第八話 祝・入学
春休みがやってくる。やったぁ
いよいよ入学式の日が来た。一年生はそれぞれのクラスの教室に向かい、全員集まった状態で皆で式場に行くことになっている。
「一年のFクラスは・・・」
アヌは今、学校内に張り出されている紙を見ていた。そこにはクラスごとに行く教室が書かれていた。
「俺は・・・西棟の七階か・・・他のクラスも・・・ん?東棟は?」
学園はまるで城のようになっており、東棟と西棟に分かれている。貼り紙を見る限り、西棟にAクラスからEクラスまでの生徒が西棟の教室に入るそうだ。ならば東棟はどうなのだろうか?と思ったアヌは東棟の方も見る。すると・・・
「・・・随分と優遇されてんな」
そう、東棟はSクラス専用になっていたのだ。完全に扱いが違う。
それも仕方ないことだろう。Sクラスは選ばれしエリート達、より質の高い教育をしたいだろうし、アヌ達のような所謂『落ちこぼれ』と関わってほしくないのだろう。
そしてロザリアとセルヴァは主席と次席。言わずもがなSクラスである。
「えっと・・・じゃあ、俺たち別だな」
「そうね・・・じゃあ、Eクラスでも頑張ってね、アヌ!」
「友達作り、頑張ってみるさ・・・」
西棟は左、東棟は右にあるため、そこでアヌ達は別れてしまった。アヌはなるべく当たり前の、普通の生活を送りたいと思っているが、いきなり友人二人が消えてしまった為、内心少し焦っていた。
アヌは一人でEクラスの教室に向かう。学園は城のような形をしているため、とても大きい。そのため、一階上がるのにも長〜い階段を登らなければいけない。
そして、Eクラスはそういうところでも不遇であり、
他のクラス含め、教室まで一番上の七階まで行かなければいけないのだ。上に登るだけでも体力は大分消費される。
そして、アヌはいよいよ教室の前にたどり着く。そして、扉をガラッと開けた。
そして、その瞬間アヌは悟る。『終わった』と・・・
「・・・もう皆友達いるのかよ」
アヌは一度冷静になる。確かに、全員が知り合いではないなどあり得ない話だったのだ。ユーピテル学園は王都の中にあり、生徒のほとんどが王都にいる子供。
アヌ達のように辺鄙な村から入学してくる方が稀なのだ。
そして、アヌは空いている席に座る。すると、隣の席に座っていた男子がアヌに話しかてきた。
「あのう・・・」
「?」
アヌは顔を上げて、男子の方を見る。メガネをかけていて、黒髪、可愛い系の顔をしていた。
「・・・なんだ?」
「あっ・・・と、いや、あの・・・あなたも、友達いないのかなぁ〜って・・・誰とも話してなかったから・・・」
「友達は・・・いる。二人ともSクラスだけど」
友達っつーか唯の腐れ縁だがな。
「へ、へぇ〜そうなんだ・・・」
そこで一旦話が途切れる。そしてその男子は俯く。しかし、次の瞬間、意を決したように勢いよく顔を上げた。
「あ、あのっ・・・僕と友達になりませんか!!」
「えっ・・・」
「いやっ、あのっ、いきなりで失礼だと思うんですけど、僕、今まで友達いたことがなくて・・・今日こそ、人生初の友達を作りたいと思っているというか何というか・・・とにかく、良かったら僕の友達になってください!!」
一気に捲し立て上げられて、アヌは一瞬だけポカン・・・と口を開ける。しかし、次の瞬間には、クスりと笑って答える。
「ああ、良いよ、俺も友達がいなくて丁度困っていたところなんだ。友達になろう」
「っ・・・!ありがとうございます!」
「とりあえず、お互いの名前を知ろうぜ、俺はアヌ。拾われたから姓はない。よろしくな」
「ぼ、僕はガネ・サルビア、よろしくお願いします。あ、アヌ君・・・」
「敬語は要らない」
「わ、わかr・・・わかった・・・」
「よし」
「じゃあ、これからよろしくね、アヌ君」
そしてガネはニコッと笑った。
そんなこんなで二人がほのぼの〜としているところに、思いっきり扉が開き、怖そうな女性が教室に入ってきた。
「全員静かにしろ、私はこの、一年Eクラスの担任、フィーナ・アルズヘルトだ。これから入学式があるため式場に移動する。全員廊下に並べ。順番はどうでも良い」
そうして、フィーナ先生はどかっとイスに座る。皆が並ぶのを待っているのだろう。すると、生徒が一人も外に出ないうちに、再び扉が開く。
「ん?・・・遅刻したか・・・」
そんなことを言いながら入ってきた男は・・・明らかに見た目不良だった。関わりたくない部類である。
「おい、ケニス・プラム、貴様、遅刻だ」
「・・・あんた誰だよ。担任か?いや、ちょっとまえ俺が遅刻した理由は・・・ぐっ!?」
ケニス、と呼ばれた男は遅刻した理由を説明しようとしたが、フィーナに胸ぐらを掴まれて強制終了した。
「理由は、聞かない。今回は一回目だから許すが、次からはどんな理由があろうとも遅刻は許されない。良いな?」
「ぐっ・・・ゲホッ・・・わかった、よ・・・」
そしてフィーナは手を離す。ほら、行くぞお前ら、何をモタモタとしているといい、フィーナは歩き出した。それに生徒達はついていく。
また、この様子を見て、アヌはフィーナに逆らうことを絶対にしないと誓った。そして、寮がケニスと同じにならないことを祈った。
ーフィーナ視点ー
フィーナは今、ある生徒のことが気になっていた。何の特徴もない唯のEクラスの生徒だ。フィーナの記憶によると、確かアヌという名前である。
なぜ気になっているのか?それはさっきの事件のとき、アヌの様子が、おかしい、とまではいかなくても、不自然、だっからだ。
フィーナがいきなり胸ぐらを掴んだとき、当たり前だが、周りの生徒は驚いていた。もちろん、アヌも驚いていたのだが、驚くのが、いや、驚いた顔を作るのが遅かったのだ。
ボーッとしていただけ、という可能性も考えられたが、それはないだろう、と思った。フィーナが入ってきたから生徒達の注目はフィーナに集められていたし、ボーッとするような隙間時間もなかった。
もし、あの驚いた顔が後付けだったのなら、アヌはまるで、喧嘩の世界が当たり前のような、今までそのような世界で生きてきたかのような振る舞いである。そう感じて、フィーナはアヌの正体が気になり出していた。
フィーナはもし、アヌと戦ってみたらどうなるだろうと考えた。魔力は少なそうだし、技術もなさそうに見える。しかし、フィーナは、勝てる未来が想像できなかった。