近寄れない」


 あるところでピタリと男の腕が止まり、何かに阻まれるかのようにそれ以上ナオへと近づくことができないでいる。


「君たちはもう俺に近寄ることはできない。行かせてもらうよ」


 青筋を額に浮かべどうにかしてナオを取り押さえようと力を込めているボディーガードを尻目に、ナオは赤い絨毯が引かれた廊下を進む。


「ここだな?」


 一際豪華な扉を目にし、ここが目的地であることを確信する。


「ろっちん、入るよ」


 まるで友達の所に遊びに来たかのように口にするナオ。

 もちろん約束なんかはしていない。

 よって、ドアにはカギがかかっているのだが、ナオはドアノブに手をかけると――


 ――バギィ


 普通にドアを開けたように見えたが、破壊音がしてドアが開かれた。


「なんだぁ? 騒がしいと思ったらちゆちゆじゃないか。負け犬のお前が今更何しにきたんだ?」


 そんな騒ぎにも気を留めず、金髪ロン毛の皇帝は椅子にふんぞり返っていた。


「ろっちん。俺はまだ、()()()()()()()()()()


 ナオは、幼馴染の男にそれだけ伝える。


「そうだったな。俺たちが小さいころに決めたルールだ……。

 あんなにボコボコにしてやったのになぁ。お前の教え子の目の前で」


「……」


 クククと笑いながらクバロットはナオをあざ笑う。それは挑発を兼ねてのことだ。

 だが、ナオはその挑発には応じず無言を貫く。


「ふん。目つきが昨日と違うじゃないか。生意気な目つきだ。昔から俺の大嫌いな目だ。

 いいぜ。あの程度でお前が音を上げるとは思っていないさ」


「俺の事がよくわかっているじゃないか。なら今から俺が言うことも分かるよな?」


「もちろんだ。このくそ生意気な赤毛め」


「くそ生意気で結構! ろっちん! いや、クバロット・ラザーナ! もう一度俺と戦え! 今度は俺が勝つ! 今度だけじゃない。これからずっと俺が勝つ!」


「ハーッハッハッハ! いいだろう! お前ならそう言うと思ってたぜ! だがお前は挑戦者だ。チャンピオンの都合に従ってもらうぞ。なんたって準備があるからな。

 今度こそお前を完膚なきまでに叩き潰して、この国中にお前の無様な姿を知らしめて、そしてお前の居場所を、お前の生きがいを奪い俺のものにする。そのための準備がな。

 期間は一週間後。場所は学園の運動場。そこに俺たちの決闘にふさわしい場所を用意しておく。それまで震えて待つんだな!」


「震えるさ。俺が勝利する興奮の震えだ。

 再戦は一週間後、場所は学園の運動場。承知した!」


 ナオは踵を返すと、ぶらぶらと千切れ飛びそうな扉の横を通って部屋を出て行った。


「ククク、負けを認めておけばよかったと思うような無様な様子をさらさせてやるよ。ククク、面白くなってきたな。

 おい、建設を急がせろ!」


 配下に指示をだし、小さなテーブルに置いてあったグラスを手に取ると、中に入ったワインを口に含み、クバロットはクククと忍び笑いをするのであった。

お読みいただきありがとうございます。

とうとう戦いの火ぶたが切って落とされる! 期間は一週間後。

つまりは、この後、修行回が、始まる!

お楽しみに!

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