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おるたんらいふ!  作者: 2991+


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スキマライフ!~ダルイ。寝かせろ。【リスター視点】



「オルタンシアってなんだ」


 そう問えば、相手は困った顔をした。

 まぁ、聞くまでもない。

 それがチビの本名なんだろう。このガキを「うちの」という言い方をしたからには、こいつが近しい間柄だということもわかる。


 トリティニアなんてダンジョンないっつーから行ったことねぇし、行く予定もないけど。

 ダンジョンないのに、ガキどもがこの強さってのも何なのかね。


「まずは、貴方に礼を言いたい。あの子を守っていてくれてありがとう」


 死んだかと思っていたのが、目が開いた途端に飛び込んできたのはこいつの顔で。

 それから、チビの泣き顔だった。


 咄嗟にブッ飛ばしたのに、こいつは特にそれについて触れる気はないようだ。

 生真面目なツラして礼を言うものだから、鼻で笑うよりない。


「…はっ。お前に言われる筋じゃねぇ」


「そうだけど。俺にはできなかったから」


 スープうめぇ。

 礼というなら、これでチャラだろうな。

 全く、ドジもいいとこだった。


「それで。オルタンシアは、何なんだ」


 漠然とした問いを投げれば、ガキは「何とは?」と問い返す。

 テヴェルのように、知ってることをペラペラ喋ってくれる性格ではなさそうだ。


 こいつが何をどこまで知ってるんだかわからなけりゃな。

 俺のがペラペラ情報を吐く側だなんて冗談じゃねぇし。


「お前の何かって聞いてんだよ。お前はチビの「うちの大事な」何かなんだろ」


 そう誤魔化せば、ガキは一気に顔を赤くした。

 え。何、そういう反応されても。

 全然そういうこと聞いたんじゃねぇし。ウゼェ。


「婚約者か」


「…いえ、幼馴染み、です」


 完全に、ただの幼馴染みでは済んでいない顔をしてそう言う。

 …ふぅん。


 でも、まぁな。チビって、それどころじゃなさそうだもんな。

 それでも「大事な」何かだとは思っているようだが。


 今は無理でも、いずれそういう気になることもあるかもな。

 そういうほうが、いいんだろうな。

 俺は俺に流れる大陸外の血を残すなんて御免だが。チビは俺とは違う。


「…っ、と」


 スプーンが逃げた。

 取り落としかけたスプーンを、ガキは素早く宙で拾った。

 何も言わずに柄を向けて渡してくる。


「お前が手ぇ出さなくても、取れる」


 俺には魔法があるからな。


「…俺も、反射だったから」


 あーあ。

 イヤなガキだ。


 俺だってわかってる。右手と右足が、どうにもうまく動かない。

 このガキも既に察しているようだが、動きの悪さに言及してこない。

 何も言わない。気を使ってるつもりか、ムカツク。


「お前さぁ。言うなって言っても、絶対、あとでチビに言うよな」


 あんまり腹の中を隠すの、上手くなさそうだものな。

 そんなだから、チビが気楽にしていられるのかも知れねぇが。

 案の定、戸惑ったような態度をして、考えて、ガキが口を開く。


「ああ、言う。だから、もう一回、回復魔法をかけてもらわないか」


「要らねぇ。多分、怪我じゃねぇ。だから治らないんだろ」


 チビの回復魔法なら受けたことがある。

 だから怪我が魔法で治される感じも、わかる。


 俺が好きにしたことに対して、あんまりチビにヘコんだ顔されてもな。

 さっきも。

 べそべそと泣かれたのには、正直参ったんだ。


 死にそうになることなんか、冒険者やってれば適当にあることだ。

 俺が死んでも泣く人間なんかいない。

 悔いが残るようには生きてないし、いつ死んだって何かに影響することはない。


 なのに…あれ、駄目だろ。


「治ってもらわないと困るんだ」


 ガキが急にそんなことを言い出した。

 困るとか。笑える。


「は? お前の都合なんか知らねぇ…」


「治ってくれないと…また、誰かを巻き込めないっていなくなっちゃうかもしれない」


 チビにそう言って置いていかれたのか。

 だからチビは1人でいたし、コイツはそれを追っかけてきたのか。


 …おい。待て。やめろ。


「せっかく、やっと一緒にいていいって、言ってもらえたのに」


 だから。ヘコんでんじゃねぇって。

 俺が勝手に、チビを構うんだよ。それに対して、チビがなんか返しちゃ駄目だろ。

 なんであわせてガキの面倒まで見なきゃいけねぇんだよ。知らねぇし。


「あれ、どうしたの?」


 チビが戻ってきた。

 あっ。

 なんでお前、誤魔化せねぇんだよ。

 今、葬式みてぇなツラしてたら駄目だろ。


「えっ。どうしたの。ホントに何?」


 だから、突っ込まれるから。

 なんっ…お前っ、もっとちゃんと隠せよ!




 …チビとガキで葬式みたいなツラになった。

 ウッゼェ…。




 あー。そう。

 やりてぇなら、もっかい回復魔法かけてみりゃいいだろ。

 無駄だと思うけどな。


 ほらな、怪我じゃねぇ。

 多分呪いっぽいヤツだと思うもん。

 食らったことはないけど、冒険者稼業が長ければそれなりに情報は…。


「えっ、呪いなの…如月さん、あんまり呪い系女子じゃなかったのに」


 呪い系の女子って何だ。聞いたことねぇぞ、そんなん。

 呪いは魔物からもらうものってのが通説だ。

 そうすると、むしろあのブスが魔物ってか。


 …ありえねぇと思うんだが、そうすると通説のほうが崩れるな。

 呪いなんてそうそうかかるものじゃないから、眉唾だったのかもな。


 チビが突然教会に行こうと言い出した。

 神頼みってことか。そりゃねぇだろ。神が俺を救うわけがない。


「教会で呪いって解けないの? なんで!」


「なんでっても、解呪薬作るのは薬屋の仕事だろ」


 ガキもチビも知らないようだ。

 俺だって、解呪薬なんか見たこともない。

 …繰り返すけど、普通は、そうそうかからないからな。


「マジか! じゃあ薬屋さん探しに行こう!」


 …いや、だから。

 置いてないって、普通に店になんか。


 無理だと思うんだが…あー、もう。

 やる気ないんじゃなくて、現実を知ってんだよ!

 うるせぇな、じゃあなんか、お前らが勝手に色々試せばいいだろ、バーカバーカ…!




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