1日目 その4
お久しぶりです。
ちょっとずつですが投稿再開します。
京都に行きたいです。
そこからはみんなでホテルに戻り、浅川達と分かれて部屋に戻ってきた。
部屋に備え付けてあるシャワーを浴び、大移動や見慣れぬ景色に消耗した身体を休めつつ、片山と本日の反省会をしようとベッドに座ったのだが……。
「相棒! 申し訳ない!!!」
俺が身体を置くやいなや、ものすごい勢いで謝られてしまった。
「……何かされた覚えがないんだけど」
「いや、せっかく場を整えてくれたのに、服を見るのに夢中になってしまった……」
「あぁ、それなら仕方ないんじゃないか? 岩城さんだって速攻で消えちゃったし」
片山一人が突っ走って行ったなら謝罪も頷けるが、岩城さんも彼に負けず劣らずの勢いで駆け出して行ったのだ。
であれば、片山が服への気持ちを抑えていたとしても結果は変わらなかったように思う。
「そ、それは……確かに」
「それで、そういうところも好きなんだろ?」
「よくわかってるな! 引きもせず、むしろ俺を越える勢いで飛び出した岩城さんはやっぱり運命の相手だと思うんだよ」
似たもの同士ということだろう。
教室内?でキラキラ輝いている片山と、席について読書に耽っている岩城さん。
外面はお世辞にも似ているとは言えないが、好きなものにかける情熱は互いに並々ならぬものがある。
「ということで、明日の作戦も是非一緒に考えて欲しい……!」
「もちろんだ。明日は伏見稲荷大社だったよな」
「そうだな。着物も着る予定だし、岩城さんの着物姿を見るのが今から楽しみで仕方がないぜ」
そういえば、着物か……。
着物を着るという非日常の下で、片山と岩城さんを二人きりにすれば、そういう効果的なもので二人の仲が縮まるかもしれない。
上手いこと誘導できれば使えるな。
「なら、浅川が打ち合わせに行っている時に、片山と岩城さんが二人で行動できるようにするっていうのはどうだ?」
方法はまだ未定だが、まぁきっと良い作戦が考えつくだろう。
しかし、俺の素晴らしいひらめきとは裏腹に、片山は何故だがぷるぷると震えている。
「あ、相棒……」
なんだ?
俺は彼を怒らせるようなことを言ったつもりはないんだが、何かが片山の逆鱗に触れてしまったのかもしれない。
とりあえず聞いてみるか。
「片山、どうしたんだ?」
「お前ってやつは……天才なのか!?」
あぁ、心配して損したな。
「よくそんな天才的な案が思いつくな? 前世は有名な軍師とかだったのか? 宮本軍師だったのか?」
「宮本ってどっちかっていったら武士だろ」
「武士で軍師か! すごいなぁ!」
だめだ。興奮状態で話が通じない。
そう思っていると、いきなり彼の動きがピタッと止まる。
「……片山?」
「でも……着物姿の岩城さんと二人きりになったら、俺は気絶してしまうかもしれん……」
「それはそれで面白いから良いと思うぞ」
是非とも動画に収めておきたいものだ。
「話は変わるが、片山は今日どんな古着を買ったんだ?」
俺は浅川に勧められたブラウンのセットアップを購入したが、オシャレベルの高い片山がどんな服を買ったのかとても気になる。
今後の参考になるかもしれないしな。
問いを聞いた片山は、先ほど購入した古着の入っている袋をベッドの脇から取ってくると、一着ずつ取り出して紹介してくれた。
「まずはこのパンツだ。ロシア軍だかなんだかが履いていたものらしいぞ」
最初に取り出されたのは、カーキ色で若干ゴツゴツとしたパンツだ。
ポケットが四つほど付いているのは、それほどに持ち物が多いからだろうか。
膝のあたりまで膨らみ、その後裾にかけて細くなっていくフォルムが美しく、履いてみると独特の動きがあって面白そうだ。
「かっこいいな」
「だろ? 次が……これだな」
次に彼が取り出したのは、薄いブラウンのジャケットだ。
しかし、俺が買ったものとは違い、少々オーバーサイズ目で、襟元はさらに濃い色になってる。
生地の柔らかさ、裏地の暖かそうな感じから、今後の季節にピッタリの一枚だ。
「可愛いな。襟元が特に好きだな」
「よくわかってるな! コーデに柔らかさが出て、背伸びしてる感じが薄れるかなって」
確かに、これなら高校生らしさも取り入れた格好ができるだろう。
そこまで考えて服を購入したというのは流石という他ない。
「それで、最後がこれだ」
それは、大きめの黒いTシャツだった。
前面には堂々と、ちびっこから大人まで幅広く人気のあるテーマパークのキャラクターが描かれている。
先程までと比べると、随分可愛らしいチョイスだな。
「ちょっと意外だな」
「だろ? でもな……これを見てくれ」
そう言って片山は、もう一枚、サイズ違いの同じ服を取り出した。
「もしかしてそれは……」
「そう! 俺の告白が成功したら、岩城さんとペアコーデがしたくてな!」
「随分気が早いな」
今から付き合ってからの事を考えるなんて。
だが、それくらい気合が入っているなら、成功する確率も上がるというものだろう。きっと。
「……もし振られたら、一緒に着てくれるか?」
「……片山が小さい方着るならな」
「ギチギチのパツパツだぞ!?」
もちろん嫌である。
そんな話をしているうちに消灯時間も近付いて、俺たちは明日のためにしっかりと休息を取ることにした。