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一節 神器を集め始めました


「いや~まだ痛いな」


 俺は頭と頬を擦りながら独り言を呟く。


【悪いのはこちらだからな】


 リベラルが静かな口調で言った。


《お前が言うか?》


 俺はリベラルを責める。


【何がだ?】


 リベラルは平然とした態度で惚けた。


《お前が勇者にしたんだろうが》


【運命だ】


 格好つけた台詞でリベラルは誤魔化す。


「それにしても夕のやつ容赦ないな」


 ゴルザを倒した後、俺は実家に帰った。


 半年以上連絡をまともな連絡を寄越さなかったので、母に長時間説教を喰らった。


 その後、夕に強烈なビンタをお見舞いされ、延々号泣されながら責められたのだ。


《で、精霊の世界に来て何するか聞いてないんだけど》


 鎧をパワーアップさせる為としかリベラルから聞いていなかった。


【これから神器を集める旅に出る】


《神器って鎧だけじゃなかったの?》


【鎧は精霊と勇者をつなぐ源で、鎧の力を増幅させる神器が存在するのだ】


《久しぶりにRPGっぽいワード出てきたな》


 俺はワクワクしてテンションが上がってしまう。


【神器が揃えば、鎧も真の姿と力を取り戻す】

 

《それで、どこに行けばいいんだ?》


【今までに行ったことがない異世界だ】


《新しい異世界か》


 異世界の旅も長いが、初めての場所は未だに緊張する。


《じゃあさ、何で妖精の世界に来たの?》


【草薙の剣に再び精霊の加護を与える為だ】


《これも神器だったんだ》


 俺は刀を抜き、日にかざして言った。


【ああ。ゼバブ様が先代に与えたものだ】


《前来たときに加護を与えてくれればよかったのに》


 効率悪いと思い、ぶつぶつ言ってしまう。


【鎧が無ければ加護は受けられないのだ】


 リベラルが呆れて言った。


《そうですか》


「一郎様~お久しぶりです」


 こちらに近づきながら呼びかける姿が目に入る。


「お、ソニア!無事だったか」


 リベラルを復活させるときにソニアは自分を犠牲にして助けてくれていた。


「ええ。時間は掛かりましたが」


 そう言いながら笑う顔は相変わらず綺麗だ。


「リベラル様、お元気そうで安心しました」


「ああ。世話になったな」


「わあ!びっくりした」


 隣にはいつの間にか人型になってリベラルが立っていた。


「さあ、馬鹿は放っておいて行こう」


 俺のリアクションを無視してリベラルはソニアを促す。


「誰が馬鹿だ」


 先を歩くリベラルにツッコミながら俺も歩き出した。




「一郎、リベラルを復活させてもらい感謝する」


 ゼバブが巨体を深々と曲げ頭を下げる。


「いえいえ。俺もこいつがいないと困るので」


 低姿勢の精霊王に俺は恐縮した。


「ははは。良き勇者殿で幸せ者だな」


 豪快に笑いながらゼバブはリベラルに顔を向ける。


「いえ、私共々まだ未熟でございます」


 俺のときと違い、リベラルは気品のある立ち居振る舞いで話していた。


「蘇っても真面目だの」


《真面目過ぎて面倒くさいけど》


 憑依していないのをいいことに俺は心の中で悪口を言う。


「何か言ったか」


 小声で言いながらリベラルがこちらを睨みつけた。


「いいえ~別に」


 一瞬聞こえたかと思い俺は冷や汗を掻きながら誤魔化す。


「では、さっそく神秘の間に行くとするか」


 そう言ってゼバブが重い腰を持ち上げる。


「神秘の間?」


「精霊王の加護を神器へと与える為の場所だ」


 疑問を浮かべた俺にリベラルがさっと説明した。


「では、参るぞ」


 ゼバブが右肩を上げ呪文を唱えると、眩い光が俺達を包み込んだ。


 光りがおさまり目を開けたら、ギリシャ神話に出てきそうな巨大な神殿に立っていた。


「おお~すげえ」


 あまりの壮大さに思わず声を出してしまう。


「馬鹿者!」


 ぼっーっと眺めていたらリベラルに拳骨を喰らった。


「痛いな」


 頭を擦りながら俺は文句を言う。


「ははは。仲がいいの」


 俺達のやり取りを見て、またもゼバブが豪快に笑った。


「儀式を始めるとするかの」


 すっと真剣な顔になったゼバブが四方に台座が立つ魔方陣の中央に歩いていく。


「一郎殿、こちらへ」


「あ、はい」


 促され俺は急ぎ足でゼバブの近くへ立った。


「では、草薙の剣を両腕で持ち上げて」


「はい」


 俺は刀を抜き、両腕で持ち上げる。


 ゼバブが大きな手の平を俺に向け、呪文を唱えた。


「おーーーーー」


 台座に火が灯り、光り輝く魔方陣から温かさを感じるエレルギーが刀へ流れ込んでいく。


「すげえ」


 儀式が終わると、柄だけでなく刀身も白銀に輝く姿へと変化していた。


「すげえ」


 あまりの美しさに俺は惚れ惚れとしてしまう。


「お前は他にボキャブラリーはないのか」


 馬鹿面になる俺を見て、リベラルはいつものように呆れていた。

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