五節 拳をぶつけ合いました
「ガガ……ガ……ガーーーーー」
輝きから現れたメタルナイトは骨組み剥き出しの体から完全な人型になっている。
「もう何でもありだな」
「ガーーーーー」
拳を握って状態を確かめたメタルナイトが思いっきり殴り掛かってきた。
「くっ!」
咄嗟に刀を盾のようにして攻撃を受け止める。
「ガガーーーーー」
メタルナイトは刀ごと俺を壁に叩きつけた。
「こんりゃろ」
お返しと言わんばかりに斬りかかる。
「ガガガ」
強度が増していた体でメタルナイトは刀は受け止められてしまう。
「マジか」
「ガーーーーー」
メタルナイトは俺を右手で投げ飛ばした。
ドゴーン、鉱物が弾け飛ぶ。
「おじさん!」
ブリキが必死に呼び掛ける。
「ペ、ペ」
俺は口に入った異物を吐き出しながら起き上がった。
「ガーーーーーガ!」
メタルナイトは刀を体から抜き取り地面に深く突き刺す。
「素手でやるしかないか」
俺はボクシングのように軽くジャンプする。
「花月流体術、闘神拳!」
全力でメタルナイトの腹に打ち込んだ。
「イッテーーーーー」
岩も軽く砕ける俺の拳は赤く腫れていた。
「ふざけんなよ」
俺はフーフーと手に息を吹きかけながら悪態をつく。
「おじさん、これを使って!」
ブリキは身に着けていた強化スーツをパーツごとにこちらに投げてきた。
「サンキュー」
俺はメタルナイトの攻撃を避けながら両手と両足にパーツを身につける。
「ガーーーーー」
メタルナイトの咆哮が洞窟に響く。
「そんなに興奮するなよ。たっぷりと相手してやるから」
俺はグローブみたいにパンパンと拳と拳を合わせる。
「ガガーーーーー」
「シュ、シュ、シュ」
メタルナイトの繰り出す攻撃を軽くいなす。
「花月流体術〈烈風乱神脚〉!」
避けた反動を利用して回し蹴りを放つ。
「ガーーーーー」
綺麗に決まった技でメタルナイトは壁にめり込んだ。
「合体奥義〈炎龍闘神波〉!」
魔法で拳に纏った炎が巨大なエレルギー弾となりメタルナイトを跡形もなく燃やし尽くした。
「はぁ~」
気が抜けた俺は腰を落とし思いっきり息を吐き出す。
「おじさん、メタルナイトに勝つなんてすごいよ」
「すげえだろ」
俺がブリキにニヤリと笑みを返したとき、ドォーンと激しい爆発音が響く。
「何だ?」
突然、白いガスらしきものが噴出した。
「二度あることは三度あるってか」
黒こげになった物体がガスを吸い込み変化していく。
「俺って運が悪いのかな?」
やれやれという感じで俺は起き上がる。
「おじさん、頑張って」
ブリキはそう言ってまた身を隠す。
「お前、強いな」
煙の中から現れたメタルナイトは流暢に話し始めた。
「そりゃどうも」
「ここまで本気になったのは初めてだ」
メタルナイトは西洋甲冑みたいな鎧を身に纏っている。
「やばい、逆にワクワクしてきたかも」
俺は強敵に単純に興奮してしまっていた。
「オオオオオ」
「ガーーーーー」
俺とメタルナイトの拳が激しくぶつかった衝撃が凄まじい風を巻き起こす。
「ハ!ハ!ハ!」
「ガ!ガ!ガ!」
俺もメタルナイトも拳を繰り出すスピードを上げていく。
《こりゃキリがないな》
俺は仕切り直す為に一度間合いを取った。
「大和流奥義、鬼神」
「ハハハ。実に面白い」
赤いエレルギーが周囲に充満した俺を見てメタルナイトは愉快そうに笑う。
「私も全力でいこう」
対抗するように青いエレルギーをメタルナイトは放出させる。
「オーーーーー」
「ガーーーーー」
俺とメタルナイトは一気に駆け出す。
「花月流、闘神拳!」
「メタルクラッシャー」
バーンと拳がぶつかり合い、俺はフラフラと膝を地面につけた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「楽しかったぞ」
俺が見上げた瞬間、メタルナイトは氷のように砕け散った。
「もう勘弁して」
安心して俺は顔から倒れこむ。
「おじさん、大丈夫?」
側に寄って来たブリキは心配して訊いてくる。
「余裕」
俺はピースサインをブリキに向け強がってみせた。




