四節 未確認生物に出会いました
「腹へった」
勇者と言えど人間、空腹は辛い。
「この世界は食料ないのか?」
不満がどんどん口から出てくる。
【ある】
《どこにだよ》
視界にはダイヤモンドだらけで食べられそうなものは一切ない。
【この世界の住人にはな】
《俺は何を食べればいいんだよ》
【一杯いるじゃないか】
リベラルが言っているのはザーグという恐竜に似たモンスターのことだ。
《あれをか?》
そのザラザラした姿は美味しそうとは思えない。
【しっかり焼けば食べられる】
俺の感情を無視してリベラルは言い切った。
《我慢するしかないか》
今は味よりも空腹を満たすことを優先だ。
《あいつらの食料がダイヤモンドなわけ?》
【いや、あいつらの食料がダイヤモンドを食べているんだ】
《随分と贅沢なお食事だこと》
世界が違えば価値観も違うということを改めて感じる。
「細かいことは後でいいや」
腹が減りすぎて、俺は神器のことをすっかり忘れていた。
「いただきます」
俺はしっかり焼き上げた肉を思い切って口にする。
「う?」
ザークの肉は見た目とは裏腹に香ばしく、ジューシーでとても美味しかった。
「いや~マジで美味い」
俺はあまりの美味さにあっという間に満腹になった。
《で、神器ってどこにあるんだ?》
満腹になったおかげで俺は神器のことを思い出す。
【ビッグフットの神殿にあるはずだ」
《ビッグフット?》
聞き覚えのある単語に俺は反応した。
《それってテレビとかでやってる未確認生物の?》
【あれはこの世界にいたのが迷い込んでしまったんだ】
《マジか》
思わぬ真実に驚く。
《って、そんなことはどうでもいいよ》
予想していなかった生物の登場に危うく本題を忘れてしまうところだった。
「何か精霊の神殿に似ているな」
着いたビッグフットの神殿は大樹が複雑に絡んでいた。
【ここはゼバブ様の神殿を模して先代が作ったんだ】
《ホント優秀過ぎるだろ》
先代に対して劣等感を覚えるのが何度目か忘れてしまった。
【グチグチ言っていないで行くぞ】
《わかりましたよ》
俺はふて腐れつつ、歩き出す。
特にトラップなどもなく、神器が祀られる場所に辿り着いた。
「誰かいるのか?」
奥に人影らしきものが見え、俺は声を掛ける。
「ウガウガ」
現れたのはテレビで見た覚えがある姿をしたビッグフッドの集団だった。
「やるか?」
癖で戦闘態勢を取ってしまう。
「ウガウガ~」
ビッグフッド達は弱々しい声で怯えている。
どうやら見た目とは違い、温和な性格らしい。
《なんか悪者になった気分なんだが》
怯える姿に何とも居心地が悪い気分になってしまう。
【いいから早くしろ】
戸惑う俺をリベラルが急かす。
《わかったよ。邪魔はしなさそうだから、神器をもらったらおいとましますか》
俺はビッグフッドを飛び越えて祭壇へと降り立った。
「さあ、神器、神器と」
俺は祭壇に置かれた宝箱をワクワクしながら開ける。
「あれ?何も無い」
宝箱の中身は空っぽだった。
《おい、どういうことだよ》
またも起きた予想外の出来事に俺はリベラルに文句を言う。
【私も知らん】
《どうするんだよ》
【ビッグフットに聞け】
《どうやってだよ》
今までの世界と違い、文明どころか言語すらあるようには思えなかった。
【どれでもかまわんから思考を読み取るしかあるまい】
《そんなこと出来るの?》
【お前は手をかざすだけでいい。後は私がやる】
《了解》
俺はリベラルに言われるまま近くにいたビッグフットの頭に優しく手をかざす。
「ウガウガ」
ちょっと怯えたもののビッグフッドは動きを止めた。
「ちょっと我慢してくれよ」
ポワンと温かい光りが俺の手に灯る。
《どうだ?》
【どうやらマルードが持っていったようだ】
《じゃあグルス帝国に行くしかないか》
【いや、まだこの世界にいるようだ】
《それなら急ぐぞ》
リベラルの言葉を聞いた俺は慌てて駆け出した。




