三節 男としてショックを受けました
「ほら、どんどん食べろ」
「いただきま~す」
ハルに言われ目の前のご馳走に黙々と手を出す。
「マジでおいしいよ」
お世辞なしでハルの料理は美味しかった。
「うるさい!黙って食え」
褒め言葉に慣れていないのか、ありきたりなセリフにハルは赤く顔を染め怒る。
「は~い」
ハルの態度がちょっと面白くニヤけてしまった。
「本当に魔法は使えないのか?」
「そうふぁよ」
食べながら答えたので、変な発音になる。
「それに外見もゴツゴツしているというか。私とは体つきが違う」
「だって男だし。そりゃ違うでしょ」
「男とは何だ?」
「へ?もしかして男見たことないの?」
「この世の人間は一種類しか存在しない」
「マジか!」
俺はカルチャーショック状態になり頭を抱えた。
どうやら、この世界には女性しか存在しないらしい。
「ねえ、魔法はどうやったら使えるようになる?」
軽い気持ちでハルに質問する。
「誰もが使えるわけではない」
「そうなの?」
この世界では誰もが使えるものだと思っていた。
「聖樹と呼ばれし大樹に成った実から生まれし者のみ魔法が使える」
「じゃあ、ハルは聖樹から?」
「ああ」
「使えない人間はどうやって生まれるの?」
「命樹と呼ばれし大樹からだ」
「親とか兄弟は?」
「私たちにその概念はない」
この世界に来てショックを受けてばかりだ。
「ずっと一人なわけ?」
「基本はそうだ。聖樹でも命樹でも成長してから目覚めるからな」
「そうなんだ」
異世界の常識に何と言っていいかわからない。
《じゃあ、何のためにリベラルはこの世界に?》
ハルの話で完全に目的への道がわからなくなる。
「だが、例外がいる」
「例外?」
「過去にも一人いたらしい。我らとは違う種族の人間が魔法を得たと」
「違う種族ってもしかして」
俺は期待を込めハルの話を聞く。
「かもしれん。おとぎ話のような伝説を聞いたことがあるだけだ」
「そうか……」
今までと違い、リベラルの助言がないことで心細くなっていた。
「それでもいい!もっと詳しいことはどこでわかるんだ?」
「大賢者様なら知っているかも」
「その人に会わせてくれ」
「凄腕の魔法使いに守られていて簡単には会えないし、下手をすれば命はないぞ」
ハルはあまり気乗りしない顔で言う。
「可能性がゼロじゃない限りは諦められない」
俺は覚悟を決め、ハルに懇願した。
「わかったよ。どうなっても知らないぞ」
ハルは半ば呆れた感じで観念する。
「よ!神様、仏様、ハル様です!」
「まったく。お前といると調子が狂うわ」
「ははは。それはすみませんね」
少しでも希望が見えたことに俺はホッとしていた。




