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平和な魔王は静かに暮らしている……はず。  作者: ぬるま湯
始まりの物語
9/19

メイドたちと墓守ちゃん

何ヶ月ぶりだろう。みなさんお待たせしました。こんなに更新が遅い作品を読む人がいるのだろうか。

 あれから何度か墓守ちゃんの様子を見ているが、未だに話せていないようだ。

もしかしたら、墓守ちゃんは人見知りなのかもしれない。

私とは初めて会ったはずなのに、リェナスでもあると知っているからか自然に話せている。

メイドたちとの付き合いも長いのだろうが、ミスィーへの対応とそんなに変わらない気がする。

『墓守は、我が城に連れてきたとき以外はメイドと話す機会がない。頻度も少ないし、毎回あんな態度では親しく話せる仲にはならないだろうな』

え?墓守ちゃんってあの墓所に住んでるの?

『ああ。心配するな。衣食住しっかり用意してある』

違う、そうじゃない。他の墓守を知らないからわからないけど、墓守は普通墓所に住むもの?

『墓守のことは一旦置いておけ。ときにフィスよ、メイドの相手を忘れてはいないな?』

このエロ魔王は、それしか考えてないじゃない。

『そうだな、今日はエリザだな』

ちょっとは状況を考えなさいよ!

この後、リェナスが無理やり入れ替わってタイムリミットまで遊んでいたため、墓守ちゃんを見守ることはできなかった。



「魔王様、今日はエリザを選んでいますね」

長い沈黙に耐えられず墓守様に話しかけてみる。

「………」

いつものこと。私たちが話しかけても返ってこない。自分から話しかけようともしない。いつもの墓守様。

気まずい。

「流しますね」

ゆっくりとお湯で泡を流す。

ボサボサだった髪は水の重さに負けまいと元の状態に戻ろうとしている。

その様子を少し眺めていると、墓守様から微かに声が聞こえた。

「なんですか?墓守様」

できるだけ緊張させないようにやさしく問いかける。

「…ぁ、あの、ね。さっき…。みしーのこと、…なんだけ、ど」

「ミスィー様ですか?先ほど魔王様によって引き上げられましたが」

「そーじゃなくて、えっと…その」

ミスィー様を心配して聞いてきたのではないと。

「みん、な…たのしそう、だなって。みしーと」

「ミスィー様と仲良くなりたいのですか?ご希望でしたら私たちがお手伝いいたしますが」

私の言葉に墓守様は首を振る。

「みしーも、そう。…だけど、みんなも…、みんなとも、たのしく、したい」

「私たちとミスィー様、みんなと仲良くなりたいのですね。わかりました。皆に伝えておきます」

墓守様の意図をくみ取ったと思い、そう発言したが、墓守様は俯いている。

「違いましたか?」

「…んーん、ちがわない。でも、いーたいのは…べつ」

と再度聞き出そうとした時、背後に気配を感じ墓守様を背に隠し警戒態勢に入る。

「ちょっと、要注意危険人物みたいに扱わないでよ!」

そこにいたのは、予想通りミスィー様だった。

「また沈められたいのですか?」

「あらら。その様子だと墓守ちゃん、まだ話せてないんだね」

ミスィー様は背後の墓守様を見てそう口にする。それに墓守様はコクッと頷いた。

「はぁ、面倒だから一回しか言わないよ」

と言って、面倒くさそうに頭を掻きながら話し始める。

「あんたたちメイドがやってるそれ、墓守ちゃんを守るー的な?やめてってさ。なんで墓守ちゃんに対してそうしてるのかは知らないけど、本人は皆で笑って、お話して、じゃれ合って、上下関係とか関係なしに接して欲しいんだって。ま、すぐに変えるのは難しいだろうけどね」

その言葉に私は驚き、背後の墓守様を見る。

モジモジと恥ずかしそうに俯く墓守様。ミスィー様の言っていることは正しいのでしょう。

「そうだったのですね。わかりました。それも含めて皆に伝えておきます」

「まだメイドが残ってるね。友達と話す時みたいにできない?」

友達ですか。友達、友だち、ともだち…。

「は、墓守…ちゃん?」

私がそう呼ぶと墓守様はパアッと笑顔を咲かせる。

「よかったね、墓守ちゃん」

ミスィー様の言葉にコクコクと頷く墓守様。

「ぁ、あらためて…よろしくね?えっと…」

「ミューとお呼びください」

「みゅう?みゅう!」

少し発音が違いますが今はいいでしょう。

墓守様の件が片付くとミスィー様は「まだまだだなぁ」と笑いながら去っていった。



 やることをやり終えてお風呂から上がると、着替えを終えた墓守ちゃんが待っていた。

私が出てきたことを確認するのと同時に駆け寄り、笑顔で話しかけてきた。

「いいたいこと、いえた!ありがとう、りぇなすさま?」

「今はフィースだよ。よかったね、伝えられて」

「うん!」

子供っぽくてかわいいなぁ。リェナスみたいな見た目詐欺じゃないし。

『墓守は見た目よりは少し上だぞ』

え!?うそだ。やめて!私の墓守ちゃんを壊さないで!私より年上だったら嫌だ!

『………』

沈黙で返さないで!

などと話しているとメイドに腕を引かれた。

「魔王様、濡れたままでは風邪をひいてしまいます」

「ああ、うん。ありがと」

お風呂上がりだということを忘れていたよ。

しかし、誰かに身体を拭かれるのはまだ慣れないなぁ。慣れたくないんだけど。

髪を乾かしてもらうのはよくミスィーにやってもらっていたから良いとして、うーんやっぱり違和感が…。

と考えているうちに着替えも終わり、食事の時間となった。

料理をおいしそうに食べる墓守ちゃんは見ていて癒される。

「かわいい、癒しだ。そうだ!これも食べていいよ!」

と言ってミスィーは自分の分を墓守ちゃんのお皿に渡す。墓守ちゃんは食べるのに夢中で渡されたことに気付いていない。

「ミスィー様、毎日の献立はそれぞれのバランスを考えて作られています。料理の受け渡しは控えてください」

ミスィーの行動にメイドから注意が入る。良いじゃんちょっとくらい、とミスィーが言い返すとメイドとミスィーの口論が始まった。

村にいた時より賑やかだな。

『我もここまで賑やかな食事は初めてだ。メイドも墓守も良い顔をしている。感謝するぞ、フィス』

リェナスから感謝されるなんて、なんかムズムズする。

『いつまでもこの光景を眺めていたいものだ』

お年寄りみたいなこと言わないの。仮に見られなくなるのだとしたら、穴が開くほど見ておけばいいのよ。

『…、そうだな。そのためにはフィスよ、皆を守れよ』

このリェナスの言葉はとても重く感じられた。

魔王として、家族として、リェナスの力を借りなくとも守れるようにならなくてはと、皆の笑顔を眺めながら強く決意した。

『ならば、明日から厳しい特訓をしようではないか。楽しみにしていろよ』

どうやらリェナスの中のスイッチを入れてしまったようだ。私は明日死ぬかもしれない。

食事の後、明日よ来ないでくれと願いながら今日の残りの時間を墓守ちゃんと遊んで過ごすのだった。



みなさん、明けましておめでとうございます!ぬるま湯です。1年ってあっという間ですね。更新が遅くてすみません。こんな私ですが、今後もよろしくお願いします。

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