魔王レントモルド
お待たせしました。
「あの人大丈夫かな」
ミスィーは心配そうにレントモルドのいた場所を眺めている。
リェナスの魔法で魔王レントモルドが生き埋めにされてから10分程経過している。
「心配いらない。あんなので死んでいたら魔王なんて務まらないからな」
「そうそう。いつものことだから気にしない気にしない」
「ひぃ!」
「今出てきたとk…ぐほぉッ」
驚いたミスィーの回し蹴りがレントモルドの脇腹に当たり壁まで吹き飛んだ。
小さくメキッと音がしたが…大丈夫だろう。
「…フフッ、いきなり後ろに立つからだぞ。レントモルド」
「いたた…。まいったなぁ。最近の女の子ってこんなに強いのか?失礼したね。お嬢さん」
「え、あぁ~はい。全然大丈夫です。あの、骨は無事ですか?」
ミスィーったらお嬢さんって言われて緊張してるわ。
「2本くらい折れましたが大丈夫ですよ。固定しておけば繋がるので」
「本音は?」
「ちょーいてぇw。なにあれ、やばいって」
リェナスが聞くと突然口調が変わった。さっきまでの雰囲気は全くない。
『これが普通なんだ。あんな堅苦しい喋り方は違和感があって気持ちが悪い』
「で?で?何しに来たの?あ、自己紹介しとく?俺はレントモルド。魔王だよ」
「えっと、ミスィーです」
あ~ミスィーが混乱してる。
「リェナスも見ない間に成長したんじゃない?」
「してない。我の身体は既に無くなった。知っているだろう」
これ私も名乗った方がいいよね?リェナス、代わって。
「……どうも。フィースといいます。この身体の持ち主です」
「へぇ。よろしくね、フィースとミスィーちゃん」
なんで私だけ呼び捨て?
変な人だけど、やさしい人なのかな?
『どうだかな。だが、頼れるヤツではあるな』
見た目はいいのにちょっと残念感がある。
黒い長髪ストレートで整った顔立ちに翡翠の瞳。身長は高めで服の間から見える身体は鍛えているのがわかる筋肉の付き方をしている。細マッチョだ。
『以前本人に聞いたのだが、モテるために鍛えているそうだ』
私の彼に対する好感度が下がりました。
て、時間がないよリェナス。話を進めないと。
『おっと、そうだったな』
「おい、約束を忘れてはいないよな。今がその時だ」
「覚えているとも。僕とリェナスは友達だからね。でも何もなしにアレを返すのはつまらないなぁ」
アレって?ていうか約束?
『色々あって我の魔王としての領地を預けていたのだ。それを返してもらいにきたのだが…』
なるほどなるほど。つまりレントモルドは面倒な人であると。
「なに、そんなに構えないでよ。簡単なことさ。ミスィーちゃんが僕の出す問題に答えるだけ。先に言っておくけどリェナスは口出ししないでね」
ミスィーはまだ混乱しているようだがなんとか話についてきている。え?私?と自分を指さして確認している。
「ちなみに答えない、不正解の場合は返しません。それじゃあいってみよ~!」
「問題。魔王レントモルドはどんな系統の魔法を使うのか答えよ。ヒントは3回まで可能。リェナスに聞くことは不可。制限時間はなし」
〈魔法〉体内の魔力を変換し発動させる。基本的に一人一つの系統しか扱えない。
〈魔法の系統〉魔法を属性で分類した区分のこと。火・水・風・土など様々である。
「答えていいの?」
「おっと、ノーヒントかい?相当自信があるようだ。答えてもいいけど間違ったら領地は返さないからね」
「土でしょ?」
「は?……え?ちょ、ちょっと待って。え、おかしくない?」
レントモルドが動揺するのは最初から決まっていたことなのだ。
リェナスは気づいていたんでしょ?
『ああ、ミスィーは珍しい目の持ち主だ。それよりもレントモルドの顔を見たか?滑稽だったな』
確かに、口をポカーンと開けたままで目を見開いて…笑いを堪えきれなかったよ。
「で?正解なのか?早くしろレントモルド。ククク…」
「正解だよ!笑うな!リェナス、最初から知ってたな」
「ああ、お前が考えることは大体わかるぞ。なにせ我とお前の仲だからな」
「くそ、返すよ。あーつまらないつまらない」
そう言いながらレントモルドは左手の手袋を外しこちらに手を差し出す。手の甲には紋章が刻まれていた。
その紋章が光ると同時に私の右胸の辺りがひどく熱を帯びた。今の主導権はリェナスなので動じていないが私と感覚は共有している。焼き付けられているような痛み。魔石の件に比べればそんなに痛くはない。
落ち着いた時には胸にレントモルドのとは違う紋章が刻まれていた。
『これが我が魔王である証だ。大丈夫か?説明不足だったな。許せ』
いいよ、これくらい平気。それより急がないと帰れなくなっちゃうよ。
「レントモルド。ありがとうな」
「な、なんだよいきなり。そんなこと言うようなヤツじゃなかっただろ」
「そうだったか?まあいいだろう。細かいことは気にするな。ではまたな。ミスィー、いくぞ」
「気をつけろよ」
今のはどっちに対する言葉なのだろう。
皆さんここまで読んでいただきありがとうございます。私です。時間が空きすぎて色々と忘れています。後書きもどう書いていたかわかりません。次には戻っていると思います。ではまた!