十一節 大賢者並みの魔力を手に入れました
「そんな見るなよ」
「自信がないのか?」
「馬鹿を言ってないで準備しろ。一郎様も相手にしなくていいですから」
俺とハルのやり取りに呆れつつクロウは準備を進める。
「本当に口うるさいな」
「何か言った?」
ハルが小声で言った独り言に鋭くクロウが気付く。
「べ、別に~」
誤魔化すようにハルは自分の作業に戻った。
《ハル、完全に目泳いでるな》
【お前も集中しろ】
二人に気を取られていたらリベラルに注意されてしまう。
《へいへい》
大和流の奥義を会得した俺は、マジカルランドへ来ていた。
「何度やっても慣れないな」
大賢者の間にある泉に浸かりながら俺はブツブツ言う。
「集中してください」
厳しい教師のようにクロウに注意される。
「すみません」
俺も怒られた生徒のように謝り集中し直す。
「ハル、準備はいいわね?」
「もちろんよ」
クロウに訊かれ、ハルは自信満々に自分の胸を叩いた。
「では一郎様、儀式を始めます」
「遠慮なくやってくれ」
「わかりました。やるわよハル」
「いつでもいいわよ」
そう言って二人は目で合図を送りあった。
『大賢者の名の下に命ずる。この者にマジカルドラゴンを宿し給え』
二人が詠唱すると、泉が大きな水柱となり俺を包み込んだ。
「おーーーーー」
叫び声を上げた俺は大きな光りに呑み込まれ意識を失った。
「ちゃんと帰ってきなさいよ一郎」
光りがおさまると見覚えがある花畑が目に入ってきた。
「精神世界なのか?」
「そうだ」
「お!びっくりした」
声の方を見ると、人型になったリベラルが立っていた。
「何を驚いている馬鹿者」
いつものように呆れた声を出しながらリベラルがこちらを見る。
「何をって。人型になっているから」
「お前の精神世界だからな」
「前のときはいなかったくせに」
「あれはお前が変な薬を飲んだからだろ」
俺が愚痴るとリベラルは怒ってきた。
「あ~はいはい」
「大体お前はだな」
リベラルの小言を軽く受け流していると、大きな光の球がこちらに降り注いできた。
「マジックシールド」
俺は咄嗟に魔法で攻撃を防ぐ。
「バオーーーーー」
頭上には七色に輝くドラゴンが飛んでいた。
「あれがマジカルドラゴンか」
このマジカルドラゴンを倒せば魔力をかなり巨大に出来るらしい。
ちなみに大賢者になる試練でもある。
「力は貸せんぞ」
いつの間にか高く飛び上がって距離を取ったリベラルが言ってきた。
「わかっているよ」
俺は空中を飛びながらマジックボールで攻撃する。
「バオーーーーー」
全く効かないと言わんばかりに光線のようなエレルギーをマジカルドラゴンは吐き出す。
「マジかよ」
寸前でかわした俺は距離を取って詠唱を始めた。
「これならどうだ!」
周囲に凄まじい風が巻き起こる。
「〈マジックキャノン〉!」
ありったけの魔力を込めた一撃がマジカルドラゴン一直線に向かっていく。
「バオーーーーー」
俺とマジカルドラゴンの攻撃がぶつかり合い眩い光となる。
「おーーーーー」
余力を残すことも考えず魔力を注ぎ込む。
激しい爆発を起こし、辺りを包んだ煙が少しずつ晴れていく。
「やったか」
跡形もなくマジカルドラゴンは消え去っていた。
魔力が尽きた俺はヘロヘロになりながら地面に急降下していく。
「後のことも少しは考えろ」
小言を口にしながらリベラルが俺を受け止め、ゆっくりと着地する。
「ははは。面目ない」
リベラルに肩を借りながら俺は苦笑いをした。




