魔竜
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眩しく視界を遮る太陽。
幾日も歩き続けた足は、とうに限界を超えていた。
彼の目にはとてつもなく巨大な瓦礫の山が映る。
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この街、イーストクロックの街は、大陸北部にあるツラスカ国にある街だ。
商店街では今日も店主の声が悪目立っていた。
「おーうナオ!ちと小耳に挟んだんだけどよお!」
見えないように少し怪訝な顔をしてみる。
「おはようゲムル。また帰ってきたら聞くよ。」
「あいよ!今日はどこまで行くんだ?」
「今日は少し深いかな。」
「そうか。気を付けてな!」
「ありがとう。帰ってきたら寄るよ。」
いつも通る商店街の質屋のゲムル。ほぼ毎日彼と顔を合わせるのがいつもの事。
ナオはこの街に住む19歳の青年。身体は少し筋肉質で、あまり力仕事に困ることもない。綺麗な顔立ちをしてはいるが、右頬に5センチ程度の痣だけが目立つ。
彼は今日も暗い洞窟で、とある痕跡の調査に励む。
「昨日も何も出なかったからなあ。調査団ももう少し人員調節してくれないかなあ…」
呟きながら足を動かす。
ここ、イーストクロックでは、かつて起きた魔竜戦争の痕跡が1番大きいとされていて、魔竜についての調査に力を入れている。
魔竜とは、1000年前に人類と争い敗れたとされる伝説の竜と言われている。
言い伝えの中で、酷似する痕跡が見つかると、国を挙げての大調査が始まる。
それ程に、万国共通して魔竜の存在が信じられている。
調査自体は2世紀ほど続いてはいるが、未だ進展は少ないのも事実。
ナオはそんな時代に生まれ、幼い頃から聞かされた魔竜の話に興味を持ち、調査団に入ったばかりの、この世界ではありきたりな青年だ。
「相変わらずみんな来るの早いなあ」
「ナオはいつもゆったりし過ぎ!ほら早く行くよ。」
サキは昔から何かとナオに世話を焼く。ナオもそれにつられるように甘えてしまう。
「おはようサキ。サキも今日は深部まで行くの?」
「うーん…アタシは中間部で昨日に引き続きかな。」
「そっか。俺は今日は深部だから。」
「くれぐれも無理は禁物だよ!なにかあったらすぐ出てくるんだよ!」
「はいはい」
サキの心配をよそに、ナオは深部へ進む調査団に続き、深部の調査へ進む。