第四話 ユーピテル学園
いよいよ、アヌとロザリア達に入学試験の日がやってきた。
何処の入学試験なのか、それは・・・
王立ユーピテル学園である!
剣、魔法、体術、座学など・・・戦闘や、この先の未来に必要なものを学ぶ世界最高峰の学園である。
入試当日、ロザリアはガチガチに緊張していた。自分の憧れる勇者ユーピテルが卒業した所なのだ。入りたくて仕方がないのだろう。だからこそ落ちるのが怖い。
その緊張を誤魔化す為に、アヌに軽い口調で話しかけた。
「余裕そうね、アヌ。落ちる気はしない?」
「逆だな、落ちる気しかしない」
「嘘、顔が凄く余裕そうだもん」
「顔だけで判断するのは悪手だぞ。ちゃんと相手の全体を見なきゃだめだ。ほら」
アヌは自分の手足をロザリアに見せつける。生まれたての子鹿の様にプルプルと震えていた。
「まあ、俺のことはおいておいて、お前の方が多分緊張してるだろ」
「やっぱり・・・分かる?流石16年の付き合いってところかしら」
「そうだな・・・・・・それにしても、意外だな、お前ぐらいの実力なら受かって当然だと思うが」
「やっぱりね、落ちるのが怖いのよ。ユーピテル様に遠ざかってしまうし」
「完全な杞憂だな、お前が落ちたら明日は世界が滅亡してるだろう。今は自分じゃなくて、俺の、俺だけの心配をしてくれ」
「ふふっ・・・そうね、ありがとう、励ましてくれて・・・応援、してるね」
「俺は今励ましていたのだろうか・・・?」
*
アヌとロザリアは馬車の停泊場に着いた。
そして学園に行くための馬車に乗る。何とも立派な馬だった、あの逞しい脚で蹴られたら一体全治何週間なのだろうか。
*
馬車に乗って約二時間半、王都に着き、ユーピテル学園が見えてきた。
「凄いわね〜、発展してるわ。流石は王都ね」
「・・・はしゃぐな、騒ぐな、静かにしてくれ・・・」
「あっ・・・ごめん・・・」
アヌは絶賛馬車酔い中であり、なかなかにグロッキーだ。
そんな会話をしている間に、停泊場に着く。そこからは徒歩で学園まで向かう。
停泊場から学園までは案外近く、直ぐに門の前に辿り着く。
「これがユーピテル学園・・・デカいな」
アヌが率直な意見を述べていると、急に隣に現れた奴がアヌに話しかけてきた。
「お前も受験生か?」
「この門の前にいるって事はそうだろう。」
アヌはあまり長く話したくなかった。この様に初対面の人にグイグイ話しかけてくる「クラスの中心人物です!」みたいな奴と関わると、色んなことに巻き込まれる(酷い偏見)と思ったので、普通の学園生活を送りたいアヌとしては一刻も早くこの場から離れたかった。
アヌとしては初対面の人に対してちゃんと答えられてる時点ですごい事だしむしろ褒められたいところなのだ。
「あ、ああ、そっか、そうだな!・・・俺、セルヴァって言うんだ。受かったらよろしくな!」
セルヴァは聞いてもないのに自己紹介をしてきた。しかも、受かったらよろしくって、受かってなかったら悲しいやつだ。すると、セルヴァと同じ様に人に話しかけるのが得意なロザリアがセルヴァに自己紹介する。
「初めまして、セルヴァ君。私はロザリア、で、コイツはアヌ。ごめんね、コイツ初めて会う人と話すの苦手でさ。」
「いや、気にしなくて良いぜ。それに、セルヴァ君じゃなくて、呼び捨てで良い。」
「分かった。よろしく、セルヴァ。私もロザリアで良いから」
「オーケー!」
アヌは完全に会話に置いてかれていた。アヌは普通な学園生活を送りたいと思っていた。しかし、ここである事実に気づいた。友達がいないのもそれはそれで青春が遅れなさそうだ、と。そこで、コミュ強二人に意を決して話しかける。
「と、ところで、セルヴァ・・・君はどうして俺に話しかけようと思ったんだ?ほら、友達作りやすそうなやつとか、友達作りたくてしょうがない奴とかいるだろう?」
「お前もセルヴァでいいよ。で、何でお前に話しかけたか、だっけか?」
「ああ」
「そうだな・・・特に理由はないな」
「・・・意味がわからない」
やはり分かり合えないのだろうか。
「いや、見た瞬間に、なんとなくコイツだっ・・・て思ってさ・・・こんな事、俺も今までなかったから俺も意味わからんけど」
アヌはもう諦めていた。こういう奴は全部直感で生きているのだろうな、と。だが・・・
「・・・確かに、何処かで見た事ある様な・・・」
「何?会った事あったの?」
「いや、ないはずだが・・・」
「俺も会った記憶は無いな」
「そうか・・・」
ロザリアはアヌの異変を感じた。さっきからアヌは下を向いて微動だにしていなかったのだ。心配になったロザリアはさりげなくアヌの顔を覗き込む。
「アヌ?大丈・・・」
だが、ロザリアはアヌの顔を見て言葉を失う。アヌの顔は恐ろしかった。悲しみと怒りが混じった様な顔をしていた。
「・・・どうした?ロザリア」
「あ、いや・・・なんでも無い」
次の瞬間にはアヌの顔は元に戻っていた。そして、アヌは門の中に入って行った。ただ・・・「あ・・・よ・・・次は・・・」という誰にも聞こえない様な小さな言葉を漏らしながら。