九節 新しい旅を始めることになりました
「白騎士、大丈夫か?」
ボロボロに破壊された白騎士に俺はしゃがみ込んで訊いた。
「ナ、ナ…ント…カ」
そう答えているものの、返事の声は昭和のラジオみたいな音声になっている。
「とりあえず戻るか」
俺は魔法で磁場を作り白騎士の体を宙に浮かせてカミシアたちの元へ飛んだ。
「一郎さ~ん」
着地しようとしている俺にクリスが手を振りながら呼び掛ける。
「久しぶり」
白騎士をゆっくりと置いてからカミシアたちに話し掛けた。
「今までどこをほっつき歩いていたんだ馬鹿者」
「ハハハ」
俺は頭を掻きながら苦笑いになる。
「それで、キーア様は一緒じゃないのか?」
「キーアは……助けられなかった」
一番言い辛いことを訊かれ、俺は顔を強張らせた。
「どうしてだ!貴様がいながら!」
カミシアが俺の両肩を揺すって詰め寄る。
「すまない」
俺の脳裏に黒兜に刀を刺されたキーアの最後が浮かぶ。
「キーア様……」
いつも凛々しいカミシアが両手をついて泣き崩れてしまう。
「カミシアさん」
クリスはカミシアを落ち着かせようと背中をさすった。
「さっきはすまなかった」
酒が入った瓶を持ったカミシアが遠くを見つめながら俺に謝る。
「いや」
俺は城壁で夜空を眺めながらカミシアと話していた。
「キーア様は母同然の人だった」
カミシアの話を俺は黙って聞く。
「戦争で私の両親は亡くなり、母の弟子だったキーア様が育ててくれたのだ」
そう話すカミシアの目には涙が浮かんでいる。
「戦士としてはもちろん、人として、女として尊敬していた」
「ああ、立派な人だった」
俺は酒をグッと一口流し込む。
「私がと言いたいが、頼む!仇を取ってくれ」
深くカミシアが頭を下げる。
「俺に任せとけ!」
カミシアの顔を上げて俺は自分の胸を叩いた。
《とは言ったものの、自信ないな》
鎧の力を取り戻したが、このままでは黒兜に負けるのは目に見えている。
【修行をし直すしかあるまい】
弱音を吐く俺にリベラルが正論を言う。
《そうなりますよね》
【今まで行った世界で修行をして精霊の世界で鎧の力を引き上げる】
《引き上げること出来るの?》
【今のお前では無理だがな】
《修行すればやれるだろ》
俺はちょっと見えた希望に楽観的になれた。
【お前らしくなってきたな】
気のせいかリベラルの声はいつもより優しく感じられる。
「一郎?」
「ああ、悪い。カミシア、もっと強い酒を用意してくれ」




