一節 本格的な戦争が始まりました
頬に激しい風が当たり、ふと目覚めた。
「何じゃこりゃ~」
俺は昭和の名セリフを拝借する。
「ちょひちょひ」
突風のせいで言葉にならない。
《マジでやべぇ。どうする俺!》
自分の現状にかなりテンパってしまう。
【馬鹿者!早く変身しろ】
リベラルから冷静な助言が出る。
「神器一体!着装!」
久しぶりに言ったと思いつつ変身した。
「く~そ~」
無理やりに体勢を変え、近くの絶壁に距離を近づける。
ガガガガガと音をたてて、俺の両拳は岩壁を削っていく。
「ふんぬ~~~」
血管がはちきれんばりに踏ん張って勢いを殺す。
徐々にスピードが落ちたものの、最後には地面に衝突してしまった。
俺がぶつかった衝撃で一帯に土埃が充満する。
「イテテテテテ」
鎧と大和流のおかげでちょっとした痛みだけで起き上がれた。
《リベラルさん。もう少し安全に異世界旅行したいなあ~」
俺は遠回しに愚痴をこぼす。
【お前の精神が不安定だから座標がぶれるんだろうが】
精霊に逆ギレされてしまった。
《逆ギレかよ》
【何か言ったか?】
《いい~え~》
俺も子供みたいなスネタ返事をする。
「よし!気を取り直してカミシアたちの所に戻るか!」
昨夜、ジパングで修行をしていた俺の元にカミシアたちの危機が知らされた。
【一郎。まずいことになった】
《何かあったのか?》
突然告げてきたリベラルに戸惑ってしまう。
【グルス帝国が新兵器を開発して進軍を開始したと情報が入ったらしい】
《まだ技らしいのそんなに覚えていないのに》
大和体で修行の速度は上がったものの、完璧には程遠かった。
【仕方ない。一旦戻るぞ!酒を用意するんだ】
《あ、やっぱり飲むんだね》
緊急自体ぐらいは別の方法で行けると思った期待は綺麗に裏切られる。
「ねえ、一刀。酒ってある?」
一度も酒らしいのを見たことがなかったが、ダメもとで訊いてみた。
「あるぞ」
相変わらずの仏頂面で返事が返ってくる。
「あるのかよ!」
予想外の答えについツッコンでしまう。
「ちょっと待っていろ」
そう言って戻ってきた一刀の手には時代劇で見たことがある酒瓶が握られていた。
「ジパング一の酒だぞ」
酒好きなのか、珍しく一刀は笑っている。
「そうなんだ」
その笑顔にちょっと怖気づく。
「ほれ」
一刀が酒をこちらに差し出す。
「ありがとう」
俺は受け取って乾杯をしてから酒を口に含んだ。
「おお、くるね~」
味は日本酒に近く、かなり度数が高いものに感じる。
「異世界に酒を飲んで行けるとは羨ましい奴だな」
一刀は豪快に笑いながら酒をどんどん口に運んでいく。
「酒は好きだけどね~」
異世界の行き来の度に二日酔いはしんどい。
「お二人とも、お待たせ致しました」
そんな会話をしていたところに大樹が作った料理を持ってきた。
「上手そうだな」
「腕には自信がありますので」
褒められて大樹は嬉しそうにしている。
大樹の料理もあり、俺たちのピッチはぐんぐん上がっていった。
そうこうして、目覚めたときには空中にいたというわけだ。
「カミシア。どうだ?」
「平原に陣取っていますが、今のところは動きそうにないですね」
キーアに状況を訊かれ、偵察を終えたカミシアは説明をする。
「一郎ばかりに頼ってはいられない。ここは私たちで何とか凌ぐぞ」
「は!」
キーアの言葉にカミシアは気持ちの篭った返事をした。




