十二節 化物退治を始めました
「一郎さん、二百メートル先前方に対象反応ありです」
オペレーターをする時田の声が無線で聞こえる。
「了解」
特注の紺色の軍服を身に纏い、俺は市街地を飛んでいた。
「対象発見」
顔を隠した特殊ヘルメットの視界に骸骨剣士の集団が入る。
「一郎さん、サンプル欲しいので程々にお願いします」
「面倒くさいな」
「あ~今面倒くさいって言った!」
俺のボソッと呟いたひとり言を時田は子供みたいに指摘してきた。
「はいはい、わかりましたよ」
やれやれという感じで返事をする。
「それは置いといて、なるべく速やかに対処してください」
美島が会話に割って入ってきた。
「善処します」
営業言葉で返事をしてしまう。
「対象を捕捉、排除する」
俺は飛び降りざまに三体の敵を斬り刻む。
「残り十体」
「おりゃおりゃおりゃ!」
俺は掛け声を出しながら攻撃を繰り出していく。
「敵反応消滅」
ものの数秒で敵は全滅した。
「後は我々に任せて帰還してください」
美島が指示を出す。
「りょう~かい」
後処理を駆けつけた防衛省の部隊に任せ、俺は空中に飛び立った。
「一郎さん、お疲れ様です」
帰還した俺に時田が栄養ドリンクを差し出してきた。
「お、サンキュー」
汗だくになった髪をタオルで拭きながら喉に流し込む。
「なあ、〈異世種〉の数多くないか?」
俺たちは異世界からの化物を異世種と呼んでいた。
「そうなんです。これを見てください」
時田は液晶画面をタッチし、モニターにグラフを映し出す。
「この二週間、異空間の裂け目の出現率が上昇しているんです」
「ひょっとして俺のせい?」
「申し上げにくいですが、一因だとは考えられます」
美島が冷静な表情で淡々と口にする。
「でも、初めて異空間が目撃されたのは戦国時代と言われています」
時田が古い文献の資料を見せてきた。
「戦国時代か」
「何か心当たりが?」
俺の顔を見て美島が問い掛けてくる。
「いや、特には」
初代のことはあえて話さないでいた。
「まあ、それに関しては我々が調査しますので」
「ええ、よろしくお願いします」
「それにしても、〈シーカー〉としては上々じゃないですか?」
異世界研究機構は通称をシーカーとしていた。
「確かに。それもこれも一郎さんのおかげですけど」
あの施設での一件以来、俺はシーカーに協力をしていた。
「いや、俺は大した事はしていないですよ」
「一郎さんがいなかったら被害はもっと出ていますから」
時田はいやいやという感じで身振り手振りする。
「そうかな」
俺は思わず照れてしまう。
「では、メディカルチェックが終わったらご自宅までお送りします」
「お願いします」
「しかし、科学がここまで進んでたとはな」
俺はベッドに腰を落として腕時計を眺める。
「これで服や武器が転送されるんだからなあ」
時田が開発した技術でどこでも駆けつけられるようになっていた。
『最近、謎の生物の目撃や原因不明の事象が報道されていますが』
『政府が秘密裏に処理しているとも言われていますね』
テレビの報道番組で異世種のことが話されていた。
「もしもし?」
テーブルで揺れたスマホを手に取り電話に出る。
「一郎、あんた関わってないわよね?」
「何だよいきなり」
電話に出るなり夕が問い詰めてくる。
「テレビでよくやっている化物とかよ」
「何で俺が関わるんだよ」
「だって、最近連絡取れないことが増えたし」
「仕事が忙しいんだよ」
「本当でしょうね?ネットで噂になっているヒーローって」
「ヒーロー?俺がそんながらかよ」
「だって、あんたの力なら」
「疲れたから切るぞ」
「ちょっと」
俺はこれ以上嘘を重ねたくなく無理やり電話を切った。
「はあー」




