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平和な魔王は静かに暮らしている……はず。  作者: ぬるま湯
新たな魔王の歩む道
18/19

贈りもの

いつもより早い投稿ができた。よかったぁ。

 エルバスから帰還し転移魔方陣のある部屋から出ると早々にミスィーに泣きつかれた。

「やっと帰って来た!フィー!早くアレなんとかして!」

 突然アレと言われても何もわからない。動転しているミスィーからは何も情報を得られないため近くのメイドから事情を聞くことにした。話を聞くと突然城門の前に大型の魔獣が現れ微動だにしないらしい。見た目は狼に近くそれぞれの脚に鋭い刃が生えており、暴れだすと甚大な被害が出ると判断し刺激しないように様子を見ている状態だという。

「なるほどね。ありがとう。ところで、今日レントモルドが城に来なかった?お祝いの品があるって聞いたんだけど。」

 聞くなりメイドは「はい、そちらはメイド長が預かっております。」と答えた。私がありがとうと手を振るとメイドは一礼して持ち場に戻っていった。魔獣の様子が気になるところだが、とりあえず帰還の報告も兼ねてメイド長をこの場に呼ぶ。

「おかえりなさいませ魔王様。いくつか報告があります。まず城門前の魔獣についてですが、その様子だと既に把握しているようですね。では次についてですが、こちらをどうぞ。」

 と言って取り出しのはプレゼント用に包装された箱だった。

「レントモルド様より魔王様以外開けてはならないと念入りに注意されたため中身の確認はできておりません。何を考えているのかわからないお方です。警戒はしておいた方がよろしいかと。」

 メイド長の忠告に頷きゆっくりと蓋を開ける。半分ほど開けたが何も起きずそっと中を覗く。そこには一枚の紙が折りたたんであるだけだった。何事もなかったことに安堵し紙を開く。

『残念だったね。何か起こることを期待していたと思うんだけどパッと思いつかなかったんだよね。あーあ。ビクビクしながら開けてたならその様子を陰で見ていたかったなぁ。』

 あのヒトは煽らないと話すこともできないのか?まあいいや、続きはっと…。

『さっき渡した紙に書いたお祝いの品だけど、実はちゃんと用意したんだ。気に入ってくれると嬉しいな。薄々気付いてると思うけど城に置いといたアレね。偶然うちの近くで見つけて捕獲したんだ。人間たちの分類だと希少種らしいよ。詳しくは調べてみてね。あ、言っておくけど懐かなかったとか、飼うのが面倒だからじゃないからね!絶対違うからね!』

 ここで終わってる…。まったく、捕獲しても扱えないなら意味がないのに。

 魔獣は凶暴だが知性や理性が無いというわけではない。許可もなく縄張りを犯されれば排除しにかかるし、きちんとした信頼関係を築けば手懐けることだってできる。ただその最初の段階で魔力の相性が必須となる。それを無視するために人間が作ったのが洗脳の魔道具。私が一度付けられた物もその類だ。

 さて、暴れられても困るしどうにか対処しなければ…。強さがわからない以上十分に警戒しなくては。そのためにまずは彼らを呼ぼう。



「ただいま到着しました。」

「あいつを倒せばいいんだな!」

「まだ倒すって決めたわけじゃないから落ち着いてください!」

 招集したのはネグレスとライオットさん。私が戦いにおいて最も信頼できる二人。そして城にいるヒト全員。ひとまずこれから行う作戦を伝える前に頭の中で整理しよう。

 招集前に魔獣を確認したがあまりの巨体に頭を抱えた。私とミスィーが背中に乗っても余裕があるだろう。なんならライオットさん二人分でちょうど良いかもしれない。それほどの巨体。注意すべきは脚の刃。狼系の魔獣ということは素早さは言うまでもないだろう。距離感を間違えるとすれ違いざまに切断されかねない。1体だけというのが幸いだ。これらを踏まえた上で私たちがやること。

「では、これからの作戦を伝えます。私とネグレス、ライオットさんは魔獣を囲う形で展開します。魔獣が暴れない限りテイムを試みます。メイドの方々とミスィーは城門を守ってください。私たち3人の後はメイドの方々から1人ずつ出てきてください。万が一魔獣が暴れだし城内に侵入されたら転移で避難を。後に私たち3人で追撃します。私たちに見向きもせず城門に向かった際も同じようにお願いします。以上です。」

 作戦の説明を終え全員の顔を確認する。皆は頷いて答えてくれた。

「上手くいけばうちの門番になってくれるかもしれません。みんな頑張りましょう!」

 予想していなっかった号令を掛けられたのか皆がガクッと崩れる。笑いながら「お~!」と答えてもくれた。過度な緊張は作戦の妨げになる。少しでもほぐれてくれたなら言って正解だったのかもしれない。

「あ、あの…フィー?」

 不安げな顔でミスィーが呼びかけてきた。作戦への不安も私が帰還した時の慌てようも彼女にとっては仕方のないことなのだ。小さい頃、森で遊んでいた時に魔獣に襲われケガをしたことがあった。それがトラウマとなってしまったのだ。

「大丈夫。何があっても私が守るから。」

 そう言って優しく抱きしめる。これで少しでも彼女に勇気を与えられたなら良いのだが。

 少ししてミスィーはありがとうと言い笑顔を向けてくれた。私は彼女を解放し、うんと頷いて笑い返した。



 全員が配置に着くと狼は周囲の足音に気付き目を開けた。その後ゆっくりと丸めていた身体を伸ばし、左右に首を振って状況を確認していく。私たちは順番に少量の魔力を放出し狼との相性を確認していく。相性が良ければ何か反応を示してくれるはずだ。次々に確認を行うが反応はなく、怒り出す様子もない。やがて怯えていたミスィーにまで順番が回った。恐る恐るといった感じで魔力放出をしていたが空振りに終わった。

「魔王様、どうする?やっちゃうか?」

「なんでライオットさんは倒すことしか考えないんですか!?」

 私がツッコミを入れていると狼の様子の変化に気付いたネグレスが声を張った。

「皆さん注意してください!なにか来ます。」

 スンスンと匂いを嗅いでいた狼は不意に立ち上がり、城門へと身体を向ける。そして…。

「ウオオォーーーン‼」

 遠吠えを始めた。あまりの大きさに全員は耳を塞ぎ遠吠えが終わるまで耐え続けた。狼は二度、三度と遠吠えを繰り返すと城門の壁へと飛び移った!

「まずい!追いかけます!」

 飛び移った狼はそのまま壁を伝って走り出した。速い!私たちの中で一番の速さを持つネグレスがギリギリ追いつけるくらいだった。ネグレスが動きを止めようと鎖を伸ばすが、狼は自慢の刃で難なく切断していく。あの切れ味はライオットさんの肉体をも簡単に切ってしまうだろう。

 私たちに構わず走り続ける狼。ある程度城に近づくと今度は城壁を登り始めた。巨体でありながら軽やかな身のこなしで次々に上層へと昇っていく。その様子を見てメイド長が何かを察したのか私に大声で呼びかけてきた。

「魔王様!魔獣が向かっている場所はおそらくメルミナ様の部屋だと思います!リェナス様がエルバスから救い出した友人にございます!」

 それってミスィーと同じ目を持ってるっていうヒト!?そういえばリェナスが後で紹介するって言ってたけど結局一度も機会がなかったから、今まで完全に忘れてた!

『お姉ちゃんに任せて!あの部屋まで転移べばいいのよね?』

 うん!お願い!

 お姉ちゃんに主導権を渡し、狼より早く部屋へと転移する。転移が完了すると目の前にはベッドで食事中の女性がいた。突然の登場に驚いた女性は慌てて口の中の物を飲み込んだ。

「ん……ぷはぁ。急に出てきて驚いたわ。部屋に入る時にはノックしなきゃダメよ?」

「ご、ごめんなさい!急いでて…。ってそれどころじゃなかった!メルミナさんですよね?早くこの部屋から離れて…。」

 言い終わる前にドカーンッ!と部屋の壁が斬り壊された!しばらく土埃が舞い視界が覆われてしまう。女性の方からは咳き込む音が聞こえる。どうやら無事らしい。埃が晴れ、壊された壁の方を見ると上半身だけ身体を突っ込んだ状態の狼が見えた。私は応戦しようと構えたがすぐに解いた。狼から敵意が感じられなかったのだ。しばらくして状況を理解したのか女性はベッドから降り私の方によたよたと歩き寄ってきた。

「私を守ろうとしてくれてたのね。ありがとう。私はメルミナよ。」

 メルミナさんは何事もなかったかのように落ち着いて自己紹介を始めた。

「なんだか外が騒がしいと思ったらこの子だったのね。私のところに敵意もなく来たってことは、何か気になることでもあったのかしら?」

 頬に指をあてて首を傾げるメルミナさん。何か思いついたらしい彼女はポンッと手を叩くと自分の食べていた料理の乗った皿を持ちゆっくりと狼へ歩み寄る。

「お腹が空いていたのかしらね。涎垂らしてるしきっとそうね。はい。お食べ~。」

 料理を差し出すと狼はスンスンと匂いを嗅ぐと一口で皿ごと食べてしまった。

「あ、ちょっと!お行儀が悪いわよ!ぺってしなさい!ぺっ!」

 まるで子供の相手をするように振る舞うメルミナさんに狼はくるくると喉を鳴らし額を擦り付ける。

「あらあら。甘えん坊さんね。この子は誰かがテイムした魔獣なのかしら?」

「その子は私たちでもテイムできていなくて…。」

「そうなの?じゃあ私もやってみようかしら。」

 そう言うとメルミナさんは左手を向け、少量の魔力を放出し狼の機嫌を窺う。すると狼の額に紋章が薄っすらと浮かび上がってきた。やがて紋章は明瞭になり、同じ形のものがメルミナさんの左手の甲にも刻まれた。

「あらら?成功かしら?なんだか不思議な感覚ね。魔獣と魔力で繋がるって初めてだから、ちょっとくすぐったいわね。」

 嬉しそうに笑いながら狼の額を撫でる。撫でられた狼はくるくると再び喉を鳴らすとメルミナさんの服を咥え、ブンッと首を振り自分の背中に主人を乗せた。

「お散歩かしら?ふふふ。振り落としたりしないでね?」

「わふっ!」

 狼は吠えるとそのまま壁を飛び移って庭まで降りて行った。

どうも私です。書こうとしてた話にやっと入れました。よかった。でもストックがあるわけじゃないから今書いてるやつが終わったらまたしばらく投稿が止まるんだろうなぁ(過去の自分を見ながら)。さて、やっと舞台が整ってきました。え?まだ土台すらできてなかったの?はいそうです!少なくとも私の中ではそうなってます。遅くない?うん、ごめん。こんな私の作品ですがこれからもお付き合いいただけますと幸いです。ではまた次回!

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