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「この動画、消してもらえますか?」
久々にYoutubeを開いたら、私の動画にこんなコメントが付いていた。
(なにこのコメント、気持ちわる……)
動画第一号のコメントがこれかよ。コメントってどうやって削除するんだ?このままでいいか。ググるのも面倒だし、一応初コメだし。
(だいたい見ず知らずの連中が視聴するんだから、変なコメントついてもおかしくないし)
疲れていた私は夕飯も食べずにそのままベッドに倒れ込んだ。
---三日後---
「この動画、消してもらえますか?」
目に入った瞬間、体中に寒気が走った後、胃がきゅっと縮小した。仕事でめちゃくちゃ嫌なことがあった日だったのでなおさら応えたのだ。
(何なの?)
今日は何もかも忘れてホラー・ミステリ系Youtuber「夏風」さんの数か月ぶりの新作動画を楽しむ予定だったのに……。Youtubeを開き、さあ再生しようと思った矢先に通知に赤いマークが付いたのだ。
当の動画を見返したがやはり変なところは一つもない。立ち入り禁止の看板もなければ他の人が映っているということもない。天気の良い7月の早朝に人気のない神社境内を散策したつまらない動画だ(神社付近を散歩するのが最近のマイブームなのだ)。
(まじで死ねよこのウンコ。うおー呪われろ呪われちまえ)
スマホ越しに負の念の塊を送った後はグーグル先生に相談だ。コメント右の縦三つの点をクリックして「削除」という項目を選択するとのこと。なんだ、簡単に消せるじゃん。
(うおー死ね死ねお前が消えろバカ)
私は目障りなコメント2つを削除して、夏風さんの新作動画「見ちゃった」をクリックした。
(下手な映画よりずっと面白いよな~)
特売59円のスナック菓子をつまみにソーダストリームで作ったソーダをあおりながら、細部まで作り込まれた1時間半の物語を心行くまで楽しんだ。
(あたしもこーゆー動画作ってみたいな。でもバカだし才能ねし、おまけにブスだからだめだわ。こーいうのって弟子入りできないんか?)
私はほんのちょびっと本人からの返信を期待して、応援メッセージを書き込んだ。
「夏風さん、動画お待ちしておりましたあ。今回もすっごく、すっっっごく面白かったです♡♡♡」
相変わらずつまんねコメントだ。文才ねーわ。他の奴らはもうちょっと気の利いたこと書いてんのに。でもこのこういうのは気持ちだからな。
---翌朝---
寝ぼけ眼でYoutubeを開く。朝、アパートを出るまでに怪談朗読をかけっぱなしにしている。数少ない私の日課だ。
(通知に赤マークが付いている!)
うおお!私のテンションは爆上がりした。きっと誰かが昨日のコメントに”いいね”をしてくれたんだ!もしかして夏風さん?
逸る気持ちを抑えきれず、北斗撃墜指くらいの勢いでベルマークに人差し指を当てる。2つも通知が来ているじゃねーか。
1つ目は「@1njoefさんがコメントしました「この動画、消してもらえますか?」」。
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