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天使の魂と記憶

難しく考えるのを止めて、文面で遊びながら適当に書いていく作品になります。

デジモンワールド-next order-が発売すると更新が遅くなります。むふふ

 暗雲が空を覆い尽くす中、禍々しい邪気を放つ城のいただきで勇者と魔王の死闘が繰り広げられようとしていた。

 城の頂上にある広大な空間には周囲に遮る壁など無く、外界から流れ入る不気味な風が肌を撫ぜる。

 その不気味な風は、荒れ果てた雄大な大地と暗雲が立ち込める天空が要因となって作り出されていた。


「勇者よ、貴様が死なずして来れた事を嬉しく思う。ようこそ、我の城へ。歓迎するぞ!」


 城の頂上の中心に位置する場所には、黒衣を纏い腕を広げて歓迎を表した姿勢を取る魔王が立っていた。

 そして、魔王に対峙するように勇者とその仲間達が存在していた。


「魔王、私を歓迎してくれるのなら貴方の死を私にくれないかしら?」


 魔王の皮肉に対して、同じく皮肉込めて言い返す勇者。

 勇者の仲間達は会話のやり取りの間にも身体能力を補助する魔法を幾つも重ね掛けして、戦いを始める準備をしていた。


「それは少し違うな、我が歓迎するのは貴様達の死に行く様にだッ!」


 魔王の叫びと共に勇者達がいる空間の位置に爆発の予兆が過ぎると、咄嗟に勇者達はその場から各々が別方向へと跳躍して爆発からの回避行動を取った。

 彼女らが直前までいた位置には大きな爆炎が引き起こされ、それを合図に勇者達と魔王の死闘が始まった。


「最初は力勝負と行こうぜ、魔王さんよ!」


 勇者の仲間である戦士の女が爆発を回避したと同時に、すでに魔王のいる位置へと跳躍して、彼女が両手に持つ斧を魔王に目掛けて振り下していた。

 豪快に振り下ろされた斧は風を引き裂きながら標的へと直下するが、その斧刃を見切った魔王は手から剣を瞬時に出現させると、力強く振られた戦士の斧を片腕だけで持つ剣一本で軽々と受け止めた。


「愚かな、ただの力だけの刃が我に届くと思うたか?」

「なら、魔法はどうかな? 吹き荒れて、氷塊の刃――アイスストーム!!」


 戦士と魔王の間に割り入るように賢者の女が呪文を唱えると、戦士は刃を退いて魔王から距離を取る。

 そして氷塊の嵐が魔王へと降り注ぎ襲い掛かると、視界が白に染まり冷気による煙が立ち込めた。


「私の魔法は格別、まだまだ行くよ? 砕け散れ、爆炎の陣――エクスプロード!!」


 視界も開けぬまま、連続にして賢者は魔法を唱えると今度は冷気を吹き飛ばすように魔王がいる位置へ怒濤の爆発をお見舞いする。

 無限とも思える爆発は辺りを炎で包み込んだ。今度は爆発の炎が広がって視界を赤色に染めた。


「私の全力魔法を二発――さすがに、地に膝ぐらいはついたんじゃないかな?」


 爆発の余波で出来た黒煙の先を見詰めながら勇者達は一度様子を伺っていた。

 刹那、黒煙を身に纏いながら魔法の嵐を突き抜けてきた魔王が賢者のいる下へと剣を突き付けながら疾駆する。

 その剣は賢者の心臓へと目掛けて、突き付けられていた。


「嘘ッ、死ぬ――」


 無慈悲にも心臓を貫こうとする剣尖の煌めきと魔王の邪悪な笑みに賢者は瞬間的に死を覚悟したが、

「私の仲間は殺させはしないッ!」

 一声ともに魔王の一突きを勇者が持つ剣で弾き、受け流すことで賢者に心臓に届こうとした刃を防いだのだった。


「ほう、様子見をしていたのは仲間を護る為だったのか」


 勇者と刃を交えながら魔王は呟く。


「貴方の実力も分からない内に自由に動き回らないわ」


 魔王と刃を交えながら勇者は呟く。


 それから幾度もなく勇者達は連携を取った攻撃を続けた。

 戦士は隙を伺い背後から攻撃を加え、賢者は魔法による援護を行って、勇者は正面から魔王を制した。

 戦いは長時間に及び、天の光を遮っている黒い雲空からは雨が降り注いだ。


「勇者よ、貴様がここまで戦えるとは思っても見なかったぞ――」

「――貴方が、これほどまでに強い相手とは思いも寄らなかったわ」


 両者は雨に濡れながら、数時間に及ぶ戦いによって疲弊していた。勇者の後ろ側では戦士は倒れ、賢者も魔力が尽き倒れていた。

 次の一撃で全てが決すると勇者と魔王は御互いに思念していた。


「天剣ユートピアズ、天より抱きし我が聖剣よ! 魔王を討つ、光の刃となれ!」


 最初に行動を起こしたのは勇者だった。

 勇者が持つ天剣を空に掲げると、暗雲が割れて青空が顔を見せる。その青空から光が零れ落ちると勇者の剣に光が差し込んだ。その光を吸収した天剣は生命の輝きともいえる色彩を放っていた。

 天剣からは生命の剣気が迸り、共に剣の装飾である純白の羽根が溢れ落ちて辺りに舞い散った。

 ふと、一枚の純白の羽根は風に乗り、魔王の頭部へと掠め行く。


――リイィィィィィィィイイイン!!


 純白の羽が頭部を掠めると同時に、頭が割れるほどの激しい音が魔王を襲った。


「ぐがぁっあ、何だ! 頭が、割れる!? 勇者の魔法かッ――」


 激しい痛みと共に多量の記憶という情報が頭部を駆け巡り、魔王の魂に想い起こされて流れ込んでくる。

 それは自身が遠い別の誰かだった頃の記憶であり、魔王が天使だった頃の前世の記憶だった。


「我は魔を統べる王――――違う、僕は天使。アダム?」


 咄嗟の出来事に魔王は頭を抱えていた。頭に駆け巡る記憶の量を整理しきれずに困惑している。

 それを好機と見た勇者は、ここぞとばかりに天に掲げていた剣を下方へ振り払い、剣身の雨露を退け、両手で剣を持ち、肩越し辺りに突きの構えの姿勢を取った。

 そして姿勢を深くすると魔王の心臓へと狙いを定めて剣を突き付けた。


「魔王、覚悟しなさい! これで、終わりよ!!」


 勇者は叫びと共に、溢れ出る生命力を原動力に地面を足で蹴り上げて瞬間的に加速をした。

 天剣の軌跡が魔王の心臓の奥先にまで届きうる光の道を繋げているのが見えると、次の瞬間に勇者は魔王の心臓をすでに貫いていた。


「ガはぁっ!?」


 魔王の胸部に鋭く熱い痛みが走る。

 勇者が魔王の心臓を貫いたことで御互いは密着して顔を見合わせていた。そして、魔王は死に絶える間際に勇者の魂を見て、前世の記憶から一つの大切な事を思い出していた。

 ――君は、イヴだ。僕の最愛の女性であり、僕の大切なパートナー。

 魔王の眼から覗き見る勇者の姿に刻まれていた魂の名は、魔王が天使だった頃の恋人の物だった。


「……イヴ。……愛しているよ」

「えっ……?」


 魔王が漏らした最後の言葉は、勇者の魂の名を呼んだ愛の囁きだった。

 勇者が剣を引き抜くと、赤黒い血が噴出し、魔王の屍は地に伏した。


「何故、私の名前を? わからない……。――そうだ、今は皆を助け起こさないと!」


 勇者は倒れている戦士と賢者を助け起こすために二人に駆け寄った。


「皆、私達の勝利よ! 国へ帰りましょう、お祝いをしなくっちゃ!」

「痛ッ――美味しいところはイヴに持ってかれちまったか」

「もう駄目、魔力切れで指先一つ動かせない」


 勇者達は勝利の喜びを各々の胸に秘めて、国へと帰る準備を始める。


「それじゃ、転移魔法を使うわよ! えい――空間転移!」


 勇者の魔法と共に三人は光に包まれて、魔王城の頂上から姿を消して転移した。

 その場に残されたのは魔王の屍のみ。

 これで世界は救われて平穏が訪れると思われ、勇者達の物語は終わりを迎えようとしていた。


「ここで終わってたまるかー! ――はっ、生きてる!?」


 アダムは起き上がり、自分の死に突っ込みを入れると自身が生きていたことに驚いた。


「確かに心臓を貫かれたのに何故だ? もしかして――」


 自身の潜在してる能力スキルを心で覗き見る事にした。

 数々の魔王に関する能力と共に「天使」と名のついた数々の能力スキルが増えていることにアダムは気が付いた。


「天使だった頃の力が戻っている?」


 その天使の能力スキルの一つに【魂の檻の修復】があった。

 魂の檻とは肉体を示唆している意であり、この能力のお陰で貫かれた肉体の心臓が修復されていた。


「それにしても、何で転生してこの世界で魔王なんてやってるんだ?」


 天使の記憶の一つに、天使は魂を保護する肉体である器が死滅しない為に転生することはありえないはずだった。

 だが、その理も破られて新たな世界へと転生して、アダムは魔王に、イヴは勇者という役割を担っていた。


「そもそも、天使の記憶が戻った原因はイヴが使っていた天使の剣であるユートピアズの羽根に触れたせいか?」


 彼女が使用していた天剣ユートピアズとは、天使であった頃に使っていた儀式の剣舞を踊る為の特別な天使剣の一つだった。

 あれには心や技が記憶され蓄積される剣であり、その羽根に触れたことで魂の記憶が想い起こされたのだろうとアダムは考えた。


「駄目だ、記憶が混濁していて何があったのか思い出せない! とりあえず、この世界でもイヴとラブラブな時を過ごさなければ!」


 こうして前世が天使だった魔王であるアダム・アップルリングは前世の記憶を一部取り戻すと同時に、前世の恋人にして天使だった勇者であるイヴ・エンゼルティアとラブラブな一時ひとときを得る為に何よりも優先にして奮闘するのであった。



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