十三節 キーアを探し始めました
「魔族達はこの世界から完全に消えたようです」
クリスが作業室のモニターに映ったデータを見ながら言った。
「キーアの手がかりは見つかったか?」
「それらしいものは何もないですね」
マルードを追い払って数日経っていたが、キーアの行方も黒兜の城への行き方もわかっていなかった。
《何か探す方法はないのか?》
俺はリベラルに訊いた。
【精霊の羅針盤を使えばわかるかもしれん】
《そんな道具あるなら早く言えよ》
【精霊の国宝で、鎧の力を限界まで引き出す危険な物なんだ】
《それでもやるしかないだろう》
【わかった】
一郎の覚悟を持った声にリベラルも同じく覚悟を決めた。
「これが精霊の羅針盤だ」
中央に噴水がある広間でゼバブが宙に浮かせた物を指差して言った。
「これでキーアを助けられます」
「勇者よ、本当に行くのか?」
いつもと違って、険しい顔つきでゼバブは言った。
「はい。何もわからない異世界で助けてくれた人ですから」
俺は笑顔で答える。
「そうか。ならば使いなさい」
全てを理解したゼバブは俺に羅針盤を寄越した。
「で、どうすればいいんだ?」
羅針盤を受け取り、俺はリベラルに訊いた。
「精霊の頂で力を解放すればいい」
人型になったリベラルが答えた。
「よし、じゃあ行きますか」
「すごい綺麗な所だな」
険しい山を想像していた俺は、いい意味で期待を裏切られていた。
「精霊の世界で最も美しい場所だ」
リベラルの自慢が全く腹立たしく感じない程の絶景と美しい花が咲き誇っていた。
「と、ほのぼのしている場合じゃなかった」
俺は気を取り直して羅針盤を宙に浮かべた。
「究極解放のエレルギーを羅針盤にぶつけるんだ」
「わかった」
リベラルに言われ、俺は究極解放になった。
「私が羅針盤を支えるから、キーアを想いながら集中しろ」
そう言って、リベラルは羅針盤に呪文を唱え始めた。
「ウオォォォーーーーー」
俺はキーアを見つけたい想いをエレルギーに込めて放った。
エレルギーを受けた羅針盤は目も開けられない程に光輝く。
ズゴォーンという大音が響き、美しい頂の空に暗雲の渦が現れた。




