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一節 精霊の世界にやってきました


「勇者様、お目覚めください」


「う、うう?」


 誰かに呼ばれ、俺はふらふらしながらも起き上がる。


「ここは天国?」


 ありきたりな疑問を口にしてしまった。


「残念ながら違います」


《残念って何だよ》


 自分で言っといて何だが、つい心でツッコミする。


「え~と、あなたは?」


 目の前には美島と雰囲気が似た女性が立っていた。


「私は精霊王様の側近を務めますソニアと申します」


「じゃあ、ここは精霊の世界ってこと?」


「そうです」


「リベラルもここにいるのか?」


 俺は願いを込めて質問した。


「いえ、リベラル様はおりません」


「そうか……」


 何となく予想はしても落ち込んでしまう。


「何で俺をここに?」


「それは精霊王様からお話し致します」


 そう言ってソニアはゆっくりと歩き始める。


「すごい花畑だな」


 ソニアについて行きながら目に入った景色は大自然という言葉がしっくりきた。


「ここには争いを起こす者も土地を汚す者もおりませんから」


 バツが悪い俺はごまかすように後ろ手に頭をポリポリと掻いた。


「食事とか住む所とかさ、どうしているわけ?」


「食事と言えるのは自然からのエナジーですし、住まいは森そのものです」


《おー何かジ○リみたい》




「こちらが精霊王様の大神殿でございます」


「これはまた絶景だな」


 樹齢何百年ではすまない大木が何重にも重なって建物のような形になっていた。


「さあ、中に」


 ソニアに案内され中へと進んでいく。


「これって自然に出来たの」


 大木の中は緑の大空洞になっていた。


「精霊王様のエレルギーが森に力を与えて形となったと聞いています」


「はぁ~すごいな」


「少しお待ちを」


 ふとソニアは立ち止まり蔓で閉ざされた道を呪文らしきもので開く。


「精霊王様、勇者様をお連れしました」


「おお、ご苦労じゃった」


 都会のビルぐらいはあろう巨人が大木で出来た椅子に座っていた。


「勇者殿、我は精霊王のゼバブじゃ」


「普田一郎です」


 穏やかに挨拶してきたゼバブに俺はいつもの営業挨拶を返す。


「お呼びしたのは他でもない、リベラルのことじゃ」


「はい」


「リベラルはもはやこの世の者ではない」


「俺のせいです」


 黒兜になす術なく負けた自分に腹が立ち、拳に力が入る。


「いや、あれが望んでやったことじゃ、気にするでない」


「だけど」


「どちらにせよ過ぎたこと」


「……」


「それでじゃ、一郎殿に頼みたいことがあって来てもらった」


「俺に頼みたいこと?」


「今、ゲートが暴走しているのは知っているな?」


「ええ」


「あれは鎧の力で制御していたのが、その力を失ったせいじゃ」


「リベラルがいなくなったせい?ていうか俺の力が暴走の原因ってこと?」


「ざっくり言えばな」


「嘘だろ」


 俺は頭を抱え込んでしまう。


「勇者と精霊、異世界を正しく結ぶには二つはどちらとも欠けてはならない」


「じゃあ俺がいると世界を破壊するってこと?」


「ああ」


「なら俺が死ねば」


「一郎殿が死んだら、それこそ力が一気に世界を滅亡させる」


「じゃあどうすれば?」


「正しき力で制御すればいい」


「教えてください」


「リベラルを復活させるのじゃ」


「え、そんなこと出来るんですか?」


「可能じゃ」


「わかりました。俺にやらせてください」


「よし、では死んでくれ」


「はい?」


 死んだら滅亡って言ったくせにという感情が俺に気持ちのいい?マークを浮かばせた。

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