もう少し話すことあると思うけど、パスタのことしか話していない
その日、修三が現場を片付け、会社の飲み会から帰宅して布団に入った24時、スマホが鳴った。陽介からだ。
「はい、こんな時間にどうしたの」
「カスが!」
「ぷっ、何が?」
「また嘘のメール送ってきたね、カス野郎が」
修三は昼間、スロット大当たりの昔の画像と、今日は大当たりしちゃったぜ、やったー!的なメールを送っていた。
「はっはっは、よくわかったな」
「仕事って聞いていたからすぐわかったよ、カスが」
「なかなか鋭いな、そういう君はデートだったかな」
「ああ、アウトレットパークで買い物してメシ食べて、チュッチュ(♡)キュンキュン(♡)して今帰るとこだよ」
「、そうか、頑張ったな。メシって何食べたの」
「イタリアン。パスタとか」
「ほほう、パスタか。ところで優雅なパスタの食べ方、教えてあげようか?」
「はっは、まあ想像つくけど言ってみてよ」
「うん、これを聞いたらイタリアンな気持ちになること請け合い・・・・・・チュルッ、チュルッ、チュルチュルチュルルルルルルル~、く、あっはっはっは!」
「あっはっはっは!汚い!下劣!全然イタリアンじゃないよ!」
「はっはっは!ふう、じゃあ買い物は、何買ったの」
「アロマ買ったよ」
「燃やすやつ?」
「いや、芳香剤みたいな感じの」
「ふーん、なんの匂い?」
「ダリアだね」
「ダリア!?(超大袈裟に)」
「ぷあっはっはっは!知ってるの?」
「うちの親父が園芸大好きで作ってたからなあ。アロマになるのかー」
「へえ、マジで」
「いや、嘘だよ」
「あっはっはっは!カスが!」
「いや、親父が園芸でいろいろ作っているのは本当だよ。詳しくは知らんけど南米原産の有名な花とかたくさん作っている」
「嘘くさいなあ」
「本当だって、信じてよ」
「基本的に君、嘘つきだからね」
「そんな、ひどい・・・てへ♪」
「カスが」
「しかしダリアのアロマかあ。俺だったらもっといいプレゼントにするかなー。例えば・・・」
「だいだいわかるから言わなくてもいいけど、まあ言ってみてよ」
「聞いて驚け、県士郎(世紀末覇者)のアイマスクだ」
「何それ」
「県士郎の目と眉毛が描いてあって、付けると顔が県士郎になる」
「あっはっはっは!駄目だよそんなの。本当にろくなこと言わないな。それ幾ら?500円くらいしたの?」
「いや、多分1500円くらいだな」
「結構するねえ」
「まあ、スロットの景品なんだけど」
「あっはっはっは!カスが!」
「はっは、始発の特急電車で現場に行く時とか付けて寝てるけど、もう最高。みんなを楽しい気分にできるよ」
「はは、君そういうの結構好きだよね」
「うん、我ながら意外とね」
「まあ、もう帰るよ。切るぞ」
「ああ、じゃあ最後にもう一度。優雅なパスタの食べ方を」
「もういいよ」
「さっきとは違うから!さっきのはちょっと失敗したんだって。今度はうまくできるはず」
「ふうん、全く期待してないけど、じゃあ言ってみてよ」
「よし・・・・・・チュルッ、チュルッ、チュルルルル、ぷっあっはっはっは!」
「はっはっは!一緒じゃないか」