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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その16~至上主義

作者: 天海樹

トムとマイケルは夏休みを利用して

車でフロリダ旅行へと出発した。


ナッシュビルを出発して4時間余り、

出発が遅かったためすでに辺りは暗くなってきていた。

次の町で宿を探そうとさらに車を走らせた。

ほどなく行くと地図には載っていないが町が見えてきた。

すぐさまマイケルは少し異様な雰囲気を感じた。

トムは全く気にするでもなく

町に入ると宿を探しに行った。

マイケルがトムの帰りを待っていると、

数人の男が近づいてきたと思ったら

あっという間に拉致られてしまった。


地下の小部屋に放り込まれると男達はマイケルを取り囲んだ。

一人の男がマイケルの髪を鷲掴みにし

「この街はな白人至上主義なんだ。黒いのは目障りなんだよ」

と言って顔に唾を掛けた。

そう、マイケルは黒人だった。


そこへトムが連れてこられた。

マイケルの前に放り出され、

「これでこいつをヤレ」

と棍棒を渡された。

トムは男達の異様な圧に耐えられなくなり

こん棒を振り上げるが、

それを振り下ろすことができずにいると

「出来なければ白人だろうと同類と見なすぞ!」

と怒声が響いた。

すると

「いいからやれ。お前が助からないと二人とも終わりだ」

マイケルは小声でトムに言った。

トムは大声を上げて

振り上げたこん棒で彼を殴り続けた。

頬や瞼、そこかしこ腫れあがった姿を見て、

男達は「よくやった」と

トムに声を掛け笑いながら彼を連れて出て行った。


その夜トムは男達の目を盗み、

マイケルを抱えて二人で急いで街を出た。

「あれ、本気だったんじゃ…」

トムに言ったが、

彼は聞こえなかったのか、答えたくないのか黙っていた。


無事町を離れることができたが

トムはマイケルの容態が心配だった。


小一時間走ったところで町が見えてきた。

町に入ると今度はトムが違和感を感じた。

でもマイケルが心配だったので

すぐさま町の病院に連れて行った。

診察室にマイケルを放り込むと、

待合室のベンチに座り

顔の前で手を組み目を瞑ってマイケルの無事を祈っていた。


辺りに人の気配を感じたと同時に

後頭部に強い衝撃を受け、

気づいたら地下らしい小部屋に監禁されていた。

「黒人至上主義のこの街じゃ、

 白人は目障りなんだよ」

そう言ってマイケルを連れてきた。

立場が逆転した。

マイケルはこん棒を振り上げ、

「さっきの仮は返させてもらうぞ」

そう言って、思い切り殴り続けた。


「私には夢がある」

あのマーティンー・ルーサー・キングの名言が

生まれたのが1963年8月28日のことだった。

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