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激昂信念

「そ、んな、なんで」

「......」


村の入口、その近くにあるギルドで受付嬢として働くサラは、つい今朝まで生きていた門番が大怪我を負わされた事に驚愕と恐怖の感情を隠しきれない。


「もう一度言うぞ、この村にシーラが居るのはこのファングハンターが嗅ぎ取っている、これ以上抵抗するならこの村の建物一つ一つ燃やしていくぞ」

「っ!」


シーラという者の名前は聞いた事は無いが、恐らくこの騎士達が言っているのはブランの事だろう。


4日程前にセリナが連れてきたエルフ、何故彼らがブランの事をシーラと呼ぶのかも、何故人を殺してまで彼女を連れ戻さなければならないかも分からない、だが人間の騎士、ヒュラマイトの騎士団が村に攻めてきて誰かを探している、これだけ辻褄が合う、合ってしまう。


「っ、ぐぁ、にげ、ろ」

「っ!でも」

「ほう、まだ息があるか」

「っ!やめてぇ!」


門番が生きていると分かると、先頭に居る男、この騎士達の隊長である男が剣を振りかぶり止めを刺そうとする。


「はっ!」

「『ファイアボール』!」

「っ、ちぃ!」


その剣を弾くように、弓使いの冒険者が矢を放ち、続いて魔法使いの女性が火属性の下級魔法であるファイアボールという魔法の火球を放つ。


しかし、相手は1国の騎士団で隊長を務める男、流石に下級魔法とただの矢では仕留めきれないが、狙いは攻撃ではなく意識を逸らす事で、その間に身軽な格好をした男が傭兵を抱えて下がり、剣士が騎士に斬りかかり牽制する。


「くそっ!何がどうなってんだ!」

「わからん、だがこのままだと村が焼き払われてしまう事は確かだ」


あの日セリナがブランを拾って来たという事はまだ村に知れ渡っていない。


と言うのも、あの日ギルドに居た冒険者達はあの後依頼をこなす為に出発し、セリナは村を駆け抜けていたがセリナの家は村から少し外れた所にあり、村を通る時も裏道を通った方が近いからあまり村人に目撃されなかった。


だからこの場でブランが狙われている事を知っているのはサラだけ。


(だって、相手はあのヒュラマイトの騎士団、装備の質も、扱っている聖獣の質もこの村に居る冒険者とは比べ物にならないっ)


ファングハンター、ブレスワイバーン。


ファングハンターは嗅覚が優れており、その鋭い牙で獲物の喉笛を噛みちぎり集団で連携を取り獲物を確実に仕留める狼。


そしてブレスワイバーンは高温の炎を吐き出し、上空から敵を焼き払う翼竜。


魔物と違う点は、きちんと調教すれば指示に従う事で、他にも様々な種類の聖獣が居るが、扱いやすく増やしやすいこの2種類はヒュラマイトで養殖されている。


そして、どちらとも移動速度に長けている上に、雑食なので餌は敵を与えれば効率的に処理出来るから非常に管理も容易だ。


「焼き払え!」

「っ!まず」

「『ブリザードウォール』」


ブレスワイバーンが50体、ファングハンターが70体、そして騎士団が200人。


「.....まさか、またこうなるとはな」

「マスター!?」

「上空からの攻撃は私が防ぐ!お前達は地上の敵を!既に狼煙は上げてある、直ぐに援軍がやって来る!」


ギルドから杖を使いながら歩いて来たマスターは、魔法による吹雪で空からの火炎を相殺して街に居る傭兵や冒険者に指示を出す。


「っ、でもこの数は」

「何もお前達だけで倒せとは言っていない、魔法使い、弓使いは1箇所に纏まって敵の迎撃、近接戦闘が得意な者は円陣を組め、全員目の前の敵を1体逃せば10人の死者が出ると思え、回復魔法を使える者は魔力が枯渇しても使い続けろ、弱音は聞かん、守備に専念しろ!良いな!?」

「「「「「「了解!」」」」」」


マスターの指示により、10人の魔法使いと25人の弓使いが遠距離攻撃を、40人の近接戦闘を得意とする者達が魔法や矢の攻撃を抜けて来た敵を1体につき数人がかりで迎撃する。


「っ、怯むな!敵は我々の半分も居ない!盾を構えて接近しろ!接近してしまえば攻撃の手は緩まる!」

「俺達に構うな!当たっても構わん攻撃を続けろ!」


数も質も違い過ぎるこの状況、1つの犠牲で少しでも時間が稼げるならやむを得ない。


「........サラ、セリナの家まで何分で着く」

「え、えと、頑張って10分と少し」

「なら7分で行け、分かったな?」

「え?え、だってあの人は戦いには」

「行け、これは命令だ」

「は、はいっ」


吹雪を繰り出しワイバーンを牽制するマスターはサラにそう指示をすると、再びワイバーンの牽制に集中する。


「お前ら!後7分だ!それで私達の勝利は確定する!それまで死んでも死ぬな!良いな!?」

「あぁクソ!相変わらず人使いの荒いマスターだな!」

「そうか、お前は報酬が要らないか」

「全く持って最高のギルドマスターだと思います!」

「良いから集中しろバカ!」

「バカってなんだ!せめて脳筋にしろ!」

「変わんねぇんだよバカ!」

「はぁ!?脳筋は脳まで筋肉で鍛えられてるから強いだろうが!」


この街で1番強い冒険者パーティーの近接担当の2人が軽口を叩きながらも連携の取れた戦闘で前線を維持し、他の冒険者達が2人に続くがそれでもやはり徐々に前線が下がり初めている。


「マスター、このままでは」

「負けを考えるな、お前は仲間の援護だけを考えろ」

「ですが!」

「どのみちアタイ達が抵抗してもしなくても奴さんは村を焼き払うだろうよ!良いから黙って矢を撃ちな!」


戦闘開始から僅か2分、前衛と後衛の距離は半分にまで縮まってしまい、後衛に居る魔法使いや弓使いの冒険者達は徐々に戦意が削られていく。


マスターが魔法で援護をするが、上空からの攻撃を防がなければならないから中々地上の方まで援護しきれない。


(っち、あのバカ、こんな騒ぎでも来ねぇって事は寝てやがるな)


セリナと付き合いの長いマスターだが、狼煙まで上げているんだからあのお人好しが来ない筈が無い。


だが、この騒動が起きる原因になってしまった人物は来た。


「はぁ、はぁ、やめて、ください」


来てしまった。


「エルフ?セリナ以外のエルフなんてこの村に居たか?」

「は!?居るわけねぇだろ!バカバカ言い過ぎてお前がバカになったんだろ!」

「あぁ!?お前は脳が筋肉になって人を見る事も出来なくなったのか!?」

「あ!?......誰だあのエルフ!?」

「だからそう言ってんだよこのバカ!」


ファングハンターと戦う2人は新しく見る人物に驚きながらも阿吽の呼吸で撃退していくが、その間にもどんどん前線は下がり、村が荒れていく。


「ふん、やはり居たか第1王女を暗殺しようとした裏切り者め」

「なんだと?」


何故ブランが追われていたのかまでは知らなかったマスターは怪しむように騎士団長へと問いかける。


「貴様らが匿ったそいつは我らの国の第1王女が王族の儀を行う事を外部へ漏らし、あろう事かエルフ如きが騎士団に入団する事を薦めてくれた恩のある第1王女に剣を向けたのだ、あの者達に情報を漏らし自分が王女を救ったという功績を手に入れる為にな!」


互いの代表者が会話を始めた事で1度戦闘が中断され、騎士団長の言葉に村の冒険者や傭兵、村人達はどよめく。


ただでさえ得体の知れない人物が自分達の村を襲って来た襲撃者達の目標であり、しかも1国の王女を殺そうとした人物。


「けほっ、わたし、は、げほっ!げほっ!」

「さぁそいつを渡せ、それとも村を焼き払われ貴様ら諸共奴隷にされたいか?」


ブランは弁明しようとするも、まだ治っていない身体で走って来たせいで咳き込み倒れてしまう。


「わたしなら、いき、ます、だか、ら」

「......それをあのセリナが許すと思うか?」

「でも」


倒れたブランを守るように杖をついて前に出るマスター。


「ふん、貴様はそこそこ手練のようだがその足ではまともなに戦えまい」

「ほう?その割には私一人に苦戦するような戦力しか連れて来れなかったようだが?」

「なんだと?」


(後2分、と言った所か)


ブランが来た事で1度止まった戦闘。


「悪いが私は200年前に前線から引いた老兵、そんな老兵一人も討てないような戦力が王女暗殺未遂の大罪人を捕らえる部隊に選ばれたとは思わない、だとすればお前達は正規の命令を受けて来たとは思えんな」

「貴様、言わせてお」

「それに、騎士ならば第1王女、ではなく第1王女『様』、だろう?そしてエルフ如きなんて言葉を選んだという事はお前達はこの娘を少なからず嫌っていた、もしくは妬んでいた、という辺りか、大方エルフの身でありながら人間の王女に気に入られたこの娘を妬んでいた者が罪を被せた、という所か?」


戦いは何も力だけでは無い、言葉も立派な武器や盾になる。


「それにお前は今、『あの者達』、と言ったな?何故それを知っている?まるで王女の襲撃者を知っているような言葉選びだな?」

「貴様ァ......」

「どうした?貧しい生活で栄養が足りないのか?先程から、睨むだけで反論出来ないとは、まるで図星を突かれているようじゃないか」


特にこの状況、時間さえ稼げば勝てると確信出来ている。


「止めて、ください、私なら、どうなっても」

「女がそんな言葉を使うものではない、特にあいつ、セリナの前では、な」

「です、が、この、戦力では、それにかれゲホッ!騎士団ちょゲホッ!」

「......もういい、貴様ら全員ヒュラマイトの奴隷にしてやる!この私を侮辱した事を後悔するがいい!全軍突撃しろ!女は捉えて奴隷に!男は殺しても構わん!」

「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」

「や、め」


ヒュラマイトの王族に仕えている騎士達の中でも特に優秀の騎士が団長として選ばれ、部隊の役割に差はあれど団長となれば国でも上から数えた方が早い。


具体的には今ヒュラマイトで団長に選ばれている騎士は20人、そしてこの男は第8騎士団団長、つまり国で8番目に強く、団の役割は奇襲と侵略、攻める戦闘の専門家となる。


それが分かっているブランは自分だけ犠牲になれば良い、そもそもそういう覚悟でやって来たのに、まともに言葉を紡ぐ事も出来ず、倒れ伏すだけの自分に、セリナが好きだと言っていたこの村が自分のせいで蹂躙される事に涙を流すしか出来ない。


「心配するな、泣く必要はない」

「......え?」

「先ずは貴様からだ!老兵!」

「だめ、にげて!」

「止めろォ!」

「くそっ!やらせるかァ!」


マスターに騎士団長が剣を振り下ろし、冒険者コンビが止めようと駆け出す。


「言った筈だぞ?7分経てば、我々の勝利だと」


そして剣が届くよりも先に、マスターを守る為に駆け出した2人が次の1歩を踏み出すよりも先に辺りをビリビリと震わせる轟音と衝撃が襲う。


「な、んだあれは、木が降って来た、のか?」


衝撃と轟音の正体は2メートル程の木が地面に刺さった事で起こされた物だった。


そして息を吸う間も無く、更に大きな轟音と強い衝撃が辺りを襲い、マスターが魔法で張った障壁が壊されブラン達に強風と砂埃が襲いかかる。


「っち!一体何事だ!」


障壁も無く、防御態勢すら取れていなかった騎士達は吹き飛び、立ち上がった騎士団長が声を荒らげて辺りを確認する。


「ブラン、よく頑張ったね、その身体で、皆を守ろうとしてくれたんだね」


そしてマスターの後ろで倒れているブランに向けて、優しく、頑張った子供を褒めるような優しくで話しかける声。


「随分遅かったな、寝坊助」

「こっちは3日も徹夜してたの、少し遅刻したくらい許してよ」


砂煙が晴れ現れた、とても戦士とは思えない華奢な少女は先程とは違って少し気怠そうに呆れた口調で弁明する。


「やめて、ください、私がいけば」

「......そうだね、君をこいつらに渡せば解決するのかもしれないね」

「だか、ら」


そしてマスターに支えられて上半身を起こしたブランは立ち上がろうとする。


「でもねブラン、この村には君みたいな傷付いて、心が磨り減ってる女の子を差し出して明日笑ってご飯を食べる人は、1人も居ないんだよ?」

「....でも!それでは「大丈夫」っ」


まだ関わった事は無いがセリナがそこまで言うのだ、この村には良い人が沢山居るのだろう、だからこそ自分なんかのせいでそんな良い人達が傷付いてしまうのが受け入れられない。


エルフは非力な種族、精霊との契約を経て強力な魔法を使えるようになるが、単純な筋力で言えばその平均値は4種族の中でも最弱。


敵を背に優しく、ブランの心の氷を溶かしたあの笑みを浮かべて穏やかな声色で発せられる声はブランに安心感を与える。


「ここには、この村には」

「っ!あぶな」

「死ねぇ!」「奴は危険だ始末しろ!」「相手は精霊も居ないエルフだ!」「魔法さえ使わせなければ非力な種族!この人数なら」


だからブランは目の前の光景が信じられなかった。


「ボクが居る」


後ろから10人程の騎士がセリナに襲いかかって来たのを、いつの間にか手にしていた無骨な片手剣による軽い一振りで騎士団の最後尾まで纏めて吹き飛ばした事を。


「........う、そ」


魔法を使った?何かのスキル?はたまた見せてないだけで精霊と契約していた?


「ぐっ、き、貴様ァ」


否、セリナは魔法もスキルも使っていない。


単純な魔力による身体能力の強化と自前の筋力だけ。


「生きて帰れると思うなよ、愚図共」


放たれた言葉は先程とは真逆、天と地程の差がある程冷たく騎士達に重圧を与え。


騎士達が身構える時間も与えず、空気が爆ぜた。

ご読了ありがとうございました!


という訳で主人公は超脳筋ぱわータイプです、力こそパワーを力ずくで押し通す感じです。


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― 新着の感想 ―
[一言] わくわくしながらもお利口に待っています 続き早よ
[一言] >主人公は超脳筋ぱわータイプです、力こそパワーを力ずくで押し通す感じです。 ちょっと後書きィッ! 何を言っているのか分からない(錯乱中
[良い点] 筋肉バンザーイ┗(⌒)(•̀ω•́)(⌒)┛ 技も技術も筋肉が解決してくれますよ [一言] そうだね。脳まで筋肉だったら強いね(可哀想な子を見る目) マスターつっよ!全盛期だったらどのく…
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