墓守
あけましておめでとうございます!
リェナスが領地を得てから、しばらく挨拶回りの日々だった。領地の境にある村はもちろん領内の町村すべてに出向き、リェナスが復活したことを伝えて回る。町村の数は少ないのだが、各場所で宴が開かれるためなかなか進まなかった。
私は挨拶回りが終わった後、城でぐったりしていた。連日の飲酒で身体が思うように動かないのだ。
『情けない。あんなもの酒のうちに入らんぞ』
リェナス、私の身体なんだから考えればわかるでしょう?
『フィスは普段酒を飲まんのか?』
飲むけど少しだけよ。飲みすぎてもいいことなんてないからね。
『ふむ。さては悪酔いして迷惑でもかけたな?記憶が残る形で』
なッ!?そ、そんなわけ……あるわよ。ありますぅ!それはもう死にたいくらいにね!
『キス魔にでもなったか』
なんで、なんでわかるのよ。
『ただ我の泥酔状態に起こることを言ってみただけだ。似た者同士だな』
はぁ。これじゃリェナスのことエロ魔王とか言えないじゃない。
『話は変わるがフィスよ。今日の夜は墓にいくぞ。我が領唯一の墓所だ』
挨拶回りの次はお墓参りね。
日が暮れ、月明かりに照らされる墓所は幽霊でも出てきそうなほど不気味な場所。のはずなのだが…。
「なにこの子めっちゃかわいい!」
墓所に似合わない言葉を叫びながらミスィーは飛び出す。眼前にはローブを纏いそのフードを深々と被っている少女。ミスィーが少女に抱き着こうとした瞬間、ミスィーの身体は宙に浮いた。羽ではなく何かに持ち上げられるように。
「うわわ!わ!わあぁ!」
「…………。」
少女に魔法を使った形跡は見られない。魔法以外に物体を浮かせるなんてありえない。
そう考えているとミシミシッという音が聞こえ始めた。
「う、うぐ…やめッ」
「…………。」
少女にやめる気配はない。このままだとミスィーが危ない!
『代われ』
「墓守。我だ。……わかるな?」
「…………。」
リェナスに墓守と呼ばれた少女はコクリと頷き、ミスィーを解放した。
「ちょッ、いきなりは、、うぎゃッ!」
解放が突然であったためミスィーは地面に落下してしまった。
「墓守。ミスィーはうるさいが悪い奴ではない。優しくしてやれ」
「…………。」
再びコクリと頷く。少女の顔どころか声もわからない。さっきから身動き一つとっていない。
今私にわかることはミスィーとは相性が悪いということ。ミスィーは何もわからないということが大嫌いで、何が何でも聞き出そうとしてしまうのだ。
「きみ、名前は?」
ほらね。
「…………。」
「なぁんで何も言ってくれないの?」
「…………。」
「ねえねえ!」
「…………。」
「ねえってば!」
「…………。」
「ねえぇ~ぇ」
「…………!」
再びミシミシという音が聞こえる。さすがの墓守ちゃんも我慢ができなかったらしい。
「痛い痛い!ごめんなさい許してほんとごめん死んじゃう、死んじゃうから痛いぃ!」
あれはどうやっているんだろう。
『墓守は世にも珍しいネクロマンサーなのだ。簡単に言うと死霊と意思疎通ができる』
ネクロマンサーって本の中だけの話だと思ってた。本とは違うの?
『我はよくわからんな。その手の本は読んだことがないからな。ちなみに本ではなんと書かれているんだ?』
えっとぉ…死霊を操ったり死体でゾンビを作ったり、あとは死者を蘇らせたりかな。
『そんなことはできないな。あくまで死霊と意思疎通ができるだけで、必ず死霊が従うわけではない。死霊にも意思があるからな。そして、死霊が我々に直接触れることができるのは、墓守の魔力を利用しているからで、そのせいで墓守は魔法を使えない。おそらく、ミスィーの目には何も見えないだろうな。それと墓守には名前がある。だが教えることはできない』
それはどういうこと?
『ネクロマンサーの能力は本人に害を及ぼす可能性が高くてな。それを格段に引き上げてしまうのがネクロマンサー本人の名前だ。名前というのは個人を特定するパーツで一番大きい役割を果たす。魔法陣に発動対象として最優先で組み込むくらいにな。我々は魔法だが死霊の場合は特殊でな。奴らは呪いに使うんだ』
呪い、本には対象を急激に衰弱させたりあらゆるデメリットを与えると書いてあった。
『ざっくりとした内容だが、まあそんな感じだな』
そっか。だからリェナスは名前ではなく役割の「墓守」と呼んでいるのか。
と、リェナスと話し込んでいるうちにミスィーは許されたらしい。
『言い忘れたが、墓守がしゃべらない動かないのは墓守の性格故だ。あと墓守の肌は了承を得てから見ないと死霊に激怒されるぞ』
え、それもう死霊無害じゃない?名前バレしても大丈夫じゃない?
『日に何人死者が出ると思っているのだ?』
浅はかでしたすみません。
『とにかく、墓守との会話はよく考えてするように。ミスィーには後で伝えておけ』
わかった。じゃあ、このまま墓守ちゃんとの用事済ませちゃって。
「墓守。我とこの身体を切り離すことは可能か?」
「…………。」
墓守ちゃんは首を横に振った。
「ふむ。そうか、では城に帰るぞ。ここに残るかは好きにしろ」
「…………。」
墓守ちゃんはコクリと頷き近づいてくる。そして私の手(今はリェナスが主体)を握りリェナスの魔法を待っている。リェナスは空いている反対側の手でミスィーを抱え、城へ帰った。
リェナスの魔法で帰った場合、死霊たちはどうなるのだろうか。
……墓参りじゃなかったんだ。
どうも私です。年が明けましたね。はい。……。はやいなぁ。次寝て起きたら12月なのでは?なんて思ったりして。言うこともないので、、また次回!本年もよろしくお願いします。