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【序】 Blast

 ゴウン、ゴウン。

 静謐なる宇宙空間を彷彿とさせる闇の中で、どこか品のある機械音が木霊する。

 妾とその部下は、緊張の面持ちでコントロールルームに佇んでいた。


『ファイナルスキャン、スタート』

『了解、全基定位置。ファイナルスキャン、スタート』


 合計五〇基の遠隔スキャンユニットが“アレ”の最終チェックに入る。

 結果は分かりきっているが、それでもリラックスなんて出来やしない。それほどの“重み”があるのじゃ、この神器には。


『現地より報告──システム、オールグリーン』

『スキャンユニット、全基格納。砲身、格納待機。整備隊は至急退避を』


 インカムを装着した緑髪の少女が華やかな表情でこちらへ振り返る。妾もそれに応えるように大きく頷いた。


「ラランベリ様! 最終チェック完了だそうです!」

「うむ、報告御苦労! ポッピンラブキッス、ハルの現在地は知っておるか!?」

「えっ、ツッキーの……いえ、ちょっと分かりかねます……」

「至急呼んでくるのじゃ! 迫りに迫った神域侵攻、超遠距離部隊の準備は今まさに整った! 即刻神王に情報共有せねば!!」

「は、はい! 畏まりました!」


 駆けていく直属神使の背を見送りながら、震える手で眼鏡のブリッジを押し上げた。この妾ともあろうものが、震えを抑えられぬほど興奮するとは……。


「ふぅー……落ち着け、落ち着きましょう。私は一旦落ち着くべきです……」


 うっかり元来の口調に戻ってしまうほどには平静を保てずにいる。だが、それも仕方のないこと。

 モニター越しに、今しがた最終チェックを終えた最高傑作を見据える。


 遂に……遂に完成したのじゃ! 

 この妾が生涯の大半を費やして開発してきた、最大最強の神器が!


「ようやく、この時が……こんな時が訪れようとはな……」


 圧倒的に美しく、圧倒的に精巧。見る者全てが魅入ってしまうような神々しさを放つ巨大神器。



 呼称・最終撃滅輝力砲──『メルギアス』。



 これぞ、妾が培ってきたもの全てを捻出して造られた究極の迎撃神器。

 神域の絶対守護を目的に、妾がコツコツ造り上げてきたとっておきの隠し玉。

 神域に悪魔が入り込むことなどないと思っていたために、正直ほとんど趣味の領域だった。周囲からも「碌に移動もできない迎撃特化の神器なんかいつ使うんだ」と白い目で見られ続けて幾歳月……奇しくもガルヴェライザの襲来によって日の目を見ることになった。

 確かにこれは構造上の問題で砲台に固定されるため、別の場所に動かすことは出来ぬ……が! そのデメリットを補って余りある威力を持つ! そこだけは譲れぬ!


 問題は砲撃を放つ為に不可欠な膨大なエネルギーの供給方法じゃが、それは神域の総力を掻き集めれば如何様にもなる!


「こちらの準備は整った……あとは……其方じゃぞ、ハル」


 まず、大前提として。

 ハルがガルヴェライザとまともに戦えなければその時点で神域は滅ぶと言っていい。

 メルギアスの威力は確かに絶大じゃ。間違いなく『ドゥーム』相手でも通用する……が、奴を確実に殺しきれるかと聞かれれば流石に不安が生じる。


 やはり、結局はハルじゃ。神王じゃ。

 我等が救世の主よ……最後のピースは、其方の完全なる神王化じゃぞ……!!


「小耳に挟んだ情報によれば、どうも順調に事が運んでいないようじゃが……」


 白衣のポケットに両手を突っ込み、一人の少年の顔を想起する。

 人間から半神使、更には神王と化した数奇な運命を歩み続ける彼は……よくやってくれている。

 じゃが、神王化はセラフィオス様とハルにしか理解し得ぬ事象……我々では助力出来ぬ。


「……間に合えば良いのじゃが」


 ポツリと零す。

 悪魔王の侵攻宣告から、時は流れ……ガルヴェライザが来るまでの猶予は幾許もない。

 頼むぞ……ハル……!


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