第一話三切 教師というのは生徒が大事だ
一つ1000文字程度です。これからもこのスタイルは貫きます。
あと、この作品はある小説に影響されて書きました。おそらく誰も分からない……。
もちろん、設定は友人のパクりで。
「来るなァァァァァァァァァ! 来るな来るな来るな!」
「テメェも道連れじゃぁ! 腐れ外道がァァァ! ハハハハハハハ!」
半泣きで走り始める京二郎は、思いっきり叫ぶ。
「誰か助けてくださぁぁぁぁぁぁい!」
危険のど真ん中で助けを請う京二郎に、ファイは楽しそうな声を発する。
「ははは、いい気味だな。復讐に燃える鬼と凶悪な魔物。二つに追いかけられて逃げられるとでも?」
「ブッ殺すぞ三十路女! いいからあの犬っコロどうにかしろよ! だから婚期逃すんだよ!」
京二郎の暴言に、ファイは先程までの怒りも忘れたようで、愉快愉快と笑っている。この教師、生徒を何だと思っているのだ。
「おいおい、それが人にモノを頼む態度か? 地面に頭叩き付けながら、『お美しいファイ様、どうかこの卑しい豚野郎をお助け下さいませ』くらい言えよ」
「テメェ本当に教師かァァァ!? こちとら切羽詰まってんだよ! もう必死なの! 生きるか死ぬかの瀬戸際なの!」
走る走る。後ろに迫る二つの脅威から逃れようと。だけど京二郎の体力はさすがに、限界に近づいていった。外道丸は執念だけで体を動かし、魔物は有り余る体力で京二郎へ近付いていく。
そして、とうとう外道丸の手が京二郎の肩を捕えた。
「捕まえたぁ……!」
勢いに乗っていた京二郎の体は倒れ、外道丸もまた力尽きたように倒れた。両者共に体力の限界を軽く超えている。
既に外道丸は悟りを開いたような表情で天を見ているが、京二郎は這いつくばりながら逃れようとしていた。だけど外道丸の手によって逃亡は阻止される。
「逃げてはいけません。世の中、諦めが肝心です」
「生きる事は諦めたくないよ!」
外道丸の非情な言葉に、京二郎は涙目になる。既に魔物は彼らに牙を突き立てようと、すぐ傍まで来ていた。
冷静に考えれば死ぬはずはないのだが、今の二人に冷静な思考をしろ、というのはあまりに酷である。
しかし、そんな二人に希望の光が。
「いやー、久しぶりに大笑いした。中々楽しませてもらったぞ。まあ、本格的にヤバそうだから助けてやるか」
「ファイ先生ェェェ! 愛してます!」
「キモいんだよ、ダメ生徒」
ファイが京二郎を貶す言葉を発した瞬間、辺りは光に包まれた。京二郎と外道丸は思わず目を閉じ、条件反射で互いに抱き締め合う。
数秒後、恐る恐る目を開けると、そこには妙齢の美女が立っていた。肩まである金髪に、白い肌。瞳の色は青く、知的な顔立ちをしている。眼鏡をかけ、スーツを着ている姿はどこかの社長秘書のようだ。
「あぁ、女神のようだ」
「なんて神々しいのでしょう」
前者が京二郎、後者は外道丸である。彼らにとって美女は女神に見えていた。
が、彼女は知的な表情を嫌らしい、京二郎にも似た笑みに変える。
「そうだ、敬え豚共。麗しのファイ先生が助けに来てやったんだからなぁ」
美女──ファイは余裕の態度で魔物と対峙した。