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063 第7章プロローグ

お待たせしました、連載再開です!

 ――聖ブライスト学園 円卓の間


 円卓の間。そこは学園の最高決定機関である13人の貴族たちが集まり重要な決定を行う場。

 だが今はカーテンも閉められ明りも消されており薄暗く、華やかな13人がいる様子ではない。

 それももっともの事。今日は円卓が開催される日ではない。そしてこの部屋は通常時は施錠されていて、入ることすら許されていない。


 そんな薄暗い円卓の一席に男が座っていた。

 自分が円卓であるという悦に入っているわけではない。

 何故なら彼の背後、薄暗い影の中に立つもう一人の気配があるからだ。


「……その条件を飲めば本当に私を?」


「ああ。上からの直接の依頼だ。お前も中級貴族で終わりたくはないだろう?」


「承知した。話がそれだけならすぐに去ってくれ。一緒にいるところを見られるとまずい」


「励むといい。そうすればお前の働きは伝えてやる」


 それだけ言うと影の中にいた男の気配が消え、円卓の間には一人の男だけが残った。


「……ふふふ、ちょうどよかった。最近調子に乗っているクランク家に一泡吹かせられるなんて一石二鳥だ。ナオ・クランク。俺の踏み台になってもらうぞ」


 暗く静かな部屋の中、男は一人気持ち悪く笑い続けていた。


 ◆◆◆


「出張ですか?」


「そうだ。期間は一週間。行先は隣国、ラザーナ帝国の学校だ。そこで帝国の教育を学んでくる研修出張となる」


 ある日のこと。俺は学園長室に呼び出された。

 呼び出したのはもちろん学園長。この聖ブライスト学園の中で円卓に次いで偉い人となる。

 そこで開口一番、出張を命じられたというわけだ。


「一週間もですか!? 授業はどうするんですか! 自慢じゃないですけど、俺のクラスは俺が全部の授業を受け持っているんですよ? 一週間も留守にしたら彼女たちの教育が!」


「そこは問題ない。その間は代わりの先生が来る」


「代わりの先生!? 誰なんですか? 本当に彼女たちの先生が務まるんですか? 出張だって俺じゃなくてもいいはずです。同期のヘルマーでいいんじゃないですか?」


「円卓は君を指名だ。ナオ・クランク先生。円卓の決定は絶対だ。私とてそれに逆らうことはできない。たとえ君が特進クラス(ヴァルキュリア)をうまく導いていると言ってもだ」


「ですが!」


「何度も言わせるな。これは決定事項だ。ナオ・クランク教員にラザーナ帝国での研修出張を命じる。分かったらすぐに出発しなさい。現地での研修は3日後からだ。遅れないように」


 それだけ伝えられて学園長室を追い出された。


 ◆◆◆


「先生、出張に行かれるんですか?」


 教室に戻った俺に声をかけてきたのはメル・ドワドだった。

 彼女は手にプリントを持っており、それには俺宛ての出張についての事項が記載されていた。


「ああ。期間は一週間だそうだ。俺がいない間、他の先生が来るらしい。来週一週間はその先生が教えてくれる」


「わたくし、ナオ先生以外の先生から教わる気はありませんわよ?」


 不貞腐れたような表情を浮かべているリクセリア。

 俺と視線を合わせずに、身に着けた赤い鎖をチャリチャリと手でいじっている。


「……右に同じ……。図書館で自習する……」


 代わってアゼートはマスクとフードの隙間から出ている目でじっとこちらを見て、思いをぶつけてきた。


「わ、私だってナオ先生がいいです!」


 同年代の子と比べても背の低いメルは、俺の顔を見上げるようにして訴えてきた。

 口をへの字に曲げて不満を表しているようだ。


 三人そろって嬉しいことを言ってくれる。

 とはいえ、教師としてそれを良しとしてはならない。


「一週間だけだ。だから我慢して授業を受けてくれ。一週間だけとはいえ、俺は君たちに学びを止めて欲しくはないんだ」


「そうはいいましても……。

 そうですわ。ご褒美が必要だとは思いません事?」


「ご褒美?」


「ええそうよ。わたくし達、嫌々ながらに他人の授業をうけるんですもの、それに見合う対価があってしかるべきですわ。そう思いません事、アゼートさん、メルさん」


「……それはいい考え。……先生、ご褒美が無いと授業に出ないから……」


「ちょ、ちょっとお二人とも、そんな事を言ったら先生が困ってしまうじゃないですか」


「ならメルさんはご褒美無しでいいわね」


「い、いえ、私だってもらえるのならもらうほうが……」


 一応三人の中では常識人ポジションのメルまで陥落してしまった。

 しかたがないな……。


「帝国のお土産とかでいいか?」


「本気で言っていますの?」


 えっ、駄目なの!?


「……先生。きょうびの女子たちはお土産じゃあ喜ばない……」


「じゃあ何がいいっていうんだよ」


「それは先生自身が考えて欲しいところですが、この様子を見ると的外れな答えが返ってきそうですわ。なので今回はリクエストしましょう。簡単なことですわ。先生に一つ言うことを聞いてもらう。それでいかがかしら、ねえ二人とも」


「……いいね。……それなら一週間頑張れる……」


「わ、私もそれでいいです!」


「おいおい、なんでも聞けるわけじゃないからな。高価なものとか法に触れることとかはできないからな」


「それでいいですわ。簡単なことよ。先生の体一つあればできることですので」


 うんうんと他の二人も(うなず)いている。

 簡単なのなら、まあ、なんとかなるだろ。それで3人が真面目に勉強してくれるのなら。


「分かった。じゃあ、約束だぞ。俺がいない間もしっかりと勉強してくんだぞ」


 そうして俺は荷物をまとめ、出張へと出発した。

 目的地は隣国のラザーナ帝国。一体何が待ち受けているのかというドキドキと共に、初出張であるワクワクもあった。

お読みいただきありがとうございます。


怪しい雲行きなことなどつゆ知らずのクランク先生。

いったい帝国で何が待ち受けているのか。

次回をお楽しみに!

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