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平和な魔王は静かに暮らしている……はず。  作者: ぬるま湯
始まりの物語
12/19

ネグレス式訓練法

また、空きましたね。これ続きを待ってくれてる人どれくらいいるんだろう。失礼しました。今回も読んでいただきありがとうございます。

 ライオットさんとの訓練が終わった翌日の朝。私は全身の痛みに悶えていた。

「うぐッ。痛い、動けない」

毎日の鍛錬とは違う本気の戦闘は初めてであり、身体に蓄積したダメージは一眠りしただけでは抜けきらなかったようだ。

『本物の戦場でなくて良かったな』

本当にね。こんな状態の王なんて狙い放題よ。

痛みに悶えているところにコンコンと扉を叩く音が聞こえる。

「はーい。どちらさまですかー?」

「魔王様、ネグレスです。朝食の時間になっても姿が見られなかったので様子を伺いに参りました」

「あー、ごめんね。なんか全身痛くて動けなくて…。落ち着いたら行くから」

「それは大変だ!魔王様、失礼します!」

「あ、ちょっと待って…」

私が静止するよりも早くネグレスは慌てて部屋に入ってくる。

私の寝相は悪く、起きると服がはだけていることが多い。今日もそんな状態であって、かつ動けなくて…。

ネグレスと目が合う。

「……失礼いたしましたー!このネグレスどんな罰も受けます。自害しますか?自害しますね!」

「待って待って!先に言い忘れた私が悪いから自害は止めて!そのナイフしまって!あと、こっち見るなぁーーーー!!」

その絶叫と共に私の身体は痛みを忘れて、ネグレスを殴り飛ばしていた。


 なぜかネグレスを殴ってから全身の痛みは消えていた。

身支度を終わらせ、気絶したネグレスが起きるのを待っている。

う~んと唸りながら意識を取り戻すネグレス。それを確認してすぐに私は頭を下げる。

「ごめんなさい!さっきは色々と混乱しちゃって」

「あぁ、気にしないでください。許可を得ずに入ったのは私ですから。それよりも魔王様、お身体の方は大丈夫なのですか?」

「うん、なんか動けるようになった。今はなんともないよ」

「そうですか。では、食道に参りましょう。今日は私の訓練に参加してもらいますので、しっかり食べておいてください」

そう言うと、ネグレスは食堂に向かって歩き出す。

『他の王に同じことしたら即刻死刑だったぞ』

私で良かったねと思えばいいのかな?……王が一緒に訓練する状況でこれは仕方がないんじゃない?



 朝食を済ませ、ライオットさんとは別の訓練場に案内された。

しかし、そこに訓練兵の姿はない。ネグレスは気にすることもなく入っていく。

「魔王様、離れていてください。ちょっと危ないので」

言われた意味は分からなかったが、ネグレスから離れて様子を見守る。

ネグレスはある程度進むと、名簿とペンを取り出した。それが合図だというように、どこかからナイフがネグレスに向けて飛んでいく。ネグレスはそれを知っていたかのように名簿にペンでチェックを付けながら避ける。

「3番」

次にネグレスは後方に回し蹴りをする。すると、何もないはずの場所から鈍い音と共に訓練兵が現れた。

「君は、7番か」

どうやらこれがネグレスの出欠の取り方のようだ。

『ネグレスは隠密に関する訓練を担当している。訓練兵もなかなか成長しているな』

へぇ~。私もあれやるのかな?隠れるの苦手なんだけど。

『我がフィスに求めているのは隠密ではないからやらないぞ。やるとしてもフィスにはできないだろうがな』

私だってやろうと思えば少しくらいはできるはずよ。

それからしばらく出欠確認は続いたが、ネグレスは無傷だった。


 ネグレスが出欠確認を終えて名簿をしまうと訓練兵の前に来るように呼ばれた。

「みんなも知ってるよね。今日からしばらく参加する魔王様、フィース様だよ。失礼のないようにね」

『一番やらかしてるのはネグレスだがな』

こら!原因は私たちでしょ!

「今回は魔王様に相手役をやってもらいます。みんな慣れちゃって訓練になってなかったでしょ?」

相手役!?ライオットさんの時もそうだけど、私を高く評価しすぎじゃない?

「あ、魔王様は訓練内容知らないですよね。説明しますと、訓練兵が攻撃、教官が防衛の多対一による戦闘訓練ですね。まあ、隠密において奇襲が防がれた時の想定です。防がれないのが一番いいのですがね。防衛のやり方はリェナス様の希望通り、魔法のみとさせていただきます」

魔法だけ!?難しくない?

『我が動けない時に魔法が使えれば行動に制限がかからなくて良いだろう?』

そうだけど、まだ上手く使えないよ?

『気にするな。フィスができなくても身体は覚えている。ある程度の感覚共有もあるのだ。既に使い方は知っているはずだぞ。なに、サポートくらいはするさ』

リェナスがいると心強いよ。

「それじゃあ、みんな魔王様に臆することなく挑んでね。散!」

ネグレスの号令と同時に訓練兵は全員姿を消した。

「では、魔王様頑張って下さい」


 魔法で応戦か。魔法って難しいのよね。

『まずは領域テリトリーだな。今まで練習した通りにやってみろ。範囲はこの訓練場だけでいいだろう』

領域テリトリー展開!」

領域テリトリーを発動させると私を中心に球体が広がっていく。そして、球体内部にあるこの訓練場の簡易マップが脳内に作成される。練習を始めたときは情報を拾いすぎて頭が痛くなったのに、今は頭痛が起きていない。領域テリトリーを制御できているということだろう。

領域テリトリーは探知系だからな。範囲内のものを全て認識しようとするのだ。そこで認識対象に制限をかけることで情報過多をなくすことができる。例えば足元にある大量の「砂」を「地面」という括りにするみたいなものだな』

再確認ありがとう。

 作り出された簡易マップに動く点が出現した。これは魔族や人間、魔獣などを一括りにした「生物」を表している。この点を拡大してみると容姿や身に着けている武器が認識される。私はこの順番で認識して整理することで頭痛を回避しているが、慣れると一度にできるらしい。

『本来なら隠密系の魔法を使われると認識阻害がかかって厄介なのだが、我の領域テリトリーにはその対策が組み込まれている。基本的に初見の敵には魔力検知から入るのを忘れるなよ』

はい!教官。

『誰が教官だ。さて、ネグレスのやり方を考慮するなら攻撃を避けて無力化させれば勝ちだろう。拘束魔法は覚えているな?』

口では拘束魔法と言いますが、実際は転移魔法の応用であります!

『そうだ。だが、非常に高度な魔力操作が必要だ。できるか?』

できません!

『……やれ。あとその話し方をやめろ』

はい。すみませんでした。

 リェナスの言う拘束魔法は、簡単に言えば周りにある物体から枷の形に切り抜いて、相手にはめるという操作だ。頭では理解できるが、実行するのがとにかく難しい。

『考えすぎるな、来るぞ』

リェナスが言うと、簡易マップ上の点がいくつかこちらに向かって動き始めた。拡大すると手にはナイフを持っており、接近して切りかかろうとしているようだ。

 落ち着け。地中に枷の形を4つ置いて、同じ形の範囲を相手に付けるだけ。

「ターゲットロック。範囲内のものの位置を交換する。交換チェンジ!」

発動と同時に体勢を崩した訓練兵が転びながら出現する。動き続ける対象に範囲を合わせるのは大変だけど上手くいった!

『油断するなよ。次が来るぞ』

わかってる。攻撃を受けなければいいんでしょ?だったら、同時に仕掛けてきてる二人の位置を入れ替えればいいのよ。

「ターゲットロック。対象の二つの位置を交換する」

そして、切りかかってくるタイミングを待って。

交換チェンジ!」

発動すると両者の位置が入れ替わり、私と逆の方向にナイフを振る姿勢になった。二人は失敗を認めて姿を現し撤退していく。

『無駄が多いな。考えすぎだ。だがまあ、初めてにしては上出来だ。この調子でいくぞ』

なんか今日のリェナスやさしいね。よーし!頑張りますか!



 全訓練兵の攻撃を捌ききると、私はその場に倒れた。

『魔力切れだな。無駄をなくせばもっと動けるのだが、初日はこのくらいだろう』

あはは、今日は本当にやさしいね。ミスィーのお母さんみたい。

『な、いつもこれくらいだろう!お望みならもっと厳しくできるぞ?』

えー、なんでそうなるのよ。やさしい方がいい!リェナスママ~。

『やめろ!恥ずかしいではないか!』

かわいいな。

『ところでフィスよ。魔法への苦手意識はまだあるか?』

んー。始める前よりはないかな。あの人数を魔法だけで捌いたって結果が自信に繋がってると思う。

『自信を付けるのは良いが、慢心はするなよ』

しないよ。そもそも慢心するレベルじゃないし。

 リェナスと会話をしているとネグレスが近づいてきた。

「魔王様、お疲れ様です。お飲み物とタオルを」

「ありがとう。ネグレスの訓練兵たちはすごいね。個人でも連携でも」

「ありがとうございます。しかし、だれも魔王様に攻撃を当てられなかったのは予想外でした。彼らも良い経験になったでしょう。今日の訓練は以上となりますので、シャワーを浴びて昼食にしましょう。午後はライオットの訓練ですよ?」

「今日もあるの!?一日交替だと思ってた。早く行って休まないと。ネグレスもみんなもありがとう!じゃあね!」

私がそう言うとネグレスたちは何も言わずに頭を下げるだけだった。


どうも、私です。最近雨の日が多くて気分が下がり気味です。部屋から眺めるのは好きなのですが、出先で降られるとびしょ濡れになって早くお風呂に入りたい!ってなります。ならない?人それぞれだよね、うん。さて、おそらくというか確定で次回も間隔が空きます。それでもいいよ!って方は気長にお待ちください。いやだ!って方は他の作品でも読んで、思い出した時に戻ってきてください。それではまた次回!

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