十一節 賢者の石を手に入れました
「ここです」
時間の感覚分からなくなる程歩いた所で、美神は立ち止まった。
《真っ白で何も無いな》
「間の世界ですからね」
「えっ⁉︎」
心の声に反応され、俺は驚いた。
「神の端くれなので」
「なるほど」
「では、試練を始めます」
真剣な表情になった美神が説明し始める。
「はい」
俺も背筋を正し、返事をした。
「まず、生体エレルギーのコントロールです」
「具体的にはどうしたら?」
「これを割らないようにエレルギーを込めて下さい」
美神はビー玉みたいな結晶を差し出した。
《こんな小さいのに無理だろ》
「修行ですから」
「ですよね」
美神の目が笑っていなかったので、俺は苦笑いになる。
「始めて下さい」
美神に言われ、俺は集中した。
パリーン。
エレルギーを込めた瞬間、結晶は割れてしまった。
「えーっと。すみません!」
自分でも気持ちいいぐらい、綺麗に頭を下げる。
「気にしないで下さい」
軽く王族のように手を振りながら、美神は微笑んだ。
「何個でも用意出来ますから」
そう言って美神は結晶を差し出す。
「ど、どうも」
俺は会釈して結晶を受け取った。
「ふー。うっ!」
少し長めに息を吸い、もう一度エレルギーを込める。
パリーン。
「またやっちまった」
【本当に不器用だな】
リベラルが呆れて言う。
《うるさい》
パリーン。
「あーくそ!」
修行は一度も成功することなく、一週間が経っていた。
「どうぞ」
俺の苛立ちを気にせず、美神が結晶を差し出す。
「・・・・・・」
疲れのせいで礼を言う気力も失せていた。
【集中しろ】
リベラルから恒例の檄が飛ぶ。
「はぁ〜」
俺は溜息をついた瞬間気が緩み、エレルギーを出してしまった。
「いけねって、あれ?」
ふと見ると、結晶が赤く光っていた。
「それが賢者の石です」
「マジで?」
俺は拍子抜けしてしまう。
「ダンジョン攻略とか」
「しません」
「モンスターを倒すとか」
「しません」
「もう修行終わり?」
「終わりです」
「やった〜〜〜〜〜」
気が抜けた俺は失神するように眠りに落ちた。




